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■6


「ロイド、いる?」


 そして、厄災はやってきた。

 

「なんだよ、ルーテシア。」


 俺は、目の前の書類から顔をあげ、入口に立ちふさがるルーテシアを睨む。

 

「ちょうどよかった、いるじゃない。」


 ルーテシアが俺たちに微笑みかける。つまり、これは悪い話ということだろう。

 

「たしかにいるが、今はそれどころじゃない。この書類の山を見ろ、つまりお前の相手をしている暇はないってことだ。」


 俺は冷たくルーテシアに言い放つ。

 

「ばっかねえ。そんなあなたたちに人材を紹介しに来たのよ。入って。」


 ルーテシアの後ろには、一人のヴァンパイアがいた。

 

「彼ねえ、コレオスっていうんだけど、ここで修行させてもらえないかしら。」


 そのコレオスという男は、育ちがよさそうな笑顔をこちらに向ける。

 

「いや、人は足りている。」


 俺は書類の山へと目を戻す。

 

「ちょっと待ってよ。彼はダンジョンアカデミーを首席で卒業したのよ。それにアカデミーにいながらにして、コンテストでも優勝しているし。」


 ルーテシアが慌てふためく。ダンジョンアカデミーはダンジョン協会が母体となるダンジョンの設計、構築、運営を学ぶための学校である。その卒業生たちは広くこの業界では受け入れられており、おおむね好評、いや引く手にあまたらしい。つまりエリートである。

 つまり、俺たちのような、現場たたき上げとは違う世界の人である。

 そして、コンテストで優勝とか。コンテストとは、アカデミーが主催するダンジョンデザインのコンテストで、これは在校生、卒業生を問わず、参加できる。しかし、そのレベルは高く、コンテストで優勝したという箔は一流ともいえるものである。まあ、レインなら優勝はともかく、上位には食い込めるのだろうが。

 

「そんなエリート様が、なんでうちにくるんだ? ガンディで面倒みろよ。」


 俺の言葉に、ルーテシアがため息をつく。

 

「それができれば苦労はしないわよ。彼ね、私の従弟なの。」


「従弟? じゃあ、真祖ってことか?」


 ルーテシアがうなずく。

 

「べつに真祖だろうが、従弟だろうが、なんか問題あるのか?」


「おおありよ、実はね・・・ って言えないのよぉ。お父様に口止めされているし。」


「わかった。」


 俺はうんざりした顔を上げると、ルーテシアに顔を向ける。どうやら、この話にはルーテシアの父親、つまりガンディコンツェルンの社長であるメガーヌが絡んでいるようだ。

 

「とっとと帰りやがれ。レイン、塩まいとけ。」


 そういうと、そそくさと書類に向き直る。

 

「待ってよ、ちょっと。お願いだから。」


 ルーテシアが涙声で両手を合わせていた。

 

「貴様、ルーテシア様がここまでしてお願いされているというのに、その態度はなんだ! それに先ほどから聞いておれば、ルーテシア様を呼び捨てなど、貴様は何様のつもりだ。」


 突然、コレオスが俺に怒鳴り付けやがった。

 

「ルーテシア様が俺たちにお願いするときってのはな、大抵面倒ごとって相場が決まってるんだよ。そんなやつにいちいち様つけてられるかっての。」


「ふ、不愉快だ。貴様、ルーテシア様から面倒ごとを押し付けられるなど、至高の喜びではないか!」


 いや、お前おかしい。絶対おかしい。

 

「おい、ルーテシア。こいつなんなんだよ。いいから連れて帰れ。」


「ルーテシア様、このような下品な連中とお付き合いされるのは、如何なものかと思います。さあ、帰りましょう。」


 いい流れだ、と思ったら、ルーテシアがコレオスをにらみつける。

 

「あなたね、帰ってお父様になんて報告するつもり? ロイドにあっさり断られて帰ってきましたって言うの?」


「そ、それは・・・」


「ちょっとルーテシアさん、それってメガーヌさんからの指示ってこと?」


 ルーテシアは涙目のまま、レインにうなずく。

 

「ボス、さすがにメガーヌさんに頼まれたら、むやみに断らないほがいいんじゃないかしら。」


 スラ吉も書類から、おそらく顔を上げて、うなずく。

 

