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夢解 2  作者:
4/16

紅まどか

 翌日の午後、喫茶店に現れたのはダボダボのセーターを着た女子高生、それが、紅まどかだった。彼女の美貌と容姿に、芥川はすっかり釘付け。すっきりとした目鼻立ちに、透き通るような白い肌。潤った唇が、男心をくすぐる。

 ・・芥川だけかもしれないが。

「初めまして」 

 彼女の態度は、堂々としたものだった。それに、何故自分が呼び出されたのかも、悟っている様子だ。

「お忙しいところ、お呼びたてしてすみません」

 群青の丁寧な態度を見て、彼女は鼻で笑った。

「大丈夫。いつも暇だから」

 手鏡で、身だしなみをチェックするまどか。完璧な姿に、一体どこをチェックする必要があるというのだろうか・・。

「ねぇ、夢解って本当に人の夢に入れるの?」

 まどかが身を乗り出す。

「まぁ・・一応」二人とも、答え方が曖昧だ。

「まぢで?!凄いんだけどっ!超面白そう!」

 そんなに笑顔になれるほど、この仕事は楽しくはない。

「で、まどかに何か聞きたいことでも?」

 彼女は頼んだジンジャエールを一口飲むと、本題に入った。

 この目に、群青はつけ入るスキがないと感じた。

「スリーサイズいくつ?」

 群青の殺気が、くだらない質問をした芥川に向く。

「・・・じゃなくてぇ、あのさ、真鍋敦の奴が、あんたからストーカーされてるって言ってたんだけど」

 随分、単刀直入に聞く人だと、まどかとそして群青も思った。

「ストーカー?!あたしが?まさかっ!」

 目を丸くするまどか。

「そりゃ、別れて間もない頃は、メールとか電話はしてたけど・・今は全くしてないわ」

 キッパリとした口調と、意外な返答は、芥川と群青を動揺させた。

「本当、してないの?」

「しつこいわねぇ!してないわよ!」

 この目に、嘘はないと思う。

「敦くんのことは、キッパリ忘れたってことですか?」群青の問いに、彼女は目を逸らした。

「・・忘れてない。って言うか、今も好き」

 沈黙する。

「モテないわけじゃないけど、自分から人を好きになったのは彼が初めてだったから・・」

 まどかは少し笑った。

「凄く優しい人で、まどかのこといつも考えてくれる人なの・・けど、気づいちゃったの、その優しさを彼は、みんなに振りまいてるんだって。他の女にもね」

 まどかの目が、虚ろになる。

「独り占めしたかったの。だって彼は、まどかのものだったから・・勇気出して告白した、まどかのもの。ま、その思いが強くなればなるほど、彼は遠ざかっていったけど・・」

 芥川の目に映るまどかは、純粋に人を好きになった女の子だった。この子の想いを、ストーカーの一言で片付けようとした自分が、許せなかった。

「自業自得みたい、別れを言われたのは・・こういう女は、重いって忌み嫌われるのよ」

 彼女が立ち上がる。

「とにかく、まどかは一切ストーカー行為はしてませんのでっ!じゃね」

 颯爽と歩き去るまどかを、二人は止めることができなかった。



 人は何故、誰かの優しさを独り占めしたくなるのだろう。自分だけに与えてほしくて、力ずくでも手に入れたくなる。

 キミの優しさは、自分だけのものだと・・・

   

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