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彩 《いろどり》  作者: たまの座布団y
若葉の君
3/36

花屋「勿忘草」

私が高校を卒業して、三年と言う月日が過ぎていた。


彼氏と別れ、泣いていた私はもう、過去の自分


今は新しい世界で、新しい一歩を踏み出した


私は二十歳の誕生日を向かえ、今日は街に一人で買い物…



友達がいない訳じゃない、ただ、友達は忙しくてなかなか会えないだけ。

と思いたいけど、正直、卒業前は、別々の道になっても友達でいようね?なんて言ってたけど、実際はホントにバラバラの生活を送ると、予定を合わせる事が出来ず、そのまま忙しくて連絡も出来ないまま、途絶えた。


私は高校の時の友達…というより、職場で出会った人と仲良くしている。

大人になるって寂しい事だらけだな…って考えていた。



二十歳になるまで、職場を何回か変え、今は恥ずかしいけど、私は無職。


友達…というより、会社で仲良かった、同じ年の子と、会社を辞めた今でも続いてるけど、その友達は平日は休みにはならない。


そんなわけで、私は一人街を歩く寂しい人…




私は、一人、懐かしい道を歩いていた

ここは私の通っていた高校へ続く通学路だ。

だからなのか、余計な事を思い出してしまった。


この道、よく大和やまとと一緒に歩いたっけ、朝、何気ない事を話して、帰りは学校であった事を話して…

学校の制服を着たまま、街を歩いて制服デート。

すべてがキラキラ輝いていた毎日

たまにケンカもしたけど、すぐに謝ってきて…

全く…大和のバカ。


ほんと、バカな男…


大和…





「こんにちは、お姉さん、なんか悲しい事でもあった?」

「えっ、あっ、あの!」

私は思い出に浸りすぎて、周りが見えていなかった。

気が付けば、通学路にある花屋の前まで来ていて、花屋で働くお兄さんに話しかけられ、我に返った。


きっと、お兄さんからしたら、間抜けそうな顔してたんだろうな…


「お姉さん、その涙を止める方法知ってる?」

「あっ、これは別に…」

お兄さんは、にっこりと微笑み私を見つめている

当たり前か、いきなり店の前で泣き出したら、誰だってびっくりするか。


そう、私は三年前の過去に、散々泣いたにもかかわらず、今、また昔を思い出して、涙が私の頬を伝ったのだ。


「もしなら、店に寄ってってよ、花屋特製のハーブティーもあるよ」

「いえ、あの、急いでるので…」


[一緒に働いてくれる人募集中 花屋 勿忘草わすれなぐさ


私の目に、その文字が映った瞬間、私は首を傾げた

「花屋…の後、なんて読むんですか?」

「あぁ、“わすれなぐさ”だよ」

「わすれなぐさ…」

「聞いたこと無い花の名前かな?」

「すみません、花には詳しくなくて…」

「大丈夫だよ?そうだな、勿忘草か…。この花の花言葉は、私を忘れないで。この花は、恋人の為に花を摘もうとした青年が河へ落ち、花を恋人に投げて「私を忘れないで」と言った言葉が、そのまま、この花の花言葉になったんだって。僕も本を読んで知ったんだけど、悲しい話だよね。」


“勿忘草、私を忘れないで。”


「私、三年前の失恋思い出しちゃって…へこんでたんです。でも、なんか元気出てきました。あっ、勿忘草って、いつ咲く花なんですか?」

「ちょうど、今の時期だよ。」

そう言われ、私は店内を見渡す…

「ずいぶんと、可愛い店内ですね?」

「ん?そう?」

「はい、なんか、ちょっと、花屋さんのイメージというより、花がいっぱいあるカフェみたい。」

「そうかな?初めて言われたけど…」

「お兄さん、センス良いですね?私、こういう場所好きですよ!」

「ありがとう、気に入ってくれると嬉しいよ。そうだ、ちょうど満開の勿忘草があるんだ、持ってくるよ」

そう言って、お兄さんは満面の笑みを浮かべ、店内に入っていく…

数分もしないうちに、紫の花が咲く鉢植えを手に持ち、お兄さんは戻ってきた


「これが勿忘草だよ」

お兄さんが見せてくれた花は、可愛らしい花が沢山集まっていた


「小さくて可愛らしい花ですね」

私はその愛らしさに、すっかり魅了され、その花が欲しくなった。


「あの、勿忘草…私、買います」

「えっ、あっ、お買い上げですか?分かりました。ちゃんとしたのを用意しますよ?」

私は店内で、勿忘草を育てる注意点などを聞きながら、お兄さんに付いて歩いた。勿忘草を育てるのに必要なものは、お兄さんが揃えてくれた。


さすがに無職には、お金の心配もあったけど、お財布に余分に入っていた事もあり、私は勿忘草と鉢などを買って、その日は帰路についた…



その日、自宅についた後、早速、勿忘草の手入れをすると、私は、お兄さんと店内の様子を思い出していた


あの店内は、人を幸福にする力がある。

そのくらい、素敵な店内だった


そして、なにより、お兄さんの人柄こそ、幸せいっぱいで、素敵なお兄さんだった。

私はいつの間にか、その文字を思い出しては、一人ニヤリと笑ってしまった…

[一緒に働いてくれる人、募集中] 

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