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楽園の閻魔の休日

彼岸組の日常を。


「映姫ちゃんおつかれー」


私が一息ついた時、ちょうど先輩がやって来ました。


ですが私にはまだ少し残っている仕事があるので帰れません。


「あの……、まだ仕事が……」


「いーよ、私がやっとくから」


「はあ……、はい、分かりました」


先輩はすごいです。


閻魔は二交代制で、ここ幻想郷も例外ではありません。幻想郷が出来た時はあまりの不評から閻魔が決まらず、私は上からの命令で就く事になりました。


ですが、先輩は自らの職務があるにも関わらず残りの一人に志望し、さらには現在では自らの職務をもこなすという事をしています。


「それにしても映姫ちゃんって働き過ぎじゃない?」


「い、いえ、その様な事はないかと……」


「仕事主義にも程があるよー?小町ちゃん程じゃなくてもいいけど息抜きしよーね」


息抜きとは言われても私は精一杯やってはいます。息抜きをする時間がないので休みは満喫するタイプだと思ってはいるのですが……。


「先輩ほど私は優秀ではありませんので……。そういえば先輩って人里とかにあまり行きませんよね?」


「あー、映姫ちゃん、私は一応死人だからね?」


先輩は死んでから出世した人物です。何でも素質があったらしいです。

それでも採用されたのは幻想郷が今の形になる前です。そう考えると驚くべき才です。


「覚えている人などもういないのではないのですか?」


言い方は悲しいのですが、数世紀も前ですから、覚えている者も既に他界しているのではないのでしょうか?


「それがいるんだよー。私ってね、生前は半人半妖で、まあ妖怪にもおかー……母親の友人とかまだ生きてるし、妖怪の母親も生きてるし、私を殺した妖怪もまだ生きてるからねー」


母親をおかーさん、とでも言いそうになりましたよね?

そんな事よりも母親より先に死んでしまったとは……。


「親より先に死んでしまうのは……」


「そう大罪だねー」


裁判の判決は閻魔の一存ですが、もちろん基準はあって、その中でも親より先に死んでしまうのは大きな罪のはずです。


「私は親が親だけに例外なんだってさー」


「はあ……」


あまり深く追求してはいけない気がするので止めておきます。


「それよりもほら、交代だよ、交代!」


「は、はい」


「ついでに小町ちゃん起こしてきてね。智音さんと一緒でいいから」






河原に着くと相変わらず小町は寝ていました。


「いつも通りだな」


横にいる智音さんが呆れた顔をしていました。


ちなみに彼女は最近入ったのですが、上司命令で死後採用されたハクタクです。


「小町!起きなさい!」


「zzz……、もう食べられにゃい……」


最近眠りが深くなっている気がします。


「私に任せろ」


智音さんがいつも通りに彼女の頭を掴んで頭突きをしました。

余波だけで少し離れた私まで少し痺れるくらいで、当事者の周辺は軽く凹んでいます。


どうしたら頭突きにそんな威力が出せるのでしょうか?


「――――っ!???」


小町は涙目で声も出さずに頭を押さえて転げ回っています。

私は喰らいたくないです、一生。


「小町!!」


「きゃん!…………なななななんですか!?」


直ぐ様転げ回るのを止めて彼女は私の目の前で正座しました。


「……痛くないのですか?」


少し心配な音がしたので聞いてみました。


「滅茶苦茶痛いです」


「ならば仕事をしっかりしなさい」


「嫌です」


「智音さん、もう一発」


「そうだな」


小町の背後にいた彼女は肩をがっしり掴みました。


「え、あ、じょ、冗談ですから、や、止めてくださ」


――ドッゴン


震度5弱ですね。






小町もしばらくは仕事をしてくれそうなので私も人里へ。

もちろん私服です。


「ここはいい所ですね……」


幻想郷のルールがそうしてはいますが、この里では人間も妖怪も等しい。みんなが手を取り合って生きています。


「ちょっと隣はいいか?」


「ん、はい」


私は団子屋にいるのですが、隣に誰か座りました。当然団子を飲み込んでから返事しました。


「よく見たら閻魔様ですね」


「貴女は八雲の……」


隣に座ったのは意外や意外、八雲藍でした。


「はい、お久し振りです」


「今は私も休暇中なので敬語でなくていいですよ」


「そうか」


「それで今日は何を?」


「夕飯の買い物だな。紫様はいつも通りだからな……」


「それはそれは……。また伺いましょうか?」


八雲の式も大変ですね……。


「いえ、ストレスが貯まると私に振りかかるから遠慮したい」


苦労してますね……。


「まあ、でも最近は陽奈様の助力もあってな」


「白嶺陽奈が?」


「おかげで少しは楽が出来て……」


それから私は彼女の愚痴を少しばかり聞いていました。


白玉楼の彼女もですが従者は苦労するのでしょうか?

