~出立~
騎士団合格の知らせから三日、旅立ちの日がやってきた。
「お父様、私は必ずや立派になります。」
「ああ、負ける事のないようにな。」
そうして荷物を持ち家を発つセファーナ。
父であるベルシスはその背中を見えなくなるまで見ていた。
「…妻が長期の用事でいないのが残念な限りだ。」
「だが知らせにはきっと喜んでくれるだろう。」
「さて、ラクシスが帰るまでに家の掃除でもするとしよう。」
そうして村を出たセファーナ、王都までは徒歩で半日、船で二日の距離だ。
途中にある小屋で休息を取り今日の夕刻には港に到着出来るだろう。
そうして獣道を進んでいくその足は期待に躍っていた。
小屋が見えたその時一人の人影を見つける、道に迷っているようだ。
「あの、どうされましたか?」
声をかけるセファーナ、その相手は美しい金髪で美青年に見間違うほどの顔立ちだった。
「ああ、実は港町に行きたいのですが地図を落としてしまって。」
セファーナは言う、王都に行くのなら共に行かないか?と。
彼女は二つ返事でそれを承諾した、どうやら彼女は武器商人らしい。
「あの、それとお名前を。」
「私の名はビスカス、魔界の武器商人です。」
どうやら魔族のようだ、この世界は多種族が共存する故に珍しくはない。
村にも獣人などの流れ者の異種族が暮らしていて慣れたものだった。
「小屋で少し休んだら港町に行きましょう、目的地は同じですから。」
するとビスカスは問う、あなたは王都に何をしに行くのかと。
セファーナは答える、騎士になるのだと。
「それにしても美しいですね、その銀髪、そして緑の瞳が。」
「村娘には似つかわしくないですよね、よく言われます。」
その後も少々の雑談を挟み港町へと向かう事に。
この世界には魔獣や魔物が存在し護衛を雇ったり護身のために武器を持つのは珍しくもない。
そうして獣道を歩く事数時間、舗装された道に入り始めた。
さらに歩く事数時間、二人は港町に到着する。
「着きましたね、ビスカスさんも船ですよね?」
「はい、乗船チケットは既に確保してありますよ。」
そう言いチケットを見せてくれる、どうやらお金はあるようだ。
「出港までもう少しありますね、飲み物などを買っておきましょう。」
「船の中で買えるのにですか?」
「船の中で買うと少し割高ですからね。」
そう、船の中などのショップは同じものでも少々の割高なのだ。
そうして飲み物などを揃えるセファーナ。
出港まで30分前になり船に乗り込む。
そして汽笛が鳴り響き船が出港した、ここからは二日間の船旅だ。
騎士団の入隊式は四日後、スムーズに進めば式の前に辿り着ける。
ビスカスは船の中で商談相手のリストを確認していた。
だが今はまだ知る由もない、騎士になる事がセファーナの人生を大きく変えてしまうと。
今は夢を見よう、夢が覚めるその時はまだ先の話なのだから。
そうして船は王都へ向け順調に海を進んでいくのだった…。