美しい花
後日
私は花屋の前にいる。
もう一度この場所に来たのには、訳がある…
花屋 勿忘草の看板に書いてある文字を確認すると、私は店内に向かって声をかけた
「すみませーん・・・」
奥からはきっと、前に会ったお兄さんが笑顔で出てきてくれるだろう。と思っていた
「はーい、少しお待ち下さい。」
あれ?こんな声だっけ、それに…ずいぶんと綺麗な声の…女の人?
「お待たせしました。いらっしゃいませ、何をお探しですか?」
綺麗な女の人が、私の前に現れて、私はびっくりした。
「あっ、えっと、表の看板を見て来たんですけど…」
「あっ、バイト募集のやつ、見てくれたのね、ありがとう!なかなか人が来ないから、ダメかと思ってたの、良かったー。さ、中に入って下さい。簡単ですが、面接させてもらいます。」
「あっ、はい!」
私は中に通された。
綺麗な女の人の後姿に見とれながら、色々とチェックさせてもらった…
正直、勝てない。
私は黙って見つめているしか出来ないのだ。
こういう人に憧れるけど…
とてもじゃないけど、背丈からして…全然違う。
お姉さんは、テーブルセットの前で止まると、私の方を向き直った
「ここに座って?今、お茶入れるから」
そう言って、お姉さんは、三段チェストの方へ向かい、私は言われたとおりに席へとついた。
なにか、香りの高い物が私の目の前に置かれた
「花屋、勿忘草特性ハーブティどうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
私がお礼だけ言い、ハーブティに口を付けずにいると、お姉さんは自分のカップを手に取った
「んー、いい香り。私、これ好きなのよねー」
「あの」
「んー?あれ、もしかして、ハーブティー苦手?」
「あっ、いや、大丈夫です。」
私は慌ててカップを持つ
ハーブティーの香りが鼻をくすぐる…
とってもいい香りが、私の顔を包み込んだ。
少し冷ましてから口をつけると、ハーブティーが私の中に広がる。
「美味しいですね」
「でしょ?それに、落ち着くのよね、これ。」
「分かります」
「私ね、仕事の休憩中に、いつもこれを飲むの。とっても落ち着くし、仕事も上手く行く気がするのよね」
「良いですね。」
私が返事すると、お姉さんはにっこりと微笑んだ。
「さ、面接始めましょうか」
そうですね。
はい、お願いします。
私はそのために来たんだ。
「では、始めます。今回面接官を勤める、浅井です。」
「お願いします」
「名前は?」
「高野 彩です。」
「年齢は?」
「二十歳です。」
「花屋での就業経験は?」
「今回が初めてです。」
「分かりました、では最後に合否の連絡先ですが、自宅か携帯のどちらにしますか?」
「あっ、ケータイで…」
「分かりました、携帯電話に連絡しますね?」
「はい」
私はアッサリとした面接だと思ったが、浅井さんは特に何も気にしてないようだった。
私は、後は、連絡来る日を待つだけだ…
それにしても、ここのゆるーい感じ、なんか気になるな。
それに、あの、浅井さんという人。
前に会ったお兄さんの、彼女?奥さん?
指輪してたし…お兄さんの奥さんかな。
そういえば、今日お兄さんはどうしたんだろう。
配達か…何かかな。
…ちょっと、お兄さんに会えるの期待してたんだけど、でも、結婚してたのかー。
以外だな。
私は、自分で自分の気持ちに気付いた
…今、私、ショックだなって思った?
会えるの期待?
そりゃ、いい人だったからね。
初めて会った人だけど、なんかこう、初めてじゃない気がするけど。
私、一目惚れしてた?