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ダンジョンのコンサルタントの話。お客さんの減ってしまったダンジョンの建て直しを依頼され、ダンジョンを立て直していく。結構正攻法でやってます。

■1


 冒険者のような男と女の二人組みと、スライムのような魔物1匹が、ダンジョンに入っていく。

 ここが今回のターゲットになるダンジョンだ。


「毎度どうも。ダンジョンコンサルタントのロイドです。」


「ああ、ロイドさん。わざわざすみません。」


「カローラさん自らお出迎えとは恐縮です。この二人は、助手のレインとスラ吉です。」


 レインといわれた女性は、ダークエルフだ。160cmぐらいの身長でダークエルフらしくスタイルはかなりいい。また、服の上からでも分かる巨乳だ。が、髪の毛は古臭い感じの三つ編みでメガネをかけており、トータルとしてはあまりぱっとしない残念系だった。

 スラ吉は、よくいるスライムなのだが、言葉も話せるし、魔法も一通り使えるという、スーパースライムだ。しかも、魔王を目指して修行中である。

 二人はこのダンジョンのオーナーであるカローラさんに、愛想よく挨拶する。

 

「今回の依頼は、こちらのダンジョンの見直しって事でよかったですかね?」


「ええ、最近冒険者も減っちゃって、商売あがったりなんですよ。」


「でも、この辺は競合するダンジョンもそれ程無いし、結構立地条件は悪くないですよね。」


「まあ、昔はそれなりだったんですがねえ。ここって、親父から10年ぐらい前に引き継いだんですが、5年ぐらい前からどんどん来客数が減っちゃって、今ではこの有様なんですよ。」


「カローラ様のこちらのダンジョンについて、調査させていただきましたが、メインターゲットは初級から中級のようで、5層からなる構成になっておられるようです。主な魔物はゴブリンさんやオークさん達がいらっしゃいます。」


 レインがこのダンジョンについての情報を説明してくれる。見た目は残念系でも、仕事は物凄くできるのである。


「うーん、この辺てそこそこ大きな町もあるので、初級から中級だったら、ニーズはあると思うんですよね。魔物もゴブリンさんとかオークさんだったら、バランスも良さそうだし。」


 カローラといわれるクライアントは、結構若そうな感じのオーガだった。ちょっとチャラチャラしてそうな感じだが、それ程問題のあるようには見えない。

 

「まずは、ちょっと見せていただいてよろしいですかね。」


「どうぞ、どうぞ。この通り、開店休業状態ですから、どこでも好きなところをご覧になってください。」


「すみませんね。あ、マップってあります?」


「いや、マップはないですね。」


 俺達は顔を見合わせた。嫌な予感がする。ダンジョンを管理する上で、マップは重要である。魔物の配置とか、罠の配置とか、マップが無いケースというのは、管理されていない、ということを表す。

 

 

 とりあえず、1層目から入ってみる。

 

 いきなり、来た。異臭ってやつ?

 

「どのくらいの頻度で掃除されてます?」


「いや、どのくらいの頻度っていうか、たまに、って感じですね。」


 カローラはいきなり突っ込まれて、頭を掻き始める。


「この臭いは、さすがに嫌じゃないですか?」


「まあ、たしかにちょっと臭うかな、とは思いますけど。」


「ちょっとじゃないですよ、これ。女性としては犯罪認定すべきレベルです。」


 レインがカローラを睨んだ。 カローラはレインにビビり始めている。

 

「じゃあ、とりあえずつけときますか。」


 俺達はガスマスクを出すと、そそくさとつけ始める。 そして奥へ進んでいった。

 

「ゴミすごいですね。これはちょっとヤバイですよ。あと、壁もボロボロ。多分冒険者達の魔法とか剣とかの痕ですね、これは。」


 ガスマスク越しでも、レインの目が釣りあがってきているのが分かる。

 

「親方、結構あちこち穴あいてるなりよ、これ。多分魔素の流れもおかしくなってそうなりね。」


 スラ吉は、アンテナのように手を伸ばすと、魔素の流れを追い始めた。

 たしかにスラ吉のいうように、あちこちに穴が開いており、ダンジョンの構成を無視してショートカットとかできる状態になっていた。これでは、魔素も流れがおかしくなっているだろう。

 

 ダンジョンにおいて、魔素の流れは重要である。

 魔物は基本的に魔素で成長する。食事を必要とする魔物もいるが、生命としての維持とは別に、魔素による成長もある。人間は、経験やスキルで強くなっていくが、魔物は経験とスキル以外に、魔素によるランクアップもする。

 また、唯の剣であっても、魔素に触れ続けることで、属性を持ったりしてレア化することがある。魔素をうまくコントロールすることは、ダンジョンの管理には不可欠である。

 

 しばらく進むと、2層へ降りる階段を見つけた。

 

「これ、2層に行く階段ですよね? じゃあ、2層行ってみますか。」


 2層も1層同様に、ゴミに溢れ、壁もボロボロだった。

 

「あれ、ここの罠って壊れていませんか?」


 レインが壁の穴を指差している。おそらく、矢が放たれるギミックであろう。しかし、ためしに床のスイッチらしき部分を踏んでみても、何も起こらなかった。

 