「しょうがねえな。わかった、そいつを預かろう。どのくらい預かればいいんだ?」


 ルーテシアの顔に笑みが戻る。

 

「ありがとう、さすがはロイドね。そうね、3か月ぐらいお願いできるかしら。」


「3か月か。具体的にはどうすればいい?」


「ええ、彼は知識はあるんだけど、実務経験はないわ。だから、助手とか雑用とかやらせて、実務を経験させてほしいの。ちなみに給料はなくていいわ。もっとも、彼の家も裕福だから、働く必要がないのだけれど。」


 働く必要がないだと?! くっそ、ふざけやがって。

 

「一つだけ、いっておく。そいつが逃げ出しても、こっちには責任はない、それでいいな?」


「もちろんよ。もっとも、彼もお坊ちゃんの割には結構根性あるから、そうそうは逃げ出さないと思うし、逃げ出したらお父様がなんていうかわからないから、やっぱり逃げ出さないわね。」


 ほほう、これは楽しみだ。

 

「ルーテシアさん、ちなみに彼が無償で働くって以外は、こちらにメリットはないのかしら。」


 レインの目が輝いている。つまり、これは交渉である。

 

「もちろん、タダとは言わないわ。そうね、報酬として、私がロイドの奥さんになってあげるってのはどうかしら。」


 ルーテシアがくねくねしながら、にっこり微笑む。

 

「とっとと、そいつを連れて帰りやがれ。そして、二度とここの敷居をまたぐんじゃねえええええ。」


 俺は、手にしたペンを投げつけそうになったが、スラ吉に止められる。なぜか、レインは止めなかった。

 

「き、き、貴様、ルーテシア様を貴様の奥様にだとおおおお。け、決闘だ。貴様に決闘を申し込む。」


 コレオスが俺につかみかかる。

 

「ちょっと、コレオス。なにやってるのよ、その手を放しなさい。」


 慌てるルーテシアの声に、コレオスは即座に手を放すと、ルーテシアにひざまずく。

 

「ルーテシア様、申し訳ございません。この男に決闘を申し込むことをお許しください。」


「あんたね、ダメにきまってるでしょう。」


 そして、ルーテシアが俺に向き合う。

 

「ねえ、ロイド。そこまで私を拒否するってひどくない? これでも私はガンディの跡取り娘候補よ? 逆玉よ? 私と結婚したら、遊んで暮らせるわよ?」


 

 あ、なんかレインの機嫌がものすごく悪い。

 

「あら、ルーテシア。私もクラウド商会の跡取り娘候補なんだけど? ガンディにも負けてませんわ。」


 レインとルーテシアの間に、火花が散る。慌てて、俺とスラ吉は後ろへ下がった。みると、コレオスもビビりながら下がっていた。

「あ、姉御。ここで喧嘩はまずいなり。ここを壊すと、ゼットさんに怒られるなりね。」


「そ、そうだぞ。ここを追い出されるのはまずい。」


 俺とスラ吉がレインをしきりになだめる。

 

「わかりましたわ。とりあえず、報酬については、いったん保留にしましょう。ただし、ルーテシア。あなたはしばらくの間、出禁にします。」


「そ、そんな・・・」


「それを飲めないなら、この話はなかったことに。」


 ルーテシアは狼狽していた。つうか、べつにここに来る用事ないだろう、と思うんだが。

 

「わ、わかったわ。それじゃ、コレオスのことはお願いするわね。」


 そういうと、ルーテシアはしょんぼりと部屋を出ていく。

 

「なんだ、あいつは。」


 そういうと、レインとスラ吉はあきれ返った表情で俺を見ていた。コレオスですら。

 

「なんだよ、その顔は。」


「いえ、なんでもありません。まあ、ロイドですし。」


「そうなりね。これが親分なりね。」


「いやいや、まさかこれほどとは・・・」


 よくわからんが、こいつらはほっとこう。とりあえず、書類をなんとかするか。

 

 

 

「レイン様、こちら終わりました。スラ吉様、こちらも終わっております。」


「ありがとうございます。」


「こっちもありがとうなりね。」


 あれから1週間ほどがたつが、コレオスは結構仕事ができるようだった。ただし、レインとスラ吉の分だけな。

 

