表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢解 2  作者:
15/16

終結

「芥川!!」

「おぉ!氷壁!!」

 二人が再会したのは、階段の踊り場。お互いボロボロの姿に、思わず笑みが零れた。

「お前、ボロボロじゃん」

 淑が苦笑する。

「お前が言うな」

 芥川も笑った。

 無事で何より。二人の目はそう言っていた。

「じゃ、本命倒しに行くか?」芥川が上の階を見つめた。

「あぁ・・早いとこ倒して、ゆっくり眠りたいよ」

 二人が階段を進んだ。



 廊下に出ると、そこは真っ暗闇。けれど二人を呼ぶ、殺気が漂っている。

「この部屋だな・・」

 芥川がドアノブに手をかける。

「狩る気満々ってオーラが、流れ出してるぜ」

 二人は呼吸を合わせて、扉を開いた。

 そこにいた、ソファーに腰掛ける二人組み・・

「烏・・・」

 呟いた淑の声は、震えていた。

「やぁ、ご苦労様。ここまで大変だったでしょ?」

 あくまで笑う烏に、二人の目つきが変わった。

「こいつ・・よくもしゃあしゃあと・・」

 前に出ようとする芥川を、淑が止めた。

「むやみに動くな。どこに罠があるかわかんねぇんだからな!」

「罠?!バカにしないでよ。俺がそんなセコイことすると思う?」

 鋭い目つきが、淑を捕らえる。

「さぁてと・・弔い合戦もここで終わりかな?」

 立ち上がる烏に、二人は間合いを取る。不気味な空気に、冷や汗が流れた。

「二人ともさぁ〜何で夢職なんてやってんの?国に魂売って、楽しい?それより自由に行動した方がずっと楽しくない?」

 戦闘態勢になる芥川を見て、烏は笑った。

「無駄無駄・・はっきり言って、君なんて眼中にないから。俺の目的は、淑だけ・・」

「っんだと!!」

 怒りに身を任せた芥川が飛び出す。

「バカ!!!」淑の声は、届かない。

「無駄って言ってんじゃん・・」

 芥川の拳を軽くよけ、逆にその腕を掴み取る。

 物凄い音がした。

「ぐわぁぁぁ!!!!」

 折れた。

「ねぇ淑。こんな奴と行動するくらいならさぁ〜俺のところに戻っておいでよ?また二人で、楽しくやろうよ」

「俺はお前を殺しに来たんだ」

 烏はため息をつく。

「俺がこれほどまでに誘っているのに、君は冷たい態度のまま・・やっぱり、国に洗脳されちゃった人間は、つまらないね・・」

 後ろにいた男が、烏の隣に立った。

「楼・・君の力を借りるよ」

「・・あぁ」

 そう言うと、烏は両手を合わせる。その瞬間、物凄いエネルギーが楼から放出された。

「淑、君は俺には勝てない・・」

 楼の姿は消え、代わりに烏の顔や腕を放出されたエネルギーが包み込む。

「そうか・・そいつは、お前が作り出した人間か・・」

「その通り。ま、君たちが倒した二人は違うけど・・楼だけは、俺が俺の為に、俺の力で作り出した人間。いつでも俺の力に戻る」

 この空気・・立っているだけでも逃げたくなる。

「俺だけのものになってくれる人間が、欲しかったんだよ・・淑の代わりにね・・」

「悲しい人間だな、烏・・」

「俺を哀れむってか?・・ふざけるな!!!」

 烏の拳が、淑の右頬にヒットした。そのスピードに、体がついていかない。

 吹っ飛ばされた淑は、壁に激突する。

「っつ・・・」

 頬だけ殴られたのに、全身に激痛が走る。なんて、力だ・・

「俺は、俺の力は、完璧だ!誰も俺に楯突くことなんてできない!いずれは国でさえ、俺に跪く!淑、お前もな!!」

 烏の手を、紫色の炎が包み込む。

「淑、俺と組もう。また夢解の連中をビビらせてやろうぜ?」

 差し出された手・・

「・・・組むわけねぇだろ・・」

 ふらつきながら、淑が立ち上がった。

「お前は、俺の大切な人を殺した。あの日から、俺はお前を殺すことだけを考えて生きてきた・・烏、お前と俺が組むことは絶対にない・・」

 烏の瞳孔が開く。

「・・そうか・・じゃ、死ね・・俺のものにならないものなんて、死んでしまえばいい!!」

 烏が飛び出した。

 迎え撃つ淑。

「終わりだよ!!」

 烏の拳が、淑の体を破壊する。その手ごたえに、ニヤついた。

「さよなら、淑・・残念だよ・・」

 しかし、ニヤついていたのは淑も一緒。

「何だ・・」

 周りの景色が一変する。暗闇は一瞬で真っ白に変わり、強い光りが烏を襲った。

「まさか、貴様・・」

 烏が目を伏せる。

「お前の負けだよ。俺がここに来た瞬間から、お前は俺の夢の中にいた・・」

「一体、いつ・・」

「こうなったら俺の勝ちだ。俺にばっか気をとられていたお前が、俺の仕掛けた罠に気づくことはんかった・・」

 罠・・

「ククク・・罠ねぇ・・セコイ奴だ」

「お前を殺すためなら、手段なんか選らばねーよ」

 烏の体を、淑の針金が縛る。

「・・淑・・俺を殺すんだな?」

「・・お前になんか、出会わなきゃよかったよ・・」

 淑が針金を引っ張った時、烏の体は裂け、血を吹き出した。

「さよ・・なら・・・・しゅ・・く・・」

 最期まで笑った烏。

 その烏を見つめる淑の目は、冷たい色をしていた・・。 

 

  

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