「ああ、そこもう動いていないんだ。まいったな。」


 カローラが、初めて知ったかのように、頭を掻き始めた。

 

「本当に管理されてないんですね。」


 レインがカローラを睨みつける。 一応、クライアントなんだけどね、その人。

 

 2層もボロボロ、という以外、見所がないため、そのまま3層への階段を見つけて、3層へ移動した。

 

 3層は、2層とかと比べると、結構綺麗であった。壁もそれ程ひどくない。ところどころ、修復した痕も見られた。

 そして、3層のとある小部屋で、俺達はとんでもないものを目にした。

 

 なんと、ゴブリンの老夫婦がお茶を飲んでいた。

 

「おお、カローラさん、ひさしぶりですな。」


 おじいさんゴブリンが挨拶してくる。おばあさんゴブリンもこちらに会釈をしてきた。

 

「元気そうでなによりだ。ところでみんなは?」


 カローラが回りを見渡しながら、おじいさんゴブリンに聞く。

 

「いや、ずいぶん前にでていきましたよ。今はわしらと4層のオークさんぐらですかな。」


 衝撃の事実にあせる一同。カローラもあせってる。

 

「うーん、どうしましょうね。これ。」


 どうしようもないんだが、とりあえず回りに聞いてみようとするが、レインとスラ吉は固まっているし、カローラは呆然としていた。

 

 やけくそで4層に移動する。

 

 4層は3層同様に、結構綺麗で、壁とかもかなり状態が良かった。しかも4層には水場があった。しかし、その水場のそばには洗濯物がほしてあった・・・

 

「うーん、洗濯物が干してあるダンジョンって、初めて見ましたわ。」


 すでに、レインは怒ることを忘れ、あきれ返っていた。スラ吉も笑いを必死で抑えている。

 

「ここで洗濯物って乾くんですか?」


 俺は素朴な疑問をぶつけてみる。

 

「日光は入らないのですが、ここの魔素は変わっていて、なぜか洗濯物が乾くんですよ。」


 いきなり、誰も居ないはずの後ろから声がして、一斉に振り返ると、そこにはオークが居た。

 

「あ、はじめまして、ロイスといいます。カローラさんから依頼をうけて、ここの調査に来ています。」


「ああ、はじめまして、オークです。それはご苦労様です。」


 オークは壁の補修道具を持って、そのままどこかへ行ってしまった。おそらくあのオークがここの壁を修理しているのだろう。

 もう、どうにでもなれと、5層にいく。

 

 5層も結構綺麗である。壁の状態もいい。でも、それだけだった。

 

 

 ひとまず、今後の方針などを検討するため、カローラさんの執務室に行くことにした。

 

「さて、この後ですが、ここから立て直すとすると、結構面倒ですね。」


 部屋には俺達のほかに、カローラやゴブリンの老夫婦とオークがいた。

 

「まず、ダンジョン自体ですが、1層と2層は壁を直して掃除すれば、なんとかなるでしょう。3層から5層は、ほぼそのままでも大丈夫かと思います。」

 

 俺は一旦話をきり、カローラを見る。カローラもこの状態に頭を抱えているようだ。当然だろう。

 

「罠ですが、ほぼ全滅でしょう。状態を確認してみる必要はありますが、おそらく総取替えでしょうね。でも、一番の問題は、魔物がゴブリンさんたち二人と、オークさんしかいないってことですかね。」


 もう、この時点で詰みである。

 

「どうにかしようとすると、結構な費用がかかりますし、思い切って、大手に貸し出すって手もあるかも知れません。」


 でも、貸し出すという手はなるべく使いたくなかった。なぜなら、老夫婦とオークの居場所がなくなるということでもある。

 

「お茶どうぞ。」


 おばあさんゴブリンがお茶を出してくれた。

 

「あ、すみません。お気遣い無く。」


 俺達は、出されたお茶を飲んだ。

 

「「こ、これは・・・」」


 俺達は絶句した。そのお茶は、最高級の魔素茶とも言うべき味わいであった。間違いなく、これまで飲んだ中で、一番うまい。

 

「そのお茶は、4層の水場のあたりで取れるんですよ。おいしいでしょう。」


 おばあさんがにっこり笑いながら、説明してくれる。

 

「すみません、そこに連れてってもらえますか!」


 俺の形相に、カローラ達はビビリながらも、了解してくれた。

 

 

 洗濯物が干された水場の先に、魔素のお茶が生えていた。それも結構な量が。老夫婦が手入れをして、育てていたらしい。しかも、結構な量の在庫も保管されているそうだ。

 

「これは、いけるかも・・・」


 俺達はお互いの顔を見合わせると、うなずきあう。早速、作戦会議だ。

 

「このダンジョンの建て直し予算は、結構かかるというのは、先程説明しました。でも、恐らく金貨50枚程度はかかるでしょう。この金額だと、おそらくカローラさんには捻出が難しい金額かと思います。」


 カローラは、しょんぼりしながらうなずく。確かに金貨50枚というのは、結構な金額だ。

 

