卒業
私の通った学校には、沢山の花が届く。
昔から学校の近くの花屋さんと、学校の校長が仲が良いとか、そういう理由で、私の通う学校には、花が絶えない
綺麗な色の花が、学校を飾り、なんだか、とても華やかに見える。
そして、今日・・・
私は一段と華やかになった学校で、卒業式を迎えた
三年間通った学校で、沢山の花に囲まれていたせいか、私は花が好きになった。
昔は花の良さが分からず、なんで?と聞かれる事が多かったのを覚えている。
その時は、ホント、答えに困る。
なんで?なんて言われても、分からないものは、分からない。
私はずっと花の良さなんて、分からない…。そう思っていたのに、不思議。
自分の通った学校が花に囲まれていただけで、花の良さに気付くなんて。
私は、名残惜しい校舎を隅々まで見渡す
もう、ここには来ないんだ。
制服も教室も・・・
私には今日で最後なんだ・・・
卒業式では、なんだか恥ずかしくて我慢した涙が、今になって私の頬を伝う
さよなら、学校。
私が校門を出たところで、呼び止められ、声のする方を振り返ると、一年の時から付き合っている彼氏の姿が目に映る
「どうしたの?」
「お前に、話したい事があってさ…」
「なに?話って」
「彩、ホントにゴメン!!俺、大学に通うのに、引っ越す事になった。だから、その、お前とは…その、遠距離になる」
「…えっ?」
「ずっと黙っててごめん。俺も悩んだ結果、寮生活になった。だから、その…今日で終わらせたい。」
「なに?急に…」
「だって、遠距離って、辛くないか?会いたくても会えないんだぜ?なら、その、今日で…」
「…馬鹿じゃないの!?そんな、遠距離くらい…」
「俺の大学、他県だよ?そりゃ隣の県だけどさ。なんか。それでもやっぱ、遠いし。」
彼の突然の告白に、私は返す言葉を捜しても、これ以上は見つからなかった。
そんな時、ふと視線を感じ、彼の後ろに人の気配を感じた
「あれ、後ろに誰かいる?」
「あっ、や…。あの、その、彩の勘違いじゃねーの?」
「えっ?」
私はもう一度、彼の後ろを確認する
私の見間違いではない、やっぱりそこに、人は立っていた
それはもう、頬を染めた、純情そうな同じ学校の制服を着た同級生の姿だ。
「あれ、大和のクラスの子じゃない?」
「えっ、あぁ、そうだな。」
「彼女、ずっとこっち見てるけど。」
「あぁ、そうなんだ。」
彼が頭をかいた瞬間、何かが下に落ちた…
「なんか落ち…これ、連絡先って、もしかして彼女の?」
私はその落し物を拾い、彼につき返す…
「彩、マジでゴメンな。それじゃあ!!!元気でな!」
「ちょ、逃げるなー!!!!」
私は、彼の姿が見えなくなるまで、見ていたが…。
案の定、二人はそういう関係になったらしい。
いつからだろう、私、ぜんぜん気付かなかった。
何よ、遠距離が理由じゃなくて、普通に浮気したんじゃない?
あの子は、同じ大学にでも行くのかな?
だから、私じゃなく、あの子なのかな?
全く、ようやく涙止まったのに、何で…
私の方が、馬鹿だった。
ずっと一緒にいた彼氏の浮気にも気付けないなんて…
最低だ。
私の涙は…いつ止まるの?