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2話 階段は強敵

「」はこの世界の言葉

『』は日本語という扱いになってます

5ヶ月ほどの月日が流れた。この間俺ははいはいの練習と言語の習得に力を注いでいたため、言葉はともかくはいはいぐらいはできるようになっていた。普通の赤ちゃんは8ヶ月ではいはいを始めるというが、積極的に動こうとしたおかげで発達が早いんだろう。


言葉はまだ単語くらいしかわからないが、日本語だけでも話せるようにと発生練習を重ねた成果が顕著に現れている。どうにか聞き取れないことはない、という程度には発音できる。


そしてついにはいはいを習得した俺は、家の中を見て回った。いつもメイドのユリに見つかって部屋に連れ戻されるので、あまり長い間は見て回れない。……今も、リベンジどばかりに家の中をはいはいで這いずり回って……いや、動き回っている。


なんだかんだで、かなりのことがわかった。

俺が最初に予想していたことは、だいたいあっているといえる。外の世界を歩き回ったことはないので正確にはわからないが、窓から景色を見る限りここはド田舎だ。

東京とは比べものにならず、高層ビルがないとかそんなレベルではなく、まずコンクリートの建物すらない。二階建てのためものがほとんどで、三階以上の建物は見当たらない。


ホント、どこまでど田舎なんだよ……。


あと、この家はかなり裕福だった。まだ1階しか見て回ってないのだが、部屋が、12個もあった。ど田舎だから土地が安いにしても、広すぎるだろう。


『うー……よいしょぉー』


階段は辛いな…。何度か挑戦しているのだが、今だに登れたことはない。今日こそは2階を探検するんだ。


そんな意気込みで1段1段しっかり確かめながら上がっていく。あと3段、目的地を目の前にして、つい気が緩んでしまっていた。

視界が反転する。


『あっ……!』


慌てた時にはもう、体が宙に浮いていた。またやっちまった、これで何度目だ。

そんなことを思いながら、落ちた時の痛みにを想像してた思わず目を閉じる。


ボフッ…


想像していたのとは違う、柔らかい感触が体を包んだ。なんだ?


「リオ様、ー・・無理・・ーーしないでーー」

「ゆりぃ!」


どうやら、メイドのユリが俺を受け止めてくれたみたいだ。両腕で胸に抱えられている。

あ、まじ柔らけぇ……。何がとは言わんが。


諭すような表情で何か言っている。あまりわからないが、どうやら「無理するな」と言っているらしい。すいません、どうしても2階に行きたかっただけなんです。


目で謝る。伝わったかは怪しいところだが、言葉を話すことができないので、直接謝ることはできない。


「ーー・・部屋ーーー戻り・・ーーー」


そう言って俺を抱えたまま歩き出す。断片的に聞こえた単語といまの行動から推察するに、俺を部屋に戻す気がっ!


「あっ!」


させるか、とばかりに暴れて腕から飛び降りる。ユリが驚いた声をあげるが気にしない。今日こそは2階にいくんだ、邪魔はさせん!


床に落ち、思わず目に涙がにじむが、我慢する。チャンスは今しかない、上がるぞ!

再び階段を登ろうと1段目に手をかけた途端、視界が急上昇する。

チッ、捕まったか。まあ、逃げ切れるとは思ってなかったが、やっぱり悔しいものは悔しい。


そんなことを思っていると、ユリに体のあちこちをペタペタと触られる。そして何かを確認したようだ。


「無茶・・ーー駄目・・・・ー・」


以外と、単語と表情やしぐさだけでなんて言いたいか分かるものだな。暴れて落ちたことを怒られたらしい。いつもより少しだけ声が厳しかった。


どうやら心配してくれていたらしい。少し、悪いことをしたかな……。

未練がましく階段をじっと見つめる。しょうがない、今回も諦めるか。


帰る、という意思表示のためにユリにひしっと抱きつく。……別にやましい気持ちはないぞ?


が、いつまでたってもユリは部屋に戻ろうとしない。伝わってなかったのか?


上を見るとユリとばっちり目があった。じーっと俺の顔を見つめてくる。何かついてるのかな?


「リオ様は・・ーーー上にーー・ー・・?」


なんと言ったのだろうか? 流石にこの単語だけでは内容を推察することはできないな。


俺が首を傾げていると、ユリがスッと階段の上を指差す。……まさか上に連れて行ってくれるのか?


その疑問を肯定するように、ユリは階段を上がり始めた。あれほど俺を苦しめた階段をいとも簡単に上がり、そっと俺を床に下ろす。

あぁ、2階に来れたのか。


あいがしょう(ありがとう)ゆりぃー!』


ゆりの足にひしと抱きつく。つい日本語でお礼を言ってしまった。

彼女は最初何が起こったのがわからないといった様子でオロオロとしていたが、やがて優しく微笑むと俺の頭を撫でてくれた。


ああ、気持ちいいなぁ……。撫でられて気持ち良さそうにしている猫の気持ちがよくわかる。


「・・・----待ってるーー」


多分ここで待ってるって事だろうな。階段を登れなかった俺が階段で転んで怪我をしないように降りる時も連れて行ってもらえるんだろう。


さて、もう待ちきれない。2階には一体何があるんだろう? 期待を胸に抱き、俺は2階の探索を始めた。



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