「そこで、このお茶です。これは結構な金額で売れます。これを売って、そのお金で建て直ししましょう!」


 老夫婦は、腰を抜かしていた。それはそうだろう。

 

「こ、これは売れるんですか?」


 おじいさんが、腰を抜かしたまま、震える声で聞いてくる。

 

「ええ。正直言って、これを売るだけで、一気に大金持ちになれると思います。ただ、その場合、ご夫婦の息子さん達は、ここに戻ってくることはないかと思います。また、オークさんのお知り合いの方たちも同様でしょう。やはり、ダンジョンの再建は必要ではないかと思います。」


 カローラ達が、一斉にうなずきあう。放置していたとはいえ、このダンジョンに対する思い入れはあるし、できれば家族と暮らしたいという思いも当然ある。

 

「さっそくですが、これの販売について、手配させて頂いてよろしいでしょうか。」


 さらにうなずきあう。

 

「レイン、爺さん呼んでくれ。」


「了解しました、ボス。」


 爺さんというのは、レインのおじいさんでクラウドという。クラウドは、大きな店をいくつも持っている商人だ。

 そして、俺の育ての親みたいなものでもある。俺は両親の顔をしらない。そして物心つく前に、俺の爺さんが知り合いのクラウドに俺を預けた。俺はクラウドの店で、使用人として育てられた。まあ、こういうのは結構よるある話なのだが。

 

 クラウドが来るまで、俺達は今後の展開について、つめていく。

 

「まず、掃除を入れます。これはスラ吉で手配して。次に、1層と2層の壁は、俺が直します。オークさんもお手伝いお願いします。4層については、一旦保留します。ここは、継続的な魔素茶の栽培も考慮して、構成を見直す必要があるかと思います。あと、罠については、こちらで業者を手配します。レイン、ガーリンさんに連絡とってくれ。」



「おう、ロイド。なんだここは。本当にここにそんな凄いものがあるのか?」


 大まかな方針について説明していると、人がよさそうなダークウルフの爺さんが来た。

 レインがセットしておいた転送魔方陣で、早速クラウドがやってきた。凄い金持ちなのだが、見た目はその辺の爺さんと変わらないカッコをしている。おしゃれな感じの爺さんってところだろうか。でも、お付のダークエルフは、いかにもやり手ってカッコしてるけど。


「紹介しますね。このうるさい爺さんは、クラウドさんという商人の方です。」


 俺がカローラ達も紹介していく。その間におばあさんが、例のお茶をクラウドに出す。

 

「こ、これは・・・」


 俺達は感動のあまり固まっているクラウドを見ながら、ニンマリした。

 さっそく、値段や流通経路、今後の栽培などについて、相談していく。クラウドが提示した金額は、このダンジョンをフルリフォームしても、使いきれないほどのお釣りがくるレベルだった。もうカローラ達は、口をあんぐり開けたままである。老夫婦にいたっては、そのまま心臓とまるんじゃないか、といわんばかりだった。

 

 とにかくこれでお金の心配はいらなくなった。早速取り掛かることにする。


 まず、1層。ここは穴と壁を修理して、現在の構成をそのまま使う。一応、魔素の流れをスラ吉に確認してもらったが、穴をふさげば問題ないだろうとのこと。

 

 次に2層。ここも構成をそのまま使うが、いくつかの部屋を結界で塞いで、控え室のように使うことにする。

 

 1層と2層の戦闘対応は、ゴブリン達に担当してもらうことにした。老夫婦の息子達に連絡済みである。

 

 3層については、部屋をいくつか拡張することにした。ここはオーク達に担当してもらうのだが、今のままだと狭すぎて、オーク達に不利になってしまっている。通路には罠を増やして、戦闘は拡張した部屋を中心にしてもらう。

 

 問題の4層だが、ここは他のフロアとは切り離すことにする。そして、魔素の流れをうまく使って、全て魔素茶の栽培に当てる。あと、ここはレアアイテムの生産にも結構使えそうだ。ここに剣や防具を保管しておくだけで、周りの魔素を吸収して、1ヶ月ほどでそこそこのアイテムになりそうだった。これを宝箱にしまって、客引きの景品に使うことにする。

 一応、4層を切り離したときの、魔素の流れについてスラ吉に確認してもらったが、裏道を作って、1.2.3.5層の流れをうまく使えば問題ないだろうとのことだった。もともと4層の魔素はちょっと変わっているので、そのほうが良い面もある。

 

 5層はオーク達の担当だが、もともと広めにとってあるため、基本的にはこの構成でいいだろう。一応、ボス部屋と管理室を作ることにする。当然ボスはカローラだ。カローラはここを引き継いだあと、しばらくして旅に出てしまっていたそうだ。旅先で剣や槍の修行もしてきたそうなので、ボスとしてその経験を生かしてもらう。

 

「でも、このダンジョンはそれ程広くないですし、ゴブリンさんたちもそれ程人数はいませんが、大丈夫でしょうか?」


「?」


 俺は、カローラが何を言っているのか分からなかった。

 

