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神遊びは、まにまにと




まずは人里を探す事にした。


私は空に飛んで森を俯瞰した。


所々、きしゃー、と言う声が聞こえるのは空耳であってほしい。



辺りを見回しても森しか見えない。


思い切って上空高くまで移動した。









移動し過ぎた。


空気が殆どない。


でも、1つ分かった。


いた場所は日本だ。









そうと分かれば少しは楽だ。


そうだ、京都に行こう。


そう思った矢先、長野辺りで大きな恐怖を感じた。


得体の知れない、ただ恐怖以外の力の方が大きかった。








私は湖付近に降り立った。


そして、近くにあるでっかい神社に向かうことにした。


人がたくさん吸い込まれているから。


「行列ってレベルじゃないよ、これ」


私はふと呟いた。


もはや、バキュームだ。


さて、せっかく来ましたし私も参拝しますか。






私が鳥居を潜った瞬間、数多の蛇が巻き付いて来た。

感じるのは死の恐怖。


殺しに来てる。


しかもこれは今までとは違った力。


力の発生源を辿ると……


「鳥居の上?」


凄い形相で変な帽子を被った少女が鳥居の上から力を使ってくる。


「落ちたら危ないよ〜」


犯人と分かっていながらも、恐らく人外だろうが、注意しておく。


一瞬、周りの人から痛い目で見られたが無視しておく。



その少女は飛び降りたかと思うと私にフラフープみたいな鉄の輪を投げてきた。


私は避けようと地を蹴る。


ゴン


が、絡み付いた蛇によって盛大に転んで石畳に後頭部を強打、そのままお腹に鉄の輪が命中。


私は相当頑丈なのだが不覚にも打ち所が悪くてだらだらと出血した。


「いたた……、血が出ちゃったよ〜」


私は少女を見るが、顔が驚きすぎて目が点になっている。


そこで初めて少女が口を開く。


「あんた、何者なのさ。人間?妖怪?それとも落ちぶれた神様?」


最初に仕掛けた無礼者はそっちだから普通はそっちから名乗れよ、などと思いつつも私は自己紹介をすることにした。









「あーうー、ごめんね〜」


彼女の名前は洩矢諏訪子。

土着神(土地神)の頂点。


蛇の正体は諏訪子の操る祟り神。


私には効かなかったが、もっと力が強ければ私は祟り殺されていただろう。


「まとめると、陽奈は人間的な妖怪なんだね」


「そういうこと……なのかなぁ……」


ちなみに初めに言われた事、何者か、について。


霊力で人間、妖力で妖怪、信仰の名残から神様、と。


神になったつもりはないが村で崇められていたのが原因だろう。

まだ、膨大な神力は残っているらしいが信仰がゼロの為に消費されるだけらしい。


もっとも、村は全滅、ルーミアは崇めてはいなく尊敬、よって供給ゼロな訳だが、現状、諏訪子の3〜4倍らしい。


使わなければ減らないとか。


普段から神様たちは豊作やら国の守護やらでの使用があるが、私はしていないため溜まっていたらしい。


「陽奈は何の妖怪なの?」


唐突に聞かれる。


「何だろうねぇ」


私も分からない。


「諏訪子ってさ、その帽子は何なの?」


「た、だ、の、帽子だよ〜」


いや、目とか貴女と同期してるようにしか見えません。


「それって……」


「た、だ、の、帽子だからね〜」


私は諏訪子に少し恐怖を覚えた。











ある時、私が諏訪子とお茶を啜っている時、諏訪子が突然立ち上がった。


「あーうー、来ちゃったよ〜」


「何が?」


「前からみんな(土着神たち)から聞いてたんだけどね、どうやら大和の神が攻めて来るらしいのさ」


諏訪子が溜息をついた、その時、


「ごめんくださーい」


神様が一人、私たちのいる本殿に闖入して来た。


「来たね……、八坂神奈子……」


「おや、私の名前を知っているんだねぇ?洩矢諏訪子」


私も諏訪子に鍛えられたから分かる、まさに諏訪子は蛇に睨まれた蛙に近い。


相手の神力は私くらいある。


しかも、信仰で得ている分、化け物に近い。



まずは諏訪子が私に巻き付いたのと同じ蛇、ミシャグジ様をけしかけた。


和解した後に聞いたが祟り神の一種で大量に巻き付かれると祟り殺されるらしい。