「なあ、コレオス。なんで俺の分は手伝わないわけ?」


「ふん、敵に塩を送ってどうする。」


「敵ってなんだよ。つうか、敵には塩を送るもんだろうが。」


 コレオスの野郎、踵を返して向こうに行きやがった。

 

「まあ、ボス。私が手伝いますから。」


 そういうと、レインが俺ににっこりと微笑む。

 

「それはありがたいけど。なんかレインも変わってないか?」


 あの一件以来、レインがなぜか優しい。どちらかといえば、もともとレインは優しいのだが、時々見せるとげのようなものがなくなった感じがある。

 

「いえ、私はもともとこんな感じですよ。」


 ふとスラ吉を見ると、スラ吉のやろう、目をそらしやがった。なんか隠してるか、企んでやがる。

 

「じゃあ、こっち手伝いますね。」


 レインが優しい。これはこれでうれしい。

 

「でさ、レインさ。眼鏡外したよね。あと髪型も変わったし。なんかあったの?」


 そうだ、レインはなぜか眼鏡をはずしている。あの眼鏡はモニターになっていて、いろいろな情報を表示させるアイテムだったはずだ。そして、髪型も三つ編みをやめて、普通にロングにして、かわいいバンドみたいなのでひとまとめにしている。

 そして、今のレインを見ていると、昔一緒に遊んでくれたり、世話をしてくれていたダークエルフのお姉さんを思い出す。あれは、クラウドさんに預けられる前、つまりレインと出会う前のことだった。笑顔が優しい人だった記憶はあるのだが、その顔までは思い出せない。

 

「え? 気が付きました。やだ、どうしよう。似合ってます?」


 レインの声に、ふと我に返る。レインを見ると、その顔がほんのり赤い。熱でもあんのか?


「ああ、似合ってると思うぞ?」


 なんか、レインが小さくガッツポーズしてやがる。賭けかなにかをしているのだろうか。

 

「ほんと、ロイドさんはうらやましいですね。レインさんみたいなきれいで有能な人がそばにいて。」


 コレオスがセリフを棒読みしてるみたいなことをいってやがる。つうか、お前、そのメモなんだよ。

 

「はあ、まあ、いいや。つうか、今日はタギバークさんのとこに行くんじゃなかったっけ?」


「あ、そうですね。そろそろ向かったほうがよさそうですね。」


 俺たちはコレオスも連れて、タギバークさんのダンジョンへと向かうことにした。

 

 

 

「じゃあ、リプレースですけど、罠が古くなっているんで、新しいタイプのに代えますね。あと、ぼろになってるところがあるんで、そこは一回崩して、壁の配置換えと合わせて作り直しますね。」


「おお、そうだな。どのくらいかかるかね。」


「うーん、金貨1枚でどうでしょうか。」


「まあ、そのぐらいはかかるか。しょうがないな。それで頼むよ。」


「もうちょっと安くできそうなら、安くやりますんで。じゃあ、レインは配置案よろしく。スラ吉は罠の方頼むな。俺はコレオスと壁の方をもう一回みてくる。」


「了解なり。」


「では、タギバークさん、あちらで配置の打ち合わせしましょう。」


 レインとスラ吉が向かうのを見て、俺たちも移動する。タギバークのダンジョンは、初級から中堅ぐらいまでをターゲットとする6階層ほどのダンジョンだ。タギバークはワイトで、スケルトン系が多いダンジョンである。そして、ここはいろいろと制約が多い、厄介なダンジョンでもある。タギバークの思い入れのあるダンジョンらしく、ここを離れるつもりはないらしいので頭を使ってなるべく制約に引っかからずに、かつ安く手を入れる必要がある。まあ、やりがいのあるダンジョンともいえる。

 

「ここは随分とちいさなダンジョンですね。」


 コレオスが周りを見ながら、いう。

 

「まあ、ガンディあたりにしたら、小さい部類にはいるだろうけど、このクラスのダンジョンは結構多いよ。」


「そうなのですか。」


 コレオスがぶつぶつ言いながら、俺についてくる。

 

「ここだな。おい、コレオス。その資料しっかり目を通しておいてくれよ。」


 コレオスに渡しているのは、このダンジョンの見取り図や特徴などを書いた、このダンジョンの設計、仕様の資料である。

 