「ひょっとして、ご本人達が戦うつもりでいらっしゃいますか?」


 おそるおそるレインが尋ねた。

 

「え、じゃあ、誰が戦うんですか?」


 カローラ達が驚いた表情で聞いてきた。

 

「あー、最近の少子化で、どこも人手不足気味なんですよ。なので、最近はダミーシステムってのが一般的です。」


 俺はダミーシステムについて説明する。ダミーシステムとは、ダミーを用意して、それに憑依するような感じで使う。ダミーなので、怪我をしたり死んだとしても、実体は傷一つつかない。比較的子沢山といわれるゴブリン達ですら、最近は少子化の傾向があり、昔のように実体で戦っていると、あっという間に種が途絶えてしまうのだ。今、少子化の問題がないのは人間ぐらいだろう。逆に人間は頻繁に戦争とかをしているにもかかわらず、増える一方である。

 

「へー、今はそんな物があるんですか。」


「まあ、正直、実体で戦ってるところもまだ結構ありますよ。ダミーシステムって結構な値段しますし。今回は魔素茶の売り上げがあるんで、導入できるわけですから。」


 続いて、運用面だ。

 

「運用面ですが、とりあえず、週一ぐらいで掃除を頼んだほうがいいですね。これは掃除業者を手配しておきます。まあ、スライムさん達ですけど。ああ、一応専門業者なんで、武器とか防具とか、金目のものはちゃんと保管してくれますから大丈夫です。のちのちは雇ったほうがコスト的にはいいですけど、とりあえず、育成の手間もあるんで、最初は委託してしまったほうがいいですね。」

 

 スライム達による掃除は一般的だ。しかしスライムは何でも取り込んで、消化してしまうため、冒険者の装備とかも勝手に消化してしまう。なので、最近はその辺の教育をしてある、専門の掃除スライムがいる。

 

「そんな業者もいるんですか、知らなかった。」


 カローラは驚きっぱなしである。時代は進歩しているのだよ。

 

「壁とかのメンテナンスですが、これはオークさんに弟子をつけて、オークさんにやってもらったほうが良いですね。ただ壁には対魔法攻撃などの防御エンチャントをしといた方がいいと思いますので、年に1回ぐらい、罠のオーバーホールやエンチャント処理のために、業者をいれればいいかと思います。」


 もう、カローラ達はうなずきっぱなしである。

 

 先程から気になっているんだが、これまでまったく冒険者が来なかったわけでもないだろう。その時の対応ってどうしていたんだろうか。やはりオークが頑張ってた、ってことか。


 こうして、再建に向けて進み始めた。

 

 まず、スライム達による掃除が始まった。見る見るうちに、綺麗になっていく。

 

 綺麗になったところから、俺が土魔法で穴を塞いでいく。穴を塞ぎ終わると、スラ吉が魔素の流れを確認するが、問題はなさそうだった。

 レインが手配したドワーフのガーリンが到着するのを待っている間に、マップを作っていく。

 

 マップが出来上がるころに、ガーリンが到着した。

 

「ロイド、ご無沙汰、ご無沙汰。」


「あ、ガーリンさん。わざわざすみませんね。」


 ガーリンが何人かの弟子と、機材一式を持って現れた。


「さっそくやろうか。状況と仕事の詳細を教えてくれ。」


 ガーリンは、鍛冶屋だが、罠とかのシステムの専門家でもある。俺達はカローラの執務室に移動する。

 

「まず、罠が全滅してるんで、それの入れ替えですね。あと、ダミーシステムを入れます。ついでに監視システムもあわせて導入します。そのほか、待機部屋とか、倉庫とかの結界なんかですね。」


 ガーリンにマップを見せながら、説明していく。ガーリンは、うんうんうなずくが、イマイチ納得できていないような表情をしていた。

 

「すまん、確認なんだが、おおよその内容は分かった。特に難しい作業でもないので、問題はなかろう。でも、金は大丈夫なのかね。このダンジョンに、それ程の蓄えがあるとは思えんのだよ。まあ、お前さんは信用しているが。」


 当然、この工事は結構大掛かりであり、費用もかかる。現状、払えるようなダンジョンには見えないのは確かだ。そこで奥の手をだす。


「お茶をどうぞ」


 おばあさんがガーリンに魔素茶を持ってくる。

 

「んっ!!!! うまい、うますぎる!!」


 俺達は、驚くガーリンを見て、ニヤニヤする。完全に放心しているが、この魔素茶はそれほどの物である。

 

「ここで取れる魔素茶ですよ。在庫もたっぷりあるし、クラウドさん経由で市場に出すことも決まってますので、お金の問題はないです。ちなみに、今回の工事予算は金貨50枚ぐらい、それぞれのメンテナンス費用総額は、年金貨1枚ぐらいで見積もってます。」


「なるほど、予算も問題ないだろう。じゃあ、どんどん進めるか。」


 ガーリンは、工事内容とスケジュールを確認すると、にこにこしながら資材と作業員を手配していく。



 1週間ほどして、大体の工事が完了した。それに合わせるように、老夫婦の息子達やオークの知り合いが到着する。ゴブリンやオーク達は、最終的に4層に居室を作って、そこで生活してもらう予定だが、4層はまだできていないので、とりあえず2層の控え室でしばらく生活してもらう。

