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~孤児~

あれから四日が過ぎた。

セファーナは今は個人経営のレストランで働いている。


店は小さいながらも常連客で賑わう隠れ家だ。

一方のシスシェナは攻撃を受けた飛空艇の改修を進めている。


「さて、こんなものでしょうか。」

「お、少しは出来るようになったね。」


店長のゲヌークはそう言って褒めてくれる。


「一応覚えましたから。」


そう言って味見をしてもらう。


「うん、この味なら文句ないね、合格だ。」


その店は主にチーズと卵料理を出している。

特にチーズオムレツが人気メニューである。


「それじゃそろそろ開店しますか。」

「だね、今日も美味しい料理を振る舞おうか。」


そう言って今日の営業が始まる。


それから多くの客を捌きそのまま夕暮れになった。


「さて、今日のお給金だよ、あまり多くないけど持っていくといい。」


そう言って今日の給料として12000ほどを受け取る。

この店は規模の割に給料がいいため選んだのだ。

その理由は夜になるとバータイムになるためらしい。


「夜も働きたいんですけど、お酒に弱いので無理なんですよね。」


セファーナはアルコールに弱いためバータイムには働けない。

それでも給料としてはじゅうぶんなので今は満足だ。


「まあそれは仕方ないさ、昼間だけでも助かってるからね。」


そう言って肩を叩いてくれる。


「とりあえず今日のレストランは店仕舞い、それで美味しいものでも食べな。」


それはゲヌークなりの発破なのだろう、それも嬉しかった。


「それでは私は失礼しますね、明日もよろしくお願いします。」


そのまま帰路につくセファーナ。

その帰り道に街の店で夕食の料理に使う食材を見ていた。


「うーん、今日は野菜…あとは鶏肉でしょうか。」


そうしてトマトと鶏肉を購入する。

ついでにりんごとオレンジを買い家に向かう。

そんな帰り道でとあるものに気づく。


「あれ?この先は…。」


そこにあったのは薄暗い路地だった。

街に来てから間もないため気づかなかったのだろう。

近くの人にその路地の事を尋ねてみる。


「この先には行かない方がいいよ。」

「なぜでしょうか?危険なんですか?」


中年男性は言葉を続ける。


「この先には子供が住んでるんだけど敵意むき出しでね。」


どうやらその子供が敵意を見せるため近づくと睨まれるのだそうだ。


「なるほど、なら少し行ってみますね。」

「は?聞いてなかったのか?」

「もちろん聞いていましたよ、少し興味があるので。」


その言葉に男性は少し苦笑いをして言う。


「行くなら止めないけど、どうなっても自己責任だぞ。」

「はい、それではありがとうございます。」


そうお礼を言いセファーナは路地の奥へと進む。


「本当に行っちまった、勇気あるなぁ。」


セファーナは路地の奥へと足を進める。

そこにあったのはボロボロの小さな家だった。


「…もしもーし。」


すると後ろから声がする。

振り向くとそこにいたのは年端もいかない子供だった。


「えっと、君がここの家の人?一人なの?」

「そうだ、僕には誰も頼る人なんかいないからな。」


その子供は見た目こそ男っぽいが女の子だ。


「それで君はどうやって暮らしてるの?」

「残飯を漁ったりしてる、金なんかないし。」


相当困窮しているというのは見ただけで分かった。

服もボロ布の上に髪も伸びきっている。


セファーナはそんな彼女に提案をする。


「そうだ、よければ私の家に来ませんか?一緒に暮らしましょう。」

「嫌だ、人間なんか信用出来るわけない。」


その目は憎しみと悲しみに満ちていた。

それこそ世界の全てを憎悪する、そんな目だ。


「でもこのままにしたらあなたは死んでしまいます。」

「だからなんだ?僕を捨てた奴に言え、死んでも誰も悲しまないぞ。」


それは正論だった。

孤児が死んだところで悲しむ人間などどこにもいない。

だがセファーナはそれでも放っておく事など出来なかった。


「あなたが嫌だって言っても私は諦めませんよ?」

「しつこいな、それなら僕に見極めさせろ、それでいいな?」


どうやら一緒に暮らして様子を見るらしい。

生意気だが納得はしてくれたのだろう。


「それで構いませんよ、では名前を教えてください。」

「名前…そんなものはない、というか分からない。」


どうやら自分の名前すら知らないようだ。


「分かりました、ではあなたはカリーユ、カリーユ・デマイドです。」

「は?それが僕の名前か?」

「はい、素敵でしょう。」


その少女は男っぽい名前に少し嫌そうな顔をする。

だが自分で考えるのも面倒なのかそれを受け入れる。


「それでは私の家に行きましょう。」

「はぁ、お節介な女だな。」


そう言いつつもついてくるカリーユ。

家に戻るとシスシェナが図面とにらめっこしていた。


「ただいま戻りました…ってシスシェナさん?」

「ん?ああ、お帰り、それとその子なに?」

「新しい家族です、シスシェナさんも仲良くしてあげてくださいね。」


そう言ってシスシェナはカリーユに挨拶をする。

だが反応は冷たい。


「それよりその図面は?」

「こいつは飛空艇の改造の図面よ、せっかくだし世界を飛び回りたいでしょ。」


どうやら飛空艇を改造するらしい。

そうして世界を飛び回るとの事だ。


この国で暮らすより世界を飛び回った方が仕事になるのは確かだ。


「世界を…それも素敵ですね。」


セファーナも乗り気だった。

国の事を調べるにもちょうどいいのでそれに賛同する。


「一ヶ月ぐらいで改造が終わるから、それまで好きにしてなさい。」

「面白そうだな、僕もそれについていく。」


カリーユも賛同する、そして新たな旅の始まりへ向けて動き始める。

運命が大きく動き出すそのときは着実に迫っていた。


セファーナの運命はここから大きく転換していくのである…。

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