「ふむ、このようにまとめてあるのですね。しかし、汚い字ですね。」


「うるせーよ。読めりゃいいんだよ。それより書いてある中身が重要だから。」


 コレオスの指摘にイラッとする。そりゃ、レインに比べりゃ俺の字は汚い。ついでに、このコレオスはどっかの教科書みたいな字を書くのだ。字でダンジョン作るつもりかよ、と思う。

 とりあえず、チェックをすませたので、レインたちのところに向かう。

 

「ボス。そっちは終わりですね。こちらもちょうど終わったところです。」


「こっちも終わったなりよ。」


 スラ吉の声に振り返ると、スラ吉もチェックを終えて戻ってきたようだ。

 

「じゃあ、プランできましたら、またお伺いします。」


 俺たちはタギバークに別れを告げると、ダンジョンを後にする。

 

 

 

「ぜひ、この私めにも、提案させていただけませんでしょうか。」


 コレオスがレインに頭を下げる。いや、こっちだろ?と思うが、とりあえず面倒なので置いておく。

 

「ええ、案を採用するかどうかは別として、提案はかまいませんよ。」


 レインがコレオスにうなずく。まあ、いい案だったら、それはそれ。アイデアは多いにこしたことはない。

 

 

 数日後、コレオスの案が出来上がったとのことで、レビューを行うことにする。

 

「という感じになりますね。いかがでしょうか。」


「まあ、なんていうか、凄いな。」


「ええ、これは凄いですね。」


「そうなりね。驚いたなりね。」


 レインもスラ吉も、コレオスの提案に驚いていた。コレオスもその反応にまんざらではない様子だった。

 

「でもな、これは採用できんぞ。」


「ええ、さすがに無理ですね。」


「そうなりね。これやったら、大変なことになるなりね。」


「な、なぜですか。なぜにこのプランが採用できぬと?!」


 先ほどまでの好評と打って変わったその反応に、コレオスは俺たちに食って掛かる。

 

「スケルトンといえば、墓場。つまり、この墓場を基調とするレイアウトはまさにうってつけ。そして墓場から沸き上がるスケルトンたち、それにおののく冒険者ども。冒険者たちが一斉にスケルトンたちに襲い掛かるが、その背後からも現れるスケルトンの群れ。そして冒険者たちは全滅するのだった。そして、王座に座り冒険者たちを待つダンジョンの主。現れる冒険者たちをにらみ付けながら、ゆっくりと立ち上がり、冒険者どもを蹴散らす。まさにダンジョンの主にふさわしいではありませんか。そして、これで上級ですら蹴散らすことも可能かと。」


 恍惚とした表情をみせるコレオス。

 

「いったい、何が不満だというのですか。この芸術すら理解できない、とでも言うのですか!」

 

「あのな。アイデアはいいと思うよ、アイデアは。でもこの50階層ってなんだよ、いくらかかると思ってるの?」


「え? あ。金貨30枚ぐらい?」


 意外といい線ついてきやがる。こいつ、この辺の金銭感覚は変にあるんだよな。

 

「そうだ。で、今回の予算は?」


「たしか、金貨1枚でしたね。」


 一斉にうなずく。

 

「のこりの分はどうするんだよ。」


「ローンとか?」


「ばかか、お前は。払いきるまでに何年かかるんだよ。そして、その間はリプレースなしか?」


「あ・・・」


 とりあえず、自分の失態に気が付いたようだ。

 

「ついでにだ。仮に50層まで作ったとする。そしたら、そこを誰が守るんだ? 今のメンバーじゃ全然たりないぞ? 中を散歩させるのか?」


「いえ、そこは魔物を雇えば。ダンジョン協会からも魔物を派遣する仕組みはありますし。」


「あのな、それって金かかるよな。そして、そんなに急に冒険者たちはあつまらないぞ? その間の支払いはどうするんだよ。」


 コレオスも、うつむきながらもうなずいている。さすがに言われていることは理解できているようだ。しかし、さらに追い打ちをかけてやる。

 