 ついでに、罠についての説明や、監視システムやダミーシステムなどの使い方を覚えてもらうことにする。

 

 監視システムは、要所要所に水晶カメラを設置し、管理室で送られてくる映像が見れるシステムである。また、扉の緊急開閉なども可能である。さらに、壁や設備を壊すなどの危険行為をした場合、パトライトが反応する。

 監視システムは、5層の管理室からコントロール可能であり、罠の一部をオートからマニュアルに切り替え、監視室から任意のタイミングで発動させられるようにもした。これで、管理室からダンジョンの状況が、手に取るように分かる。

 

 ダミーシステムは、メンテナンスなどによる停止も考え、5層の管理室と2層の控え室にそれぞれ設置し冗長化する。一応、管理室、4層、控え室は裏道を作ってあるので、ダンジョン内の移動や、外出の時は裏道で移動でき、外にもでれるようにした。もちろん出口はセキュリティ対策をして、関係者以外は使えないようにしてある。

 

 さて、4層だが、スラ吉に魔素の流れをうまくコントロールしてもらいながら拡張を続け、4層の半分ぐらいで魔素茶が栽培できるようになった。これで生産量は大幅に上がり、年間の売り上げは、金貨5枚は確実だろう。栽培と品質の確保は、ゴブリンのおばあさんを中心に、クラウドの手配した栽培職人達が対応する。

 

 一般的に、ダンジョンの収入というのは、魔素の売買である。魔素には2種類あり、ここのように地脈に魔素が含まれているケースと、ここで生活する魔物たちが発する魔素の2つである。

 地脈に含まれる魔素は、品質や量がダンジョンによりまちまちだが、ほぼ永久的に魔素が供給されるというメリットがある。そして、武器などに魔素を吸収させやすい、という点も見逃せない。

 もう一つの方は、人員規模、レベルや戦闘量により変動するが、殆どのダンジョンがこちらをメインとしている。ここのように、地脈に魔素が含まれ、かつその魔素により魔素茶も取れるケースというのは、かなり珍しい。


 こうしてダンジョン内に溜まった魔素自体や、武器に魔素を吸収させることで、強化や属性の付与などをしたものを売買することで、収入を得るのである。そして魔素は、さまざまなエネルギー源となる。


 さて、ダンジョンの準備はおおむね終わった。 次は、戦闘訓練である。

 

「じゃあ、ゴブリンさんたちからいきましょうか。」


 ダミーシステムに慣れてもらうことも兼ねて、俺と戦闘訓練を行う。

 

 俺は、愛用の防具と武器を空中から取り出す。これは、俺の独自スキルである。マジックバックという、見た目以上の容量を持つバックを持っているが、その中のものを、自在に取り出すことができた。ついでに、防具などは装備した状態にもできるという便利スキルである。

 

 まずは、老夫婦の息子達から。集団戦になり、戦士1名、モンク1名、弓1名、魔法使い1名の4名のチームだ。一応、他のダンジョンでも活躍していたそうなので、腕には問題ないだろう。

 

 今回は訓練なので、向かい合った状態からはじめる。

 

「じゃあ、いきますよ。」


 俺は、戦士に向かうように見せかけて、魔法使いに切りかかる。弓が俺の足を止めるため、矢を放つ。 その矢をよけつつ、魔法使いに迫るが、戦士がその間に割り込んでくる。

 そのまま戦士に切りかかるが、盾でガードしてくる。その隙にモンクが俺の背後に回ってきた。モンクの攻撃を、体をひねりながら避け、戦士との会い撃ちを狙うが、連携が取れているようで、そのまま俺に向かってきた。見事な連携である。

 

「いや、見事な連携ですね。」


「恐れ入ります。このメンバーでこれまで戦ってきましたので。」


 そのあと、他のゴブリン達やオーク達とも戦闘訓練を行っていき、各層の割り当てを決めていく。

 

 なんかゴブリンの老夫婦が、戦闘準備をしている。


「やられるんですか?」


「ええ、久々にちょっとやってみようかと。」


 カローラの方を見ると、カローラは止めるつもりがないようだ。

 おじいさんは剣士、おばあさんは魔導士のようだ。なんか、とてつもない威圧感を放っている。

 

 この二人は、いろいろと変なところがある。ゴブリンの平均寿命は40~50といわれている。戦闘で死ぬケースものあるので、統計的な平均寿命ではなく、種族としての寿命だ、しかし、この二人は、どう見ても70ぐらいに見える。ゴブリンとしては、異例の長寿だ。

 と、いうことは・・・

 

「じゃあ、はじめますかな。」


 おじいさんが開始を宣言すると、隙のない構えでにじり寄ってくる。おばあさんは、補助系の魔法を一通りかけていた。

 ためしに、一撃を入れてみると、そのまま盾で受け流しながら、こちらの懐に飛び込んできて、そのまま一撃を返してくる。

 

 あぶね。思わず食らうところだった。なんとか避け切れたが、年齢を感じさせないどころか、一流の剣士だ。

 

