~序章~
ここは辺境の村アルゴー。
村娘にしては似つかわしくない少女がいた、彼女の名はセファーナ。
村の資産家夫妻に育てられ、多少の不自由はあれども立派に育った。
そんな彼女はそわそわしていた、今日は期待と不安に胸を高鳴らせていたからだ。
「セファーナ、そんな焦らずともいいだろう?」
資産家の父はそう窘める。
「ですが早く届かないかとドキドキして…」
そんな話をしていると扉を叩く音がした。
「ベルシスさん!お手紙です!」
遠路はるばるポストマンが手紙を届けにきたのだ。
「来たんですね!今開けます!」
扉を開け手紙を受け取り判を押す、その手紙は王都エルミナスの騎士団からのものだ。
そう、セファーナは国の騎士団のテストを受けていたのである。
ポストマンは頭を下げ次の家へと向かう、そしてその場で手紙の封を切る。
「…お父様!私…合格しました!」
騎士団に合格したとの通知、これでセファーナは騎士の卵である。
「そうか、よかったな。今夜は騒がしくなりそうだ。」
「出立は三日後、それまでに準備を済ませますね。」
こうして希望に胸を躍らせるセファーナ、だが今は誰も知らない。
希望は絶望へと変わり太陽は月に陰るのだという事を。
これが全ての始まり、暁の光が去りゆく前奏曲なのだと。