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~船出~

それから一ヶ月、セファーナは働いてお金を貯めていた。

その合間にカリーユに剣も教えていた。

飲み込みは早く瞬く間に剣の腕は上達していった。


そして今日は飛空艇の改造が終わってテスト飛行が行われる。

セファーナとカリーユはそれを心待ちにしていた。


「おーい、改造終わったわよー。」


そう言ってシスシェナが二人を呼びにきた。

二人は時間を潰していた喫茶店の代金を払いそっちへ向かう。


飛空艇は最初に見たときよりずっと立派になっていた。

内部も改装したそうなので見てみる事に。


「凄いですね…、これってもう移動式の家じゃないですか。」

「ああ、こんな派手に改造したのか。」


二人は驚いた顔で飛空艇の内部を見て回る。


「どうよ、これなら世界を旅するのにも文句はないっしょ。」


その言葉は自信に満ちていた。

さすがは成功を掴んだだけはある、お金の使い方も豪快そのものだ。


「それでいつ旅立つんですか?」

「明日とはいかないけど、三日後ぐらいね。」


ずいぶんと急な話だった。

だが三日もあればその準備は簡単だろう。


「とりあえず不動産屋に家の事を伝えたから、さっさと荷物運ぶわよ。」


そう言って今まで世話になった家の家具なども運び入れる。

家の中はあっという間に片付いてしまった。


「それにしても世界を旅するなんて素敵ですね。」

「当たり前でしょ、あんたはあたしが見守っていくんだから。」


それは約束だった。

シスシェナは今まで内緒にしてた事を打ち明ける。


「実はさ、団長さんとあんたのお父さんとお母さんに言われてたのよ。」


セファーナはその言葉に驚いていた。


「突然とはいえ事態を想定はしてたみたいでね、そのときは頼むってさ。」

「それでなんですか…、でもなんで私を?」

「確かにな、こいつはお人好しだし甘いだけの奴だぞ。」


カリーユも散々な言い様だ。

だが命を賭してまで自分を逃がしてくれた村の人達。

そして大切な事を教えてくれた騎士団の仲間達、それは今も記憶にある。


「それでさ、あんたは何がしたい?どこへ行きたい?」

「私は…正義を貫きたいです。」

「正義?馬鹿じゃないのか?」


だがその言葉は強い何かが感じられた。

シスシェナもその力強い目に何かを感じ取ったようだ。


「本当にそれでいいのね?その道に進めば二度と引き返せなくなるわよ。」

「構いません、それは私の覚悟であり信念ですから。」


シスシェナはそれを理解し一つ問いかける。


「…エルミナス王国で起きた密告からの逮捕、あんたでしょ。」

「さあ?なんのことでしょう。」


セファーナはとぼけたふりをするがシスシェナは分かっていた。

それが彼女なりの正義であり法を重んじるが故のやり方でもあると。


「ま、いいわ、だったらあんたの移動手段にあたしはなる、いいわね。」


シスシェナはセファーナの足になる事を約束する。

ビッグドリームを掴んだ商人もまた闇に堕ちていく覚悟を決めていた。


「…なら僕もそれに混ぜろ、僕はセファーナに恩返しがある。」


カリーユもまたそれについてくる気だった。


「はい、よろしく頼みますね。」


その覚悟はとっくに決まっていた。

だがすでにその心は絶望と歪みに支配されていたのだ。

表向きは優しいセファーナのままでも心の中は真っ黒だった。


「あんたも変わったわよね、それこそ人は簡単におかしくなるってさ。」


シスシェナもそれを理解した上でそう言い放つ。

セファーナもそれを笑顔で返す。


「そうですね、純粋だった私は今はもういないんだと思います。」


だがだからこそ堕ちるところまで堕ちてやろう、そう決めたのだ。

その闇に堕ちた心に灯火が灯される。


「ならどこまでも堕ちなさい、何も見えなくなる闇の底までね。」


そうして覚悟を決めた三人。

そしていよいよ飛空艇のテスト飛行を始める。


シスシェナが操舵室へ移動し二人もそれを見守る。


「さーて、そんじゃ、いざテイクオフ!」


そうして飛空艇は大空に飛び上がる。

冬の空に浮かぶその姿は大きな鳥のようだった。


「この様子なら問題なさそうですね。」

「空を飛べるならどこだって行ける、僕達の船出だな。」


そうしてテスト飛行を終えて街に戻る。

そのあとは食事などを済ませ船出に向けて何かと準備を整える。


セファーナは働いていた店に事情を説明し辞職。

シスシェナは食料などを山ほど買い込んでいた。

カリーユも不器用なりに簡単な修理道具などを頼まれて買い揃える。


そのまま残りの日をフィクサリオ王都メーリエで過ごす。

そうして船出の日はすぐそこに迫っていた。


これが堕ちた正義が発足した瞬間なのであった。

物語はここからさらに加速していくのである…。

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