 こっちも本気を出していく。軽くフェイントを入れながら、足元を狙う。が、その隙におばあさんのサンダーが飛んでくる。そこに、追い討ちをかけるように、剣が襲いかかってきた。もう、全力で避けまくる。とんでもない連携プレーだ。かなりまずい。

 剣か魔法のどちらかを食らった瞬間に、とどめを刺されるのは間違いない。ダミーシステム使っててよかった、とマジで思う。

 

 かなり拮抗した戦いをしばらく繰り広げたところで、終わりにした。決着がつくまでやる必要もない。

 

「ひょっとして、お二人はゴブリンリーダーですか。」


「かもしれませんな。はっはっはっ。」


 顔を見合わせて笑いあっているが、この二人、間違いなくゴブリンリーダーだろう。ひょっとすると、ゴブリンロードかもしれない。だとすると、普通のゴブリンの倍以上は生きるはずなので、その強さも含めて納得がいく。


 結論として、ダンジョンの魔素といい、メンバーといい、このダンジョンはかなり凄いことになっていた。初級~中級とかいっていたが、その気になれば、上級でも対応できる可能性がある。いまのところは、当初の予定通り、初級~中級をターゲットにしていいだろう。ある程度軌道にのったとろこで、対象レベルの変更も検討して貰ってもいいかもしれない。

 

 

 そして、ダンジョンも無事完成し、リニューアルオープンとなった。

 でも、さすがにチラシとかティッシュを配るわけにも行かないので、俺とレインの出番である。

 

 俺とレインは、ダンジョンの景品にする適当な属性武器をもって、近くの町に向かった。

 一応、チェンジリングをつけて、中級っぽい冒険者に見た目を変えておく。チェンジリングは見た目だけが変わる、ジョークアイテムだが、俺のような商売をしていると結構役に立つ。

 

 町に着くと、手ごろな酒場に入り、目立つようにテーブルに武器を置く。しばらくすると、その武器に目をつけた冒険者達が、ひそひそ話しをし始める。それを尻目に、俺達は飯を食い始める。

 

「すみません、その武器はどこで手にいれたのでしょうか。」


 冒険者の代表のような者が、話しかけてくる。よし、かかった。

 

「あ、これ? 西の方にあるダンジョンの3層あたりでドロップしたんだけど。属性付きだし、結構当たりだね、これは。」


「え、あのダンジョンでそんな物がドロップするんですか?」


「そうだけど。ただ、前より魔物は強くなってるような気がする。1層はともかく、2層からは前とは比べ物にならないかな。」


 冒険者は礼を言うと、信じられない、という顔で戻っていく。とりあえず、その1はこれで終わり。

 

 飯を食い終わると、武器屋へ向かう。結構繁盛しているようで、思ったより客がいた。

 

「この装備、買い取って欲しいんだけど。」


 武器屋の主人に、プレートメールの一部を渡す。

 

「ん?こんな良い物を手放すのかね?」


「いや、西の方のダンジョンでドロップしたんだけど、俺達は使わないから。もったいないけどね。」


「西のダンジョンだと? まさか。いや、逆に人が入らないことで、ダンジョンが変化することもあると聞いたことがある。」


 それは、人が入らないところをリニューアルしてるだけなんだけどな。さすがに言えないけど。

 

「よし、銀3枚で買い取ろう。」


「え?それ属性付だぜ?銀5枚でしょう。」


 属性付の言葉に、周りがざわつき始める。属性付はレア扱いされる。

 

「むむむ。分かった。銀5枚だ。」


 俺達は銀5枚を受け取って、武器屋を出る。これでその2も終わり。これで買取価格の銀5枚という前例も作ったので、結構金になるダンジョンというイメージが定着するのは間違いない。

 

 そのまま、冒険者ギルドへ向かった。

 

 冒険者ギルドでは、特になにもすることはない。案件を探すふりなどをしながら、周りの話に耳を傾ける。早速話題になりつつあるようだ。

 

「聞いたか、西のダンジョンで属性付の防具がドロップするらしいぞ。」


「そういえば、結構上質な武器もドロップするらしいな。」


「ただ、以前より、難易度が上がってるという噂だ。」


 おお、いい感じで広まってるな。じゃあ、戻って準備かな。

 やはり、宣伝は大事である。しかも、口コミは絶大だ。俺とレインは、冒険者のカッコをしており、一応、元冒険者なので、俺達が実際に物を持ち込むことで、十分説得力もある。たとえ、適当に持ち出したとしてもだ。

 あ、防具が売れた銀5枚は、当然カローラに渡した。黙ってると、横領だしな。信用は大事である。

 

 

「親方、姉御、お帰りなり。ぼちぼち来てるなりよ。」


 スラ吉がカローラ達とモニターをチェックしながら、状況を教えてくれる。思ったより、食いつきが早い。

 

「まあ、この感じだと、2層あたりのレベルが多そうなりね。2層の罠を50%ぐらい稼動させとくなりか。」


 スラ吉が、カローラ達に教えながら、罠の設定を変えていく。レインがそのまま統制にはいる。

 

