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夢解 2  作者:
9/16

崩れる群青

 冷たい風が、二人の髪を撫でる。

 二人の殺気が入り混じり、空気は張り詰めていた。

「・・ここは・・どこですか?!」

 群青が辺りを見回す。

「誰かの夢の中」

 ・・夢?!

「勝手に入らせてもらったの。誰かの夢の中にね・・」

「そんなことが?」

 声が出ない。そんなこともできるのか?!

「入りやすそうな夢を見つけて、あたしは入ることができるの。どこにいても、何をしていてもね・・」

 今、眠っている誰かの夢の中に、自分がいるのが信じられなかった。けれども、彼女が嘘をついているようには見えない。

「あなたが、まどかさんにこのナイフを渡したんですね?」

「そうだよ」

 だから何?そう、少女の目は言っている。

「なぜ、彼女に渡したんですか!?」

「・・・死んでほしかったから渡したの。多分、死ぬだろうなって分かったし」

 淡々と話す少女に、思わず身震いした。この子は、死というものに無頓着だ。

「それに、欲しいって言ったのはあの女だよ?あたしは悪くない」

 悪くない?

 その言葉に、群青の瞳孔が開いた。

「ふざけるな・・あんたのせいで、まどかさんは・・」

「あたしのせい?バカじゃん・・」

 少女が、群青の目の前に来た。反応しきれないほどの速さで・・

「全部、あの女が望んだことだよ!」

 群青が、少女の力によって吹っ飛ばされる。

「グワッ!!」地面に思い切り身体をぶつけ、息苦しさから血を吐いた群青。

 なんて力だ。あんなに小さな体なのに・・・

「立ちなよ。本当は、もっと強いんでしょ?」

 近づく少女。

「お前、名前は?」

「リリーだよ」

 リリーの足が止まった。

「そうかリリー・・私を怒らせた女性は、あなたが初めてですよ」

「・・だから何?」

 感情のない口調。本当に、アンドロイドのようだ。

 群青は上着を脱ぎ、黒いシャツの袖を捲くった。

「準備完了です。私が、この手であなたを捕らえます」

「できるもんならやってみなさいよ・・」

 二人の交戦が始まる。



 群青は夢の中で使える武器を持っている。それは、パートナーの中でも優秀な者にしか与えられない武器。

「・・捕らえましたよ」

 それが、リリーの足を捕まえた黒のつるだ。

「さっきからやけに接近戦を好むと思ったら、こういうことだったんだ」

「えぇ。気づかれまいと、攻撃されるように演技していたんですが、成功ですよ」

 リリーの足は、黒の蔓に縛られたまま。動かすことができない。

「その蔓、切ることは不可能ですよ。私の力によって強力になっていますからね」

「そうみたいね。ね、夢職の連中も、こういう武器って持ってるの?」

 リリーは平然とした口調をやめない。

「さぁ、どうでしょうかね」

 怯えもしないその姿が、群青の怒りを増幅させる。

「捕まったら、あたしは拷問を受けるんだよね?」

「そうですよ」

 リリーが、初めて声を上げて笑った。

「それは嫌だから、やっぱりあんたには死んでもらわないと」

 彼女の形相が変わる。

 その瞬間、リリーはしゃがみ、両手を地面に当てる。

「何をする?!」

「言ったでしょ?コレは、誰かの夢の中だって・・・誰だか、分かるかしら?」

 ・・・どういうことだ?!

「闇の力に、苦しむがいい・・」

 リリーの手が黒い光に包まれ、その光は一気に地面に放出される。その衝撃で、地面が揺れ、亀裂が入った。

「ウワァァア!!!」

 群青が頭を抱える。

「痛いでしょ?あたしの力で、あんたの夢を破壊しようとしてるんだから・・」

 そうか、この夢は・・私の夢・・・

「夢の中で闇の力を解放すれば、その激痛で大抵の人は死ぬ。コレって、本当はあんまり使っちゃいけないんだけど・・残念だったね?縛るなら、足じゃなくて手にしないと・・」

 彼女の甲高い笑い声が、群青の頭に響く。

「さ、これでお仕舞いだよ。哀れなパートナーさん・・」

 物凄い力を溜めたリリーの両手。

 その両手を縛ろうと、群青はありったけの力を振り絞って黒い蔓を操る。しかし、無常にも力が尽き、その蔓がリリーの腕にまで届くことはなかった。

「さようなら・・」

 闇の力を解放するリリー。

 周りの景色が、どんどん崩れていく。それと同時に、群青の身体が地面に落ちた。

「結構やるね。楽しかったよ・・」

 蔓が解けたリリーは、群青のポケットの中にあったナイフをゆっくりと手に取る。

「目覚めることができたら、また戦いましょ・・じゃね」

 群青の夢の中から、リリーが消えていく。

 その姿が、薄っすらとだけ群青の目に映った。

 

 主・・できそこないのパートナーで、すみませんでした・・・・

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