『真紅に染まる銀色の翼達の追憶ーー』
まるで鏡の如く写り込む碧い世界。
優雅に舞う銀色に輝く翼を携えて天空を力強く羽搏く。
神話の物語の1ページを描く様な錯覚に囚われながら大空高く鋼鉄の鳥は舞うーー
第三十四航空隊と謳われる部隊に所属する俺は、幼少期にいつかは大空を飛び、自由に幻想的な世界に夢を冒険する夢を描いていた。
しかし現実は違う。この俺の銀色の翼は多くの命を奪い、真紅に染められた悪夢の翼だ。
「後ーー俺は後何人…いや、何百人の命を奪えばこの連鎖から逃れられる?」
足元のラダーを踏み込む。
瞬時に風貌越しにオレンジの弾跡が掠める。
「そうか…又彼奴らを殺せば、この呪縛から逃げれるんだな」
手前の操縦桿を引き込み。
全身に伝わる重圧に心地良さを感じながら弧を描くようにスプリットエスが決まる。
「これで何人目だろうか…」
中央の照準器に必死に藻がく敵機を捉え。何の為らいもなく引き金を俺は引く。目の前に彼の人生の最後の1ページを指先で刻みながらーー
銀色の美しい機体に。鮮血の紋章(撃墜マーキング)が又一つ…
この空は地獄。何処までも。そしていつかはこの地獄から抜け出せる術を持たない堕天使は…