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―入学式前日―4

他の話に比べて、長くなりすぎました。

相も変わらず文章グダグダなので読みにくいかと思います。頑張って下さい←(二度目)


「「ごちそうさまでした」」


「はい。お粗末様。遙、お風呂は沸かしてあるから、入ったら厨房のお皿洗い、お願いできるかしら?」


厨房、というのも、私の家は喫茶店を経営している。

若干女の子向けではあるけど、男の人がいても違和感のない、オシャレな内装になっていて、休日のお昼なんかは中高生に人気で、意外にも夕方も人が多かったりする。

ちなみに、閉店時間は7時である。


「了解ー。じゃあ、静が先に入れば?私はこっち手伝ってから入るから」


「分かった。上がったら手伝いに行く」


「多分そのころにはもう終わってるよ」


私がそう言うと静は不満そうな顔をして二階に続く階段をトボトボと上っていった。


ふむ。こうしてみると、180㎝をこえる身長をもつ静も可愛く見えるな。


「ふふっ…。静君ったら、すっかり家に馴染んじゃって…」


母の言葉に私は勢い良く頷いた。






静と私は一緒に暮らしているようなものだ。

それくらい密着した生活を送っている。


静は小さい頃にお母さんが愛人を連れて出ていって以来、静のお父さんが一人で静のことを育てていたらしい。


でも、男手一つで子供を育てるのも限界があるらしい。

仕事におわれて、家事すら出来ず、息子にもかまってやれなかった静のお父さん。


二人の関係はよそよそしいものから次第に悪化していった。


そんな二人の関係に救いの手を差し伸べたのが私の父であった。


静のお父さんと私の父は、中学からの親友だったらしく、偶然その事を知った父は、静の身の回りの世話をすると提案したらしい。人の良い母も、それに賛成した。


それを聞いた静のお父さんは、タダというわけにはいかないと、ある条件をつけて父の提案を受け入れた。


その条件というのは、

1つ目が静の生活費は全て静のお父さんが払うということ。


2つ目が、年の近い私が静と一緒にいて、不便を感じるようになったら、静を追い出していいとのこと。


勿論。2つ目は絶対にあり得ないから、今静はここにいるのだけど。





「お母さーん。洗い物終わったよー?」


「ありがとう。それじゃ、次はテーブル拭いてきてくれる?」


「あいさー」


私は布巾を持ってお客さんが使うテーブルを黙々と拭き続けた。


そしてしばらく経って思い出したように、ああっ、と短く声をあげた母。


「どうしたんだい。お母さん?」

何事かと母にたずねてみる。


すると母、目を爛々に輝かせて厨房から顔を覗かせてきたではないか。


何だろう、とてつもなく嫌な予感が…。


「ねえ、さっきのあれ、なんだったの?」


「さっきのって?」


「あれよ、あれ。静君にソファーの上に押し倒され――…」


「ああぁあ!!いい言わなくていいから!」


やっぱり、的中した。




さっきのあれ――、つまり傍から見ればソファーに押し倒された吉崎遙事件のことなんだけど。


私に妙な疑惑がかかった後、それがきっかけで、終わらない、エンドレス口論を続けていた私達に終止符を打ってくれたのが夕御飯が出来たことを伝えにきた母であった。


しかしその結果母に、静に押し倒されたという誤解を植え付けたままになってしまったのだ。


結果的には静のヤンデレ化を防げた訳だし良かったんだけど…。

……いや、良かったのか?



とりあえず、どう答えようか?

