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夢解 2  作者:
5/16

ナイフ

 その夜は、雲が空を覆いつくしていて、星一つ見えない。生暖かい空気がどんよりと漂っていて、どことなく不気味な感じがした。


「ねぇ、まどかと敦、群青はどっちを信じる?」

「どちらも疑いませんよ。一応はね」

 一応?芥川が首を傾げる。

「まどかさんが、ストーカー行為をしてないってことは信じます。けど、敦くんへの想いがまだあるってことは、それに似た行為をしている可能性はあります」

「それに似た行為ねぇ・・」

 群青の考えていることは、さっぱり分からない。幼い頃から、群青は一人で考え一人で行動するタイプだった。芥川はそれについて行くだけ。全てを彼に任せていたからだ。

 けれども、夢職としての力が自分にあると分かった時、芥川に自信が芽生えた。

 群青にないものが、自分にはあると。

「ま、とっとと敦の夢に入って、仕事を終わらせようか!」

 だから今、自分の足で歩くことができるんだ。

 ぐっすりと眠る敦の前で、二人は目を合わせた。

「よし、入るぞ」

「はい」

 群青が笑顔を見せる。

 敦の手を握った二人が、夢の中へと入っていった。


「ここですか・・」

 そこは闇に包まれた世界。

 目の前には、しゃがみ込んでいる敦がいた。

「敦!」

 二人が駆け寄る。

「大丈夫か、お前!」

 久々の仕事で、正直、芥川自身も緊張している。

「はい・・でも声が・・」

 声?

 耳を研ぎ澄ませると、聞き覚えたのある声がする。

「敦ぃ・・」

 あの声は、まどかだ・・

「どういうことだ?」 

 芥川の心配そうな目が、群青を見る。

「分かりません・・」冷静な群青の額に、汗が見える。

 まどかの声は、どんどん大きくなる。分からない・・どこからするのだ?これは、まどかの敦に対しての呪縛か?

「主・・アレ・・・」

 群青が指差す方向。

 それを見つめる芥川と敦。

 現れる人。

「こんばんわ」

 それは、笑顔のまどかだった。

「群青?どういうことコレ?!」

 分からない。

 敦は夢にまどかが現れると言った。夢に、憧れの人や憎い人が現れる人はよくある。けれどもそれは、幻。姿形はどことなくぼやけていて、ましてや喋ることなんてありえない。

 しかもまどかは、自分の意志でここにいる・・

「そんなに驚かないでよ!まどかも、人の夢に入れる力を持っているわけぇ!!」

 ・・そんなわけない。

 人の夢に入る力があると分かれば、夢解の本部が黙っているわけない。

「凄いでしょ?まどかも夢職ぅ〜!」

「嘘だ!おい、どうやって入った?!敦の夢に」

 芥川が声を荒げる。

 その声に、まどかの表情が強張った。

「うるさいわねぇ・・どうだっていいでしょ?敦のこと好きだから、神様が助けてくれたの!」

 敦が声を震わせた。

「何なんだよ、お前!いい加減にしてくれよ!!」

 倒れそうになる敦を、群青が支えた。

「まどかさん、どういうことですか!何故、彼の夢に?!」

「好きなの。誰にも渡したくないのっ!でも、現実じゃ敦はまどかのこと恐がって、逃げてばっかり。だから夢に入ることにしたの・・やり方を教えてくれる人がいたから」

 やり方?

「誰ですか、それは!」

「秘密って、約束したから教えない!」

 まどかが近づく。

「来るな!」その前に、芥川が立ちはだかった。

「お前のこと、ストーカーって思って悪かったなって思ってた・・けど、撤回する。お前は、夢でストーカーする最低な野郎だ!」

「何がいけないのよ!敦の夢に入って!!」

 芥川の体が震える。

「何がいけない?全部いけないことなんだよ!他人の夢に入るっていうのは、そいつの人生狂わしちゃう危険がある、だから夢職だけに与えられた仕事なんだよ!」

 鼻で笑うまどかが、芥川の目に映った。

「いいわねぇ、敦の人生狂わせちゃうのも・・それをまどかが救ってあげるの!まどかは、彼を守る女神様」

 狂っちまっているのは、この女の方だ。

「もういい、お前とは話しても意味がないから。この夢から、敦を解放する」

 芥川が構えると、まどかはポケットから何かを取り出した。

 ・・・ナイフ?!

「お前・・何だよそれ・・」

 芥川と群青の目に映ったのは、暗闇にも負けず不気味に光る細いナイフだった。


 そのナイフに刻まれた模様は・・黒のダイヤマーク  

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