「ゴブリンさん、1層と2層に来ますんで、準備よろしく。」


 レインが、ヘッドセットでゴブリン達に準備をしてもらうよう伝える。

 

「そうそう、見た感じは2層ぐらいまでのレベルです。ソロは1層でつぶしましょう。2層の中盤以降に進んだパーティは、やっつけちゃってください。でも、なるベル全滅はさせないで。何人かは町に戻ってもらわないといけないので。」


 ゴブリン達が配置についたのを確認する。オーク達は、念のため3層だけ準備してもらう。しばらくは3層は全滅させることにしてある。町の冒険者程度では、2層止まりが殆どのようだったし、3層は他から流れてくるまで待ちにしてある。あわてて3層を開放する必要はない。

 

 

 戦闘があちこちで始まったようである。俺達は魔素茶をいただきながら、モニターをチェックしていく。

 

 アラームが鳴った。1層の壁に穴を開けようとしているパーティがいた。剣士とシーフと魔法使いの3人組みだ。あれは、早急に対応する必要があるが、1層担当の皆さんは結構忙しそうである。レインはむっとした表情で3人組を見ている。

 

「すまん、スラ吉。あのパーティ片付けてきて。」


「了解、親方。ちょっと行って来るなりね。」


 設備を壊すような、マナーの悪い客は排除するに限る。別に教育して更生させる義理もない。

 まあ、スライムであるスラ吉だけで大丈夫なのか、という意見もあるかもしれないが、実際スライムは世間で認識されているほど弱くない。そもそもスライムは、物理攻撃に耐性をもっているので、そこいらの剣士などが攻撃しても、ダメージを受けない。その上、捕食して溶かしてしまうという、凶悪な攻撃を持っている。なので、そこいらのパーティは、攻撃している最中に、捕食されて全滅する。ただし、弱点もある。火の魔法を食らうと、あっさり蒸発してしまうぐらい弱かったりする。でも、スラ吉ぐらいになると、魔法にも耐性があるので、そこいらの魔法使いでは歯が立たない。一応、スラ吉は、スライムリーダーのなかでも、上位に位置するレベルだ。

 一般的に弱いといわれているスライムは、掃除に特化した掃除スライムである。あれは溶かすという点に特化した種族であるため、物理耐性もかなり下がっている。そのかわり、亜種には攻撃をうけると分離するタイプもいるので、一概に弱いともいえないのだが。

 

 そして、このパーティが壁を壊しているところは、いくつかの他のパーティに見られている。なので、マナーのよろしくない連中という認識はもたれているはずだ。かといってスラ吉に瞬殺されるところとか、後始末をしているところを他のパーティに見られるのは、よろしくない。スライムですら、物凄く強いダンジョンとかいう噂が立つと、初級クラスが寄り付かなくなる。なるべく見られないほうがいい。イメージも大事である。

 ついでに、マナーの悪い奴らは生きて戻れない、というイメージも出来ると完璧だ。

 

 剣士とシーフは壁を剣でつついていた。

 

「前にあけといた穴が塞がれてるな。移動に面倒だから、もう一回、開けとくか。」


「あれ、なんか前より硬くなってるような気がする。だめだこれ。」


「じゃあ、魔法でどっかんといってくれ。」


 しかし、後ろに居るはずの魔法使いから返事がない。

 

「ん?」

 

 二人が振り返ると、そこには魔法使いの代わりにスライムがいた。

 スライムはぷるぷるっと震えると、プッっと杖やローブなどを噴出した。

 

「こ、これは・・・」


 仲間の魔法使いの装備がスライムから噴出されるのを見て、頭に血が上る。

 

「このスライムごときが! やりやがったな!」


 剣士がスライムに切りかかる。が、その剣はボヨンと弾かれてしまう。

 

「うっ。」


 次の瞬間、スライムが剣士を飲み込んでしまった。

 

「あわわわわ」


 それを見たシーフが、こしを抜かして、四つんばいのまま逃げようとする。が、スラ吉がすかさずパライズをかけ、麻痺させてしまう。

 剣士を消化して、装備を噴出すと、スラ吉はシーフも捕食してしまう。

 あっという間の出来事であった。

 

 

「ただいまなり。しけた装備しかないなりね。」

 スラ吉が戦利品の装備を抱えて戻ってくる。

 装備は、4層の倉庫に突っ込んでおく。属性がついたら、景品にする予定だ。素材にばらして、みんな用の装備に作り直してもいい。

 

 こうして、暗くなるまで、10のパーティが来た。暗くなると、冒険者は町に帰るので、夜間シフトに変わってもらう。罠の確認や、掃除などもあわせて行う。

 初日の内訳は、ソロが3、パーティが7だった。さすがにダンジョンに低レベルのソロはなめているので、ソロで来た人達には全滅してもらった。あと5パーティは、1層と2層で全滅。残りの2パーティは、2層の途中で帰還していった。この2パーティは、3層まではこれそうな感じだったが、5層は無理なレベルだろう。

 

