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~逃亡~

エルミナス王国から逃亡したセファーナ。

そのままシスシェナの飛空艇に揺られフィクサリオ公国へと流れ着いた。


「なんとか着いたわね。」

「ここがフィクサリオ公国…。」


フィクサリオ公国は北にある雪国だ。

今は季節的に秋の半ばなので冷え始める季節だ。


「寒いですね…、さすがは北国です。」

「とりあえず一枚羽織っておきなさい。」


そう言ってセファーナに一枚上着を貸すシスシェナ。

そのあと住居を確保する事にした。


シスシェナと共に王都メーリエで家探しだ。


街の不動産を訪ね家の事を訊く。

すると空き家があるらしいとの事だ。

賃貸ではないため出ていくときは話してくれれば買い取るとの事。


セファーナは文句も言っていられないためその家に決める。

代金はシスシェナが一括で支払ってくれた。


そうしてその空き家へと案内してもらう。


「ここですね、建てられてから少し経過していますが問題はないかと。」


確かに少し古い家だが中を見るかぎり住むには問題はなさそうだ。

契約書にサインをしてその家に住む事となる。


そうして契約を完了させ家の中へと入る。

少し埃っぽいが特に問題はない、最初にすべきは掃除である。

簡単な掃除道具はあるのでセファーナは掃除を始める。


シスシェナは食料や簡単な家具を確保してあげると言い街へと向かう。

しばらくはこの小さなマイホーム暮らしだ。

セファーナは手早く掃除を片付けていく。


「うん、こんなものですか。」


掃除や整理は得意なのであっという間に終わる。

そんなときシスシェナが戻ってくる。


「お、もう終わったのかな。」


その手には缶詰やパンが抱えられていた。

後ろには家具屋の人が家具を運び入れる準備をしている。


「とりあえず配置の指定とかあったらどんどん頼みなさい。」


そう言ってセファーナとシスシェナは注文を言い家具を配置してもらう。

家具の配置が終わり家具屋は引き上げていく。

今は夕暮れ、冷え始める時間だ。


「さて、どうしよっか。」


確かに今は掃除ぐらいしかやる事はない。

とりあえずお金も稼がなくてはならない。

明日の朝に街の掲示板に求人があるか見にいく事にした。


そうして夕食の準備を始める事に。

料理はセファーナがする事になった。

簡単なものであれば手早く作れる、あくまでも簡単なものだが。


「出来ましたよ、ボロネーゼと塩野菜スープです。」

「お、美味しそうじゃない、意外とやるもんね。」

「簡単なものしか作れませんけどね。」


そう言って手早く食事を終わらせる。


「さてっと、少し息抜きにね。」


シスシェナが持っていたのはラム酒だった。

吸血鬼にはアルコールには効かないのだが味を楽しむらしい。


「あんたも飲む?美味しいわよ。」


そう言ってセファーナにお酒を勧めるシスシェナ。


「えっと、お酒は駄目なんです、少し飲んだだけで酔ってしまうので。」


セファーナはアルコールには極めて弱く少しの量でも酔い潰れてしまう。

食べ物に含まれる微量のアルコールでも目が虚ろになるぐらいに弱いのだ。


「なによ、あんたお酒に弱いのね。」

「ええ、なのでお酒は遠慮しておきます、すみません。」


シスシェナも無理に勧める事はせずにラム酒を美味しそうに飲む。


「それでこれからどうしましょうか。」

「とりあえず仕事探して収入の確保、それが最優先よ。」


シスシェナの手持ちに大金があるもののそれを頼るわけにもいかない。

なので求人を探すのが先である。


「あたしはこうなった以上死ぬまであんたに尽くしてあげる、いいわね?」


それは覚悟の目をしていた。

思わぬ縁で出会った二人はその約束を交わす、それは永遠の約束だ。


そうして夜になり今日は早々に眠る事にした。

とはいえエルミナス王国の事を考えると簡単には眠れない。

それでも言い聞かせるように眠りについた。


そんな中セファーナは不思議な夢を見る。


「聞こえますか?」


それは眠るセファーナに語りかけてきた。


「あなたは…誰…私に…なんの用…。」

「あなたは自分が何をしたのか、理解していますか。」


それは全てを見透かしたような声、まるで見ていたかのような言葉。


「それは…、でもどうして…。」

「あなたの正義はそれを信じ続けられるだけのものですか?」


それは全てを知っている感じだった。

そしてその声は言葉を続ける。


「あなたの覚悟、その想いは本物なのかと訊いています。」

「はい…でもなぜそれを…。」


そうして声は続ける。


「あなたのその信念が本物だというのなら一つ呪いをかけましょう、そして力を与えます。」

「呪い?力?それはなんの…。」

「あなたはそれだけの覚悟がありますか?世界の敵になる覚悟が。」


それはまるで試すかのような問いかけだ。

セファーナは力強く答える。


「はい、私にはそれだけの覚悟が…確かにあります。」

「いいでしょう、ならば呪いをかけます、そして力を受け取りなさい。」


そうして不思議な感覚に包まれる。


「この呪いはあなたがその信念を曲げたとき、あなたを喰らい飲み込むでしょう。」

「分かりました、その呪い、甘んじて受けましょう。」

「力の使い方は頭に直接刻みます、目を覚ましたときには理解しているはずです。」


そう言って頭に何かが入ってくる。


「これがあなたへの罰です、あとはあなた次第ですよ、強くあらん事を。」


そうして声は聞こえなくなった。

そのまま夜が明け朝になっていった。


新たな運命は静かに回り始めたのだ…。

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