「まだあるぞ。お前資料ちゃんとよんでないだろ?」


「いえ、読みましたよ。初級から中堅ぐらいを対象として、メインはスケルトンですよね。」


「そのほかは?」


 コレオスが慌てて資料をひらき、目を通し始める。

 

「あ・・・ 土壌が弱いって・・・」


「そうだ。あそこは土壌が弱い。だから、今以上に拡張すると、下手すると崩れるんだ。確かに強化魔法を使う手もあるが、そうするとメンテナンス費用がはねあがるんだよ。」


 コレオスが、がっくりと肩を落とす。

 

「まあ、アイデアは悪くないんだよな。よし、コレオス。おまえ、古道具屋を回って、銀貨2枚ぐらいの使えそうな椅子を探して来い。あと、レイン。レイアウト図を見せてくれ。墓場につかえそうな場所を探す。スラ吉は柱に使えそうな罠を探してくれ。ちょっと変だが罠を柱にして、強度を稼ぐ。」


 そして、一斉に動き出す。

 

 

 俺たちはタギバークのダンジョンに来ていた。そして、タギバークに今回のプランを提示する。

 

「すばらしいですな。これが本当に金貨1枚でできるのでしょうか。」


「ええ、なんとかできそうです。そのかわり、あちこち張りぼてになっちゃいますけど。」


 そういって、タギバークに苦笑する。まあ、張りぼてといっても、強度はあるので壊れることはないし、ダンジョン内は暗いので、張りぼてと気が付かれることもないだろう。

 

「では、これでお願いします。」


 こうして、数日後にタギバークのダンジョンは完成した。正直、俺には思いつかないアイデアだった。レインも関心していたので、これはかなりいいダンジョンができたと思う。ただ、金貨一枚はちょっと無茶だったが、ぎりぎり赤字にはならずに済んだ。

 

 


「レイン師匠、お茶が入りました。スラ吉師匠、お肩をおもみいたします。」


「いや、スライムに肩はないなりよ。」


「おっと、これは失礼いたしました。ではお茶をどうぞ。しかし、このお茶は物凄くおいしいお茶ですね。まさに師匠方にはふさわしいお茶かと。」


 レインとスラ吉が苦笑している。あのあと、コレオスはレインとスラ吉を師匠と読んていた。

 

「なあ、俺のお茶は?」


「ふふふ、敵に送るお茶などございませんよ。ロイドさん。」


 俺だけなしかよ。

 

「これでルーテシア様も、ここまで成長した私を見直されることかと。これもすべて師匠のおかげでございます。ぜひ、お二人には私とルーテシア様の結婚式にご招待させて頂ければと。」


「結婚式? お前、ルーテシアに惚れてるわけ?」


 コレオスがにやにやしながら、俺にうなずく。ようやく、こいつが頑張るわけが分かった。

 

「でも、なんで俺が敵なんだ? お前が勝手にルーテシアと結婚すればいいだけだろ?」


 なんか、レインとスラ吉がため息をついてやがる。こいつらどうしたんだ?

 

「まあ、たしかに今の私めからすれば、もはやロイドさんは敵にも値しないかもしれませんね。」


 そういうと、コレオスはバカみたいな高笑いをしやがる。

 

「なあ、こいつ凄いうざいんだが。やっぱり追い出さねえか?」


 俺はレインとスラ吉を見る。

 

「いえ、まだ修行がたりません。このままでは安心できませんので。」


 いや、レイン。その安心ってなんだよ。まあ、レインがそういうなら、しょうがないか。

 

「それはそうと、俺にもお茶だせや!」


 レインが微笑みながら、俺にお茶を入れてくれる。やっぱりレインはいい子だわ。マジこいつと結婚してもいいと思う。古い付き合いだしな。

 

 

 

 そのころ、ルーテシアは。


「ちょっと、なによこの結界。わたしをはじくとか、ありえないでしょ。さてはレインね。あの娘、やるわね。って、関心してる場合じゃないわ。むきー。私の初恋がああああああ。」


 ゼットのダンジョンの裏口の前で、いきり立っていた。さすがに正面から真祖のヴァンパイアが入るような、ゼットに迷惑がかかるようなことはできないのであった。

 

 がんばれ、ルーテシア。負けるな、ルーテシア。君の未来は、たぶん明るいんじゃないかと思う。おそらく。

 





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