雪の日の出来事
寒い寒い雪の日の帰り道。
息を吐く度、白い息が空へと昇る。
天から舞い降りてくる雪は地面に辿りつくと、そっと消えていく。
まだ、降り積もる程の量ではないが、天気予報で夕方から明日の朝まで雪が降ると言っていたから、明日の朝、登校する時はまた、大変そうだ。
コートを羽織り、マフラーを巻いて、手袋をしていると言うのに寒くて寒くてたまらないと言うのに、雪まで降り積もるだなんて最悪だなぁとか、ぼーっと考えながら歩いていたら、何処からか声が聞こえた。
「もう、あんたなんか大っきらい!!」
「おいっ! ちょっと何処行くんだよ!?」
男女が叫ぶ声が公園の方から聞こえる。
嗚呼、これはカップルの喧嘩か。
女の人が泣きながら、公園を出ていき、溢れ出る涙を冷たそうな赤くなった手で拭きながら、去っていく。
男の人の方は、情けない顔をして、その場にうずくまっている。
そのうち、その男の人が此方に視線を移し、思いっきり目線が合う。
困ったなぁとか思っていると、向こうから視線を外してくる。
見るつもりはなかったとはいえ、罪悪感と言う名の雪が心の中に降り積もる。
可哀想だなぁとは思ったけど、面倒な事には巻き込まれたくないし、此処は気付かなかったフリをして帰ろうと、また、歩みを進めようと一歩踏み出す。
と、先程喧嘩して去って言った筈の彼女と思われる女の人がコンビニ袋を提げて此方に向かってくる。
いや、正確には彼のいる公園に。
そのまま公園の彼の所まで行き、声を掛けると、2人が笑いあった。
ああ、仲直りしたんだなぁ。
そう思うと、思わず口許が緩む。
あんな喧嘩しても仲直りして幸せそうなカップルを見る日には思う、忘れないあの日々。
ずっと、行き場を無くしたこの気持ちが未だに心の中で、ふわふわと彷徨う。
あの時、こうすればよかったのかなって思う事はたくさんあって、もしもの世界を想像する度に虚しさでいっぱいになる。
嗚呼、この行き場のない気持ちをどうすればいいのだろうか――。
毎日のように問う、この問題。
毎日のように考えているのに、この問題が解けそうな気がしなくて、途方に暮れる。
あんなに君を傷つけたと言うのに、まだ、変わらないこの想い。
どうすれば消えるのだろう?
いいや、ずっと消えない。
死ぬまで消えなくて、死んで黄泉の世界に行ったとしても消えないと思う。
でも、そんな想いをずっと溜め込んで生きていくのは辛すぎるから。
少しだけ、少しだけ声に出させて下さい。
寒い寒い雪の日、行き場をなくした想いを冷たく白い息に込めて、ただ一言呟いた。
「好き――」
偶には日常の些細な出来事を書いてみたいと思って浮かんだ短編小説。
普段、頭の中ファンタジーの私にはいいお薬になりました(笑
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです
それでは、またどこかで会いましょう
HANASAKI RIYU