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夢解 2  作者:
2/16

親バカ

 警察署と聞いて、大きな建物だと信じて疑わなかった芥川は着いた瞬間、帰りたくなっていた。

 これは警察署ではなく、駐在所である。

「ねぇね、群青・・群青は知ってた?」

「はい。と言いますか、私にとって警察署とは、小さい頃からここですよ」

 群青が本当に秀才なのか、疑った。

「まぁいいや。警察には変わりないし」

 やや不満を残しながらも、芥川は駐在所に入って行った。

「すみません、夢職の芥川と申しますが・・」

「あ!夢解の方ですか!?いやいや、わざわざ来てもらって光栄です!」

 出てきたのは、申し訳ないが警察と呼ぶには程遠い、中年太りの男だ。

 こんな体格じゃ、痴漢一人まともに逮捕できないだろう。

「どうぞ、どうぞ!」

 真鍋まなべという名のお巡りが、二人にお茶を出す。ただそれだけなのに、彼の額はすでに汗が密集している。

「いやいや、夢解というところは噂に聞いていたんですが、本当にあるんですね!感激感激!」

 何故、二度繰り返す?

「あの、早速ですが依頼内容を詳しく聞かせてもらえますか?」

「はいはい!あのですね、実は息子のことなんですよ」

 息子?!

 随分、規模の小さい依頼に、芥川の顔が引きつった。

「うちの息子、あつしって言うんですけどね、これが頭がよくて優しい奴でしてねぇ・・誰に似たんだろうって、いつも妻と話してるんですよ!」

 ・・聞いてねぇよ!

 延々続く真鍋の息子自慢に、子どもの芥川は飽き飽きしたのか、そっぽを向いていた。

 真面目な群青は、引きつりながらも笑顔で相づちを打っているのに・・。

「そんな敦が、最近ストーカーされてるんですよ!ストーカー!」

 芥川の視線が、群青に訴えかける。

 ─もう、帰っていい?─

「警察の私としましても、放っておくわけにはいかないんですが・・敦が言うには夢にまで出てくるらしくて、悩んでいるんですよ!可哀相に・・」

 真鍋は汗を拭った。 

 しかし肝心の芥川は、またも視線で群青に訴えかける。

 ─断っていいかな?この依頼・・─

 群青は咳払いした。

「あの、ストーカーに心当たりあるんですか?」

「ありますとも、ありますとも!」

 だから、何故二度言う?!

「前の彼女です。モトカノ、モトカノッ!」

 真鍋は眉をひそめた。

「敦はちゃんと別れたって言ってるんですけど、どうも相手は納得していないようでして・・女ってやつぁ、恐いですからねぇ」

 その顔と容姿で、女を語ってほしくない。

「では、息子さんを夢から解放すのが・・今回の依頼でよろしいんですか?」

「お願いします」真鍋は深く頭を下げた。

 群青が、分かりましたと承諾し芥川を横目で見ると、爆睡していた。


「主!本当にやる気あるんですか?!」

 珍しく、群青は顔を赤くして怒っている。

「だってぇ!親バカお巡りの話し、つまんないんだもん!」

 こいつは・・精神年齢五歳だな!

「お言葉ですが主、最近じゃ烏の連中も動き出していると噂されています。生半可な覚悟で夢に入るなら、私は維持でも止めますよ!」

 明後日の方向く、芥川。

「主!!」

「分かってるよ!ちゃんとやるから、そんな怒るなよぉ!!」

 不安が拭えないのか、群青の目つきは変わらない。

「よぉし!まずは自慢の息子とやらに、会いに行きましょうか!」

 芥川の笑顔を見ても、群青は笑えなかった。 


 

 生半可な覚悟で夢に入るつもりはない。ただ、敦とやらが羨ましかったんだ。あんなに息子自慢してくれる親父がいる敦が・・。

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