いや、八雲と白玉楼くらいでしょう。


今度根性叩き直しに行きましょう。






そういえばこうして何となく里を歩くのも久し振りな気がします。

普段は帰って寝るばかりでしたので。


「あ、映姫じゃん。珍しいね」


「誰かと思えば……、貴女ですか」


私が振り返れば本当に珍しげに私を見る白嶺陽奈がいました。


「何をしてるの?」


「何もしてません。休みを貰ったのです」


「ふーん、閻魔って休みはあるんだ」


「死神はないですが、閻魔は二交代制です。私が休みなら別の人がやっているだけですよ」


つまり小町は年中無休な訳で……、今度休みを申請してあげましょうか……。ですが代わりもいませんし……。


小町の部下を配属してもらえばいいのでは!?一人前になれば交代制にして……、いやいや、ダメです。さらにサボる可能性が高いです。


「別の人って……、どんな人なの?」


「私の上司なのですが……、尊敬に値しますね。その仕事能力といい、もう憧れですよ!」


「ふーん、映姫が憧れるって……」


「自らは冥界の情報管理局の長にして実質ナンバー2ですし、その仕事と幻想郷の閻魔を兼任してまでいるのですよ!まあ、ですからヤマザナドゥというのは私だけの肩書きですが……、そんな事よりもそれはもう素晴らしくて!」


「す、凄いんだね……」


「そうですよ!」


「それでさ、名前は何ていうの?」


「名前……ですか?」


そういえば聞いた事ありません。私は先輩としか呼ばないですから……、えーっと……、


「いや、覚えてなければいいんだけどさ、もしかしたら知り合いかなぁ、とか。ほら、たしか都さんと紅蓮もいるんでしょ?」


「あ、はい。彼らも凄いです。実に有能で助かるんですよ」


あの方々は先輩ほどではありませんが、それでも私よりも仕事が上手です。


「今度会いに行こうかなぁ……」


「それはダメです。生者が冥界にそんなに軽いノリで来られては困ります!」


「冗談だって、ね?」


ね?、じゃないですよ。


「貴女は例外らしいですから特に咎めを受けないらしいですが、それでもその様な行動は出来るだけ控えてほしいのです」


「え、そうなの?」


「はい。何故か上からの命令で貴女は大丈夫らしいです。私は何故か知りませんが……、先輩なら知っているかも知れませんね……」


「じゃあ深く関わらないのがいいね」


「はい。まあ、本来死者は顕界には戻れませんが……、彼らを白玉楼に遣いに出した時に偶然出会うなら仕方ないと思いますよ」


私は少し始末書書かねばなりませんが、彼らも会いたがっていますから、どうにかしてあげたいですしね。


適当に理由を作りましょうか。








久々に気分も晴れたのでお土産(草餅)を買って私は戻りました。


「先輩、お土産です」


「映姫ちゃん、だよね?」


「それ以外に何か?」


「いい具合に垢抜けたって感じだねー。ちょうど待ちの魂をいないし休暇ターイム!」


先輩が手をパンパンと鳴らすと智音さんに都さんに紅蓮さんがやって来た。


「草餅かいな、私好きなんや」


「俺もだ。陽奈に作って貰った事がある」


「ホンマか!?陽奈さんの手料理か〜、想像出来へん」


「陽奈は料理もそれなりに出来てたぞ」


むぅ……、休暇をするといつも白嶺陽奈の話になります。


「でもやっぱり味噌汁が一番おいしいよー」


そして、先輩は何故か家庭レベルまで知っています。もしかして先輩って……


「先輩、もしかして生前って白嶺陽奈と友人とかの関係があったのですか?」


「あー、んー?もっと親しい仲だったよ?」


「そうですか……。そういえば彼女と話をした時にですが、先輩の名前って何でしたっけ?」


「あー、言ってなかったかなー?」


「そういえば閻魔ちゃんは聞いてないんちゃう?」


「そう……、でしたっけ?」


配属された時に渡された書類には名前はあったとは思うのですが……、忘れましたしね……。実際聞いてはいないですし。


でも初めて会った時から、どうにも初めてではない気がしたんですよね……。まるで依然から知っていたかの様で……。


「あー、映姫ちゃんには改めて自己紹介するとしよーか。私の名前はね…………」







おっと、映姫の上司については感想に書いても私はノーコメントですよ?

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