私には欝陶しいだけだったが。


神奈子の近くでミシャグジ様が動きを止めた。


「対策しないと思ったのかい?」


どうやら、背中のしめ繩が近付けさせないらしい。


「なら、これならどうさ!!」


諏訪子が鉄の輪を投げる。


現在の技術では最先端である鉄器。それに神力を付加して投げている為、それは岩をも砕く。


「それも……対策済みだよ」


どこからか細い蔦がのびてきて、鉄の輪を絡めとる。


「なっ……」


鉄が錆び、輪が崩れ落ちる。


どれほど強かろうが崩れては何もならない。


「まだやるかい?」


「あーうー、負けだよ〜。……でも、そう簡単にはいかないと思うけどね〜」




事実、諏訪子の支配力は甚大だ。


刃向かえば確かに祟り殺される、が、信仰していれば恵と安全をもたらせる。


神奈子が勝った程度で信仰対象を変えたりはしないだろう。



と、私は神奈子に説明した。


「それもそうだねぇ……」



結果、洩矢を改め守矢とし、表向きは神奈子、実際は諏訪子、と二分する事で、つまり国の者などは諏訪子、国の外には神奈子、と信仰を二分する事が出来た。




「で、諏訪子、いつになったらこの妖怪を退治するんだい?」


「陽奈は悪くないから退治しないって言ってるじゃん」


あれから、二人は喧嘩はするものの仲は悪くなく、三人でお茶を啜っている。


「でも神社の、しかも本殿に妖怪は……ねぇ……」


二人の闘いの後、神奈子に勝負をしろ、と言われたが、うっかり口を滑らせて、妖怪の私は関係ない、と言ったばかりに痛い目にあった。


人間同様の気配を出していたつもりではあったが、諏訪子に疑われたのだから神奈子にはヒントを与えてしまったので、ばれない訳がない。


オンバシラで殴られた。というか石畳にめりこんだ。


「いーじゃん、私が人を食べた?襲った?国の人からは神様の友達の“人間”って思われてるんだよ?」


「妖怪を退治する妖怪なんて考えられないしねぇ」


「そーだよ」


神奈子の言葉に諏訪子が納得する。


この前、国に小妖怪たちが来たのだが何故か私が近付いただけでぴちゅーんした。


実力のある妖怪退治屋だとも思われているが、私にも原理がよく分からない。


誰か師匠がいたのか、などと聞かれる事もあったが、私が退治されてしまうではないか(棒読み)。


「じゃあ、一回戦ってみる?」


「私は見てるよ〜、神奈子、頑張れ〜」


神奈子が諏訪子の頬を少し引っ張ってから私の元へ。


「私だって仮にも軍神さ。一介の妖怪には負けたかないね」


どうやらやる気らしい。










「じゃあ、私が止めたらおとなしく止めてね〜」


と、何故か審判な諏訪子。


私たちは頷いた。


「じゃ、始め〜」




「……妖力は開放とかしないのかい?」


「ん?ああ、徐々に」


私は準備運動をしながら自分の中にある恐怖の中で使えそうなものを探す。


『威力を操る』


これだ。


他にも記憶にないが『天候』やら『台風』やら『災害』やらとあったがぶっちゃけ使えない。



神奈子がオンバシラで叩きに来る。


私は威力を極小(ゼロには出来ないから)にして直撃する。


コン


乾いた音がした。


やり過ぎたか……。


「なっ……そ、そんな事があるかい!!」


神奈子は私をオンバシラで乱打、乱打、乱打。


コンコンコンコンコンコン


コンコンコンコンコンコン


コン、コン、コン……


「あの……」


「こ、これで決めるよ!……オンバシラー!!」


オンバシラを二本投げて来た。



ココン


ドンドスン


淋しそうに風が一度、声を鳴らした。






「退治は出来ないのはよく分かった。諦める」


「ふぅ……」


「ただし、やっぱり置いてはおけないねぇ」


「神奈子!?」


「いや諏訪子、神奈子は正しいよ。まあ、私もぼちぼち旅に出るさ」


私は最後に神社にいる宮司さんたちに別れを告げて……


「ま、まったー」


諏訪子に引き止められる。


「これ持っていって」


渡されたのは道中安全のお守り。


「ありがと」


私は諏訪子に感謝し、はにかみながら旅路に出た。





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