 夜間シフトへの交代が終わると、レインがカローラに日誌と帳簿のつけ方を説明していた。日誌や帳簿は結構重要だ。冒険者の数や、レベル、取られた品物の数と補充すべき数など、ダンジョン管理の基本である。

 ある程度、仕事が回るようになってきたら、事務の担当を雇ってもいいかもしれない。

 

 

 そして2日目は、レインとカローラが統制に入り、レインがカローラに教えていく。罠のほうは、スラ吉が老夫婦に教えている。

 

 昨日の2パーティは、今日もきていた。

 

「みなさん、昨日のパーティがまた来ています。3層までいかせて、適当に死なない程度に消耗させてください。町に帰らせて、宣伝してもらいますので。」


 レインが指示を出していく。カローラは、一生懸命メモをとっている。今の戦力だと、殆ど全滅させることも可能だが、今後のことを考えて、昨日も来ていたうちの1チームにはお土産を持たせて生還させる。そして、町で自慢話という名の宣伝をしてもらうのだ。

 

 結局、昨日よりは少な目の5パーティだっだ。初日に戻ったのが2パーティなので、流石に警戒しているのだろう。これは想定通りだ。まあ、今日は新規のうちの2チームだけ全滅させておいた。



 3日目から、徐々に増えてくる。他の町の冒険者達も来ているようだ。俺はダンジョンをレインたちに任せて、一人で町の様子を見に行く。一応、チェンジリングで、どこにでもいそうな冒険者に見た目は変えてある。

 

 町はこの前より人が増えていた。情報収集のため、酒場に向かう。

 

「西のダンジョンだが、3層が結構難しいらしいな。俺達なら、4層も問題ないけどな。」


「いや、4層はまだ誰も入ってないらしいから、どういう魔物がいるのか、どの程度つよいのかわからんよ。」


「おい、そのダンジョンの情報を教えてくれないか。」


 どうやら、他の町からも、集まり始めているようだ。いい傾向だ。

 

 冒険者ギルドでも、同じような感じだった。ただ、ダンジョンについての依頼はない。まあ、どいう魔物がいるのか、何をドロップするのかなど、まだ掴みきれてないからな。動きが悪いようだったら、なんか依頼だそうかと思っていたが、そこまでする必要はなさそうだった。

 

 ついでに、道具屋、武器屋、宿屋なども状況をチェックしていく。いきなり人が増えたので、どこも対応しきれていないようだ。一応クラウドの爺さんに出店も考えてもらったほうがいいかもしれない。宿屋がいっぱいだと、野宿をする冒険者が増えることで、盗賊などを呼び寄せ治安が悪くなったり、薬草などが不足することで、ダンジョンの出足が落ちたりすると面倒だ。あとでレインに相談しておくことにする。

 

 

 一週間たったところで、一日に大体10パーティぐらいが来るようになった。また5層までいけたところは無い。殆どが2~3層度まりだった。おそらく5層まではあと2~3ヶ月はかかるかもしれない。で、ボスが半年から1年後ってところだろうか。

 あと、ここのキャパは20~30と見積もってるので、コンスタントに20を超えてきたら、拡張とかも考えてもいいかも知れない。当分先の話だろうけど。

 カローラ達も、なれてきたようで、自分達だけで出来るようになってきている。以前と違い、やる気があるので大丈夫だろう。

 

 町のほうだが、クラウドの爺さんが、状況を見ながら対応してくれることになったので、そっちは気にしなくても大丈夫そうだ。それに魔素茶もあるので、クラウド的には、このダンジョンは、最重要事項になったらしいし。

 

 

 このダンジョンを訪れてから、3週間になろうとしていた。もう、カローラ達だけでやっていける状況だった。

 

「じゃあ、何かありましたら、連絡ください。」


「ほんと、ロイドさん達には、いろいろお世話になりました。なんとお礼を言ってよいのやら。」


「いえいえ、これが私どもの仕事でございますから。」


 レインの営業スマイルが、とても素敵な感じだ。

 

 向こうから、ゴブリンの老夫婦が袋をもって走ってきた。

 

「ああ、間に合いましたかな。つまらぬものですが。」


 渡された袋には、魔素茶が大量に入っていた。つまらぬって、この袋だけで豪邸建つんだが・・・ でも、当然ありがた頂く。

 今日も、順調に冒険者達がきていた。町での評判もいいので、うまくやっていけるだろう。


 そして俺達は、ダンジョンを後にした。

 

 

「あ、いけね。ダンジョンマガジンに、取材の依頼するのを忘れてた。」


「とっくに終わってますよ。再来月ぐらいに、注目のダンジョンコーナーに掲載してくれるそうです。」


「さすがは姉御。そつが無いなりね。親方も、姉御を見習うなりね。むしろ、魔素茶より姉御のつめの垢を煎じてのむなり。」


 とりあえず、魔力をこめた拳骨をスラ吉に食らわせておいた。これでちょっとは黙るだろう。




次の更新は、しばらく先になるかと思います。また、設定をあまり詰めていないため、今後設定ってなに?ということになる可能性が非常に高いです。


別に「勇者サービス」という話も書いています。よろしければ、こちらもよろしくお願いします。

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