母の事だ。きっと何を言っても信じてくれまい。


無難に、

「なんでもないよ」

と返してみる。


だって本当のことだもの。


「何でもないわけないでしょー?」


ほら信じない。母というものは娘の色恋に関しては都合の良いように捉えてしまうものなのだ。

ああ恐ろしい。


「本当に何でもないの!」


「はーいはい。あ、静君。上がったの」



え、静?いつの間に…。


静は、スウェト姿で首にタオルをかけて二階から私のことを見下ろしていた。

うーん…。いつもながら風呂上がりの色気がハンパないね。


「お先にいただきました。遙。次お前が入るだろ?上がったら一緒に『ドラムの超人』しないか?」


「え、新作のやつ?」


「うん」


「よし、すぐ入ってすぐ上がる!ということだお母さん!私は風呂に入って『ドラムの超人』をするという使命が出来たので、これにてさらば。布巾はここに置いとくね?」


泥棒も顔負けの逃げ足でタッタカと逃げる。


「あ、遙!逃げたわね!覚えときなさい。今度時間のある時にじっくり聞かせてもらうからね!」


両手を振り上げながら叫ぶ母。

覚えとけ、とは。

どこぞの悪役の捨て台詞だ。


それにしても、あの羞恥プレイの掘り返しって…。

絶対に嫌だな。うん。

出来れば母には思いっきり鈍器か何かに頭をぶつけて記憶が無くなってしまう事を願おう。


なーむー。





▼▼▼




時刻は9時をまわった。

私たちは二階のリビングにあるテレビで、『ドラムの超人5』をやっている。


「静。音色変えられるって。トロンボーンとか木魚とか、牛の鳴き声なんかもあるよ?」


「…なんというか、楽器もマイナーだな。最早ドラムである意味がないと思う」


あ、それ同感。


さっきから、パリン!ドシャ!とリズムゲームらしからぬ音が聞こえてくるが、仕方ない。

これがこのゲームの魅力である。


ちなみに私が選んだ音色はトマトが落ちて潰れる音である。

え、これ音色?と思う人もいると思うが、仕方がない。そういうゲームなのだ。

そう、仕方がなーい。


「……明日だな?」


不意に、静が何の感情もこもっていない声で呟いた。

静が言った『明日』の意味することなど、一つに決まっている。


「そうだね。明日は入学式だ」


「大丈夫か?」


「ああ、挨拶のこと?もうばっちり。丸暗記してるから、まず失敗することなんてないよ」

さっきまでその存在を忘れていたんだけど。


「ん。そっか」


「………」


「………」


私たちの間にしばしの沈黙が流れる。


パリン!

静の選んだガラスの割れる音がやたらリアルに部屋に響く。


ドシャ!

続いて私のトマトの音。


さっきから思っていたけど、これはひどい。

シュールすぎる。




先にこの沈黙(本当はトマトとガラスのシュールすぎる組み合わせ)に耐えきれず、口を開いたのは私だった。


「ねえ、静。明日、同じクラスになれるといいね。私、静とクラス離れたくないな。中学は一度も一緒のクラスになることなかったしね」


話題がなかった、というのもあるが、これは紛れもない本心だった。

まあ、前世のゲーム知識で静と主人公が同じクラスになることだけは知っているんだけど。


静は目を見開いた後、顔を少し赤く染めてはにかんだ。


え、なにその反応。恋する乙女的な?

いやいや冗談だよ。

私は分かるよ静。

コミュ症だからだよね。


「俺も、お前と一緒がいいよ」



ポンッ、と。

コントローラーを握っている手とは反対の手で、撫でられた。


うわぁ…恥ずかしいなぁ。



私の恥ずかしさが伝わったのか、私の頭を一通りぐりぐりとなで回した静は、ゲーム機の電源を消して階段の方に歩いていった。


「俺もう寝るから帰る。明日、頑張れよ」


「それ明日にもう一回言ってよね。静のためだったら、頑張らないこともないから」


ツンデレ風に言ってみると、また静の顔が赤くなった。


その顔を見て私が笑うと、顔を隠すようにして、階段を下りていってしまった。


途中、踏み外しそうになりながら。




今回も突っ走ってますよ。静君。

はやくも、脱クールキャラしてません?

これ完全にヘタレだよね。


【豆知識】


『ドラムの超人』

今春発売のゲーム。

このゲームに出てくるキャラクターのどど丸くんは「~でやんす。」が口癖。

様々な音色があるのが特徴―でやんす。

どれも音色がマイナー過ぎて、製作者は頭かかえてそう。

「なぜ、タイトルをドラムにしてしまったのか…!」

謎である。

何かのパクりとは言わせない。


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