― オリエンテーション宿泊―1
4月。
4月の学校行事といえば、入学式といつも入学式の影に隠れて忘れられがちだが、オリエンテーション宿泊というものが一年生の間だけで行われる。
いわゆる、親睦会というやつだ。
忘れていた人も多いだろう?
多いに決まっている!私なんてオリエンテーション宿泊前日になるまで忘れていたのだからな!ふはははは!
4月なんて入学式終われば楽勝だね、とかなんとか考えていた数日前の私の記憶を抹消してしまいたい。
明日は宿泊だな、と言って私の部屋を訪れた静に忘れてた事を話すと、冷たい眼差しを向けられた。
やめてー。そんな目で見ないでー。
幸い、準備物は必要最低限の物があったので、深夜にコンビニにまで買いに行くなどの心配は無かった。
後はあれだ。一泊二日を乗り切るだけの心の準備だけである。
あぁ…神様!どうか、主人公が引き起こす何らかのイベントに巻き込まれませんように!できれば雨でも降って中止になれ!
と、祈っていた私はバカだった。
最近の私は厄介事にしか巻き込まれないのだ。
この際数少ない私のお小遣いという名の犠牲を払ってでも、神社にお参りしとくんだった……。
失敗。
▼▼▼
えー、宿泊初日の天気は憎々しいほどの晴天だった。
みんな元気に目的地であるキャンプ場で走り回っている。
打ちひしがれる私を他所に、背後に立っていた女子二人の「今日って全国的に晴れなんだって、天気予報で言ってたー」「えー本当?そう言えば私、今まで行事の時に雨なんか降ったことないの。もしかして、私晴れ女?キャッ!」なんて会話が聞こえてくる。
知ってたし。今日が日本晴れなことくらい。
晴れ女とか、マジ滅べ。
「ほら、班分けの発表だって。立て、遙」
「班分けっ?こうしちゃいられんな!先に行ってますぞ、静殿!」
我先にと、人が集まる中央広場へと駆けて行く私。
「………あいつって、頭良いのに、たまにマジで馬鹿だよな」
だから、後ろの方で静が若干失礼なことを言っていたのに気づかなかった。
……って、事にしとこう…。
班分けはクラス関係なくランダムに……なんて事はなく、勿論教師の目が届きやすいように、クラスごとに五人一組で行われる。
班を分けて、具体的に何をするかと言うと、料理作ったり、寝る場所決めたり、二日目の学習会の発表をしたりするらしい。
ちなみに、私は朝、椎葉先生に「班分け、静と一緒じゃないと、死んじゃうー」的な事を吹き込んでおいた。
私の椎葉先生に対する信頼度は0に近いところにあるので、ここで私の願いを叶えると、信頼は大いに回復することだろう。
実際、死にはしないが、それっぽいことになるのは確実だ。主に静意外の班員が、だけど。
昔々、こんなことがありました。
小学四年生だった静君と遙ちゃんの不思議な体験です。
その日は、家庭科の授業で、カレーライスを作ることになっていました。
手際よく、食材の下ごしらえに取り掛かった遙ちゃん。
じゃがいもの皮をスイスイ剥いていきます。
しかし、人参の皮剥きを任せた静君の所から物音一つ聞こえて来ないことに気が付いた遙ちゃん。
サボりかと思って静君の所に近付くと、そこには血の海が広がっていたのでした――――。
なんてことになりかねないのだ。
本当に不思議なことに、静は一度すればなんでも出来てしまうのに、料理だけは、何度やらせても一向に上達しない。
包丁は床に突き刺さるし、指は全部切る。食材は木っ端微塵になってしまう。
恐ろしい…。
確か今回の班活動も、昼食作りがあったはずだ。
私はそんな事態を避けるため、静と同じ班にならなければいけない!と先生に力説したら、青い顔で頷いてくれた。
そして、出来た班分けがこちら。
【1年2組 1班】
有栖川優花
吉崎遙
梅下智樹
神崎静
陵ヶ峰紅毅(1年3組)
な、なんでこうなった。
ある意味運が強すぎでしょ!私!
いやいやいや、そもそも、なんで他のクラスの攻略対象が私の班に混ざってんのよ?
あ、ちなみに梅下くんはモブキャラね。




