もう、離さない。
行かないで。そう言っても君はいつも僕をおいて行ってしまうんだ。だから、今度こそ…もう一度会えたなら…。違う、君を見つけて絶対に離してなんかやらない。
覚悟、しておいて。
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「…っは、ナニコレぇ!ちょっと、あんたなにしてんの?」
「ん?乙女ゲーム?」
「いやいや、ヒロイン死んでるじゃんか!」
「いやいや、これがロクルートのハッピーエンドだし」
「どこが!」
「いやん、生まれ変わったらハッピー?」
なにそれ、よく分かんない。乙女ゲームもよく分かんないのに。私の双子の姉は、大好物だけどどうも私は受け付けない。というより、なんか…こう。そう、私恋愛に興味がないのよ
「陽には、分かんないかなーこの良さが!」
すすめられるが、全然興味が湧いてこない。そんな私にぽつりと零す姉、仄。今の現状も彼女のせいだが?
見たら、したくなるかも!と言われ無理やり見せられた挙げ句これだからこっちのがため息つきたいですよ、仄さん?
見た感じこの乙女ゲームは、相手によってヒロインが違うらしい。仄は、逆ハーないから、ちょっとつまんないけどいいのよ、コレが!セリフとかきゅんきゅんくるわよ!
と息巻いてたが、私には全然?
「うぅ、一番のお気に入りロクルートを!」
「まぁ、いいじゃない。現実はこんな人たちいないんだから、現実みたら?仄さん?」
「陽のばかぁ!現実主義者め!夢くらい見てもいいじゃん?!」
「たまに、はね?現実みてない、仄には言われたくないよ。生きてるのは、二次元ですかぁ?」
「ふんっ!二次元甘く見てちゃぁなにかあるからね!」
***
よくわかんない、この状況も。すべてなにもかも。
仄、バカにしてごめん。二次元じゃなくても、二次元ぽいのもあるのね。
「もう、離さない。」
そうとう綺麗な顔の作りをしてらっしゃるこの殿方は一体誰?なんか、潰されそうな勢いで抱きしめられてます。ハイ。
「どこにも行かないで、僕の側にいてよ。ねぇ、行かないで。嫌がっても、絶対に離してなんかやんない。」
ナニコレ、デジャヴ。
「忘れちゃった?リリファナ、リリー……リリー」
………なんで、知ってるの?私の…夢での名前を。
「僕だよ、君を愛してる君しか愛せない、ロクロム・クロッカー」
「なんで、………」
あぁ、あぁ、どうしよう。思い出した。思い出しちゃった?
「勝手に死んじゃヤだよ。今度こそは、絶対に離してなんかやんない。たとえ、君が主をとっても………」
主、私の大切な姫様。思い出した、すべてすべて。私は、姫様を大事な姫様を守るために、姫様を庇った。その後からの記憶は途切れてる…死んじゃったんだ。まるで、あのゲームのように。
「言ったよね、覚悟しておいてって…」
「────!!」
デジャヴすぎる、ゲームのセリフ。たしかに、ゲームでロクロム・クロッカーって名前で。
「僕と、僕の友人の恋物語をゲームにしたら売れたんだ。これで、君が気づいてくれるかもしれないと思ってたのに、君は気づいてくれなくて。思い出しても、僕から離れるの?」
「し、らない。私、しらな…い。私は、陽。……」
「そっか、陽……愛してる、絶対に離さない」
やだやだ、あの時から彼はしつこいくらいに私を想う。私の人生終わった……?
「陽のばかぁ!リア充め!」
怒られた?!
こっそり、『ロク似って、どういうこと?本当は、結構気になってたんじゃないの、乙女ゲーム!』
いいや、違うよ。過去からの腐れ縁で、そのゲームはそいつが作ったからね。
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