―入学式前日―2 『神崎静と私』について
今回は説明文ばっかです。頑張って下さい!(え、何に?)
そもそも、私がこの世界が殺戮ヤンデレ系乙女ゲームの世界であると気づいたのはほんの数日前である。
前々から既視感、デジャヴというものに悩まされていた私は、すんなりとその事実を受け入れることができた。
前世の記憶でここが乙女ゲームの世界だと知った数日前の私は、まず喜んだ。
理由は至極簡単で、親友で悪友の幼馴染み、神崎 静に可愛くて優しい彼女(主人公)ができるかもしれないと考えたからだった。
静はイケメンだ。
そして当然の如く攻略対象である。
青みがかった黒髪に切れ長の青い瞳で、ほどよく筋肉が付いた均衡のとれた身体は、見る者すべてを魅了する。
にもかかわらず、淡白で浮いた噂を1つも聞かない静に、私は実は女になんて興味ないのでは?人このままじゃ子孫が残せませんよ?というオカンのような心配をしてきた。
でも私では静を幸せには、してやれない。
だから静に彼女ができる、そのことが純粋に嬉しかったのである。
しかし次の瞬間には恐怖と不安に押し潰されそうになったのを覚えている。
その時の私の記憶を埋め尽くしたのは酷い死体の数々だった。その中に家族のように大切な幼馴染みの静の姿まであったのだ。
斬殺。人の身体がただの肉片になるまで、ずっと切り続ける。
撲殺。元が分からなくなるまで顔を徹底的に。
絞殺。苦しくなるまで首を絞め続け、死にそうになったら緩める。それの繰り返し。
死ぬまで相手をいたぶり続ける拷問。
やたらとリアルな描写のスチルと、細かいところまで徹底的に練った(らしい)文章は当初の私を震え上がらせるのには充分だった。
その時はただただコワイーとかきもいーとか、他人事に思ってた。
しかし今は現実だ。
もしこれが現実にあったら、私はどうする?
そしてさらに不安を煽る材料となったのが、高校だ。
もうこの際そんな残酷で殺戮な惨劇が起こる学校に入学することは仕方がないと諦めよう。
入学式3日前だ。どうすることも出来まい。
問題は新入生代表の挨拶だ。
今からキャンセルすることは不可能だろうか?
いや、無理なんだけど、考えるだけ無駄なんだけど。
仮にもしそれが出来たとしても、入学試験2位のやつに話が持っていかれるだけだ。
そしてその2位というのが、静である。
それが何を意味しているかというと、
静が発表→主人公が気に入る→惨劇スタート!
こうなる。
先ほど、静と主人公がくっ付くことを喜ぶような発言を仄めかしていたが、どうだろうか。
私と静の命と、たかが一瞬の幸せを天秤にかけるとどちらが重いか、命に決まっているだろう!
つまり私には後がない。
だから目立たない立ち振舞いを学び、無難に発表する方法を考えていたのが昨日。
そして主人公について学ぶため乙女ゲームをしていたら、静に見つかり、押し倒されたような格好になっている、今に至る。
遙は静の事が大好きみたいです。勿論家族的な意味ですけど。
ちなみに、遙が静を幸せにしてやれないのには理由があります。
説明ばっかで長引きましたけど、次からはサクサク進めていこうと思います。