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闇の帳


夜、月、明るき陰放ちたり。しかども、一日、陰消え、闇、夜照らしにけり。

妖の力は月の陰とともに輝き増したり。しかども陰消え、妖の力が衰えにけり。

遂には日の陰までも闇に飲まれりけり。







ある日の事だった。


いつもの様に家で読書をしていると、どさりと背後で音がした。


何かと思って振り向くと紫が伏していた。見るとかなり衰弱している様で、今すぐにでも看なければいけない。


私はとりあえず紫を(増築した時に作った)部屋のベッドへ運んだ。







「すまなかったわね……」


紫にお粥を食べさせていると謝られた。


「突然来たのには理由があるのよ」


「暇潰しじゃなくて?」


「なら、こんなに弱らないわ」


確かに、今の紫は妖気が弱々しい。恐らく私の家に来たのでほとんど力を使ってしまったのだろう。


「何があったの?」


「はぁ……」


紫が、これだから、と言いたそうな目で私を見る。


「貴女、何ともないの?ほとんどの妖怪は私の様に衰弱してるのよ」


「どうして?」


「外に出れば分かるわ」


「いや、窓あるから」


私はカーテンを開いて外を覗いてみる。


「うん、夜だね」


「今は昼よ」


・・・。


「まぢで?」


「マジよ。誰かが昼の太陽も、そして月までも隠してしまったのよ」


「月がないから弱ったと」


「そうね。鬼や天狗といった妖怪は大丈夫らしいけれど、一人一種の妖怪はほとんどが虫の息かそれに近いわ。私ももうスキマを開けないくらい……」


紫が少し空を切る様に手を動かし、それからお粥を口へ運ぶ。


「そこで、貴女に解決を頼んでいいかしら」


「私に?」


「鬼は地底にいるし天狗は警戒態勢、自由に動ける大妖怪は貴女だけなのよ」


「霊華は?」


「人里で揉みくちゃにされてるわ」


ご愁傷様です。


「それで、何かしらの情報は掴んでるんじゃないの?」


「当たり前よ。黒幕は既に確定しているわ」


「誰?」


紫は軽く息を吸い直してから言った。


「闇を操れる妖怪よ」








私は森から出て空を見る。


そこにはとこしえの闇。


仮に犯人が彼女だとしても引っ掛かる点がいくつかある。

私は強力な封印を施したはずだ。それによってここまで力を引き出すのは不可能。


さて、どうしたものか……。


そう考えながら歩いていると、視界がいつの間にか真っ暗になっていた。


妖怪は暗くても目はきくはずなのに、だ。


「……………」


何か聞こえた。


「……ぁ………♪」


私は耳を凝らしながら、その音源へと向かう。


「…み……………たい〜♪」


どうやら誰かが歌っているようだ。


「貴女と二人で〜♪」


相変わらず視界は黒一色だ。


「いただきます」


突然歌が止み背後から声がしたので慌てて結界を張る。


「誰?」


「防がれた!?」


背後の相手は歌っていた声と同じだった。


「驚いている所悪いけど、私は先を急いでるから目を直してくれない?」


「せっかくの人間を手放すと思う?」


相手が妖怪なのは分かってた。けれど……、関係ない。


だいたい私が人間って……、ああ、いつも通り隠してたか。


「残念ながら私は妖怪なんだけど……」


「なら、余計に嬉しいよ。今は大妖怪でも弱ってるし。人間よりもおいしいかは別にして、食べれば力がつくもん」


「じゃあ戦って通してもらうしかないの?」


「あなたが私に勝てるならね。目が見えないで私に勝てると思うの?」


相手が幽香じゃなければ勝てると思う……。


「返事がないね。じゃあいくyへぶぅ……」


喋ってる間に近寄って地面に叩き付けておいた。


「な、なんで場所が!?」


私が相手の背中を踏みながら言った。


「妖気だだもれ」


「しまった!?」


もう何だろう、この虚しさ。


「命までは取らないからさ、名前を教えてくれない?」


「私の?私は夜雀のミスティア、ミスティア・ローレライ。そういうあなたは?」


「白嶺陽奈」


「しらっ……、えっ、嘘でしょ!?」


私の視界がクリアになった。


「す、すみません。あなたが白嶺陽奈だったなんて知らずに……」


突然ミスティアが何故か私に謝って来た。


「私、何かしたっけ?」


「あなたは八雲より強くてフラワーマスターとも互角で……、と仲間の中では相手にしたくない妖怪NO.1なんだけど。何でもフラワーマスターを踏んで虐めていたとか……」


「あれ……、見られたんだ……」


いつかの戦った時のアレだろう。


「だから私を見逃して!!」


「見逃すもなにも……、どうこうする気はないからね」


機嫌を損ねたからぶっ殺す、とか考えてる誰かと一緒にしないで欲しい。


「え?」


「うん」


「そうなんだー」


「そうなんです」








ミスティアと別れてからしばらく歩いていると人里にたどり着いた。


「誰だ!…………って陽奈か」


「あ、妹紅、久しぶり」


「相変わらず能天気な奴だな」


「失礼な。異変の解決をしているというのに」


「それなら智音が行ったぞ。妖怪と違って力はそこまで落ちないらしいからな」


あ、さいですか。


「って……、危険じゃん!」


「何でだ?」


「昔、私が殺されかけた奴が異変の犯人なんだって!智音さんじゃ勝てないかも知れない」


「な、なんだってー」


わざとらしい反応をありがとう。


「ふざけてないで追い掛けるよ」


「それは激しく同意したいがな、智音がどこに向かったのか知らないんだ。それが分かるのか?」


「ごめん、分からない」


詰んだ……。でも、このままでは智音さんが危ない。


「大きい妖気を探せばいいじゃん」


そんな時に第三者の声。


「里のみんなったら……私に質問したって解決しないのに。ねぇ、陽奈ちゃん」


「霊華?」


「久しぶりだね」


前会った時よりも大きく成長した霊華がいた。


「なんだ、陽奈と博麗は知り合いか?」


「12、3年前にね。私ってほら、記憶力あるからさ、陽奈ちゃんの事も覚えてるの」


「それは顔見知り程度だろう……」


妹紅が呆れていた。


「そんな事より異変の解決だよ。陽奈ちゃん、妖気は感知出来るよね」


「もちろん」


私がどれだけ妖怪をやって来たと。億はいってる。


「じゃあ、妖気の集中している場所を探して」


「大きいのを探すんじゃなくて?」


「確かにそうだけど出来る?私は幻想郷の広さじゃ厳しいかな、って思ったんだけどなー。漂っているのが集中しているのを探す方が楽だし」


つまりは調べるなら特定の傷を探すよりも凸凹から探せば楽だって事だろう。例えにくいけれど。


「出来るよ」


「じゃあお願い」


私は彼女の妖気を探る。

犯人は彼女以外有り得ないから。







程なくして見つけた場所へ向かう。


ちなみに妹紅は里を守るとか。


という訳で二人で向かっている。


「あれは……?」


目の前で闇が渦巻いている。


「今回の犯人だね」


霊華の疑問に答える。


「もう来ちゃったのかー」


闇の中に佇む小さな影。


「何でこんな事をしたの?ルーミア」


「えっ……?ルーミアなの?神社の近くにいた?」


霊華は驚いている様だ。


「私が小妖怪だと思ったの?博麗霊華。私は陽奈に封印されていたのよ」


されていた?


見るとリボンがなくなっている。


私と同じ現象が起きているのか、封印前よりも格段に妖気が増えている。


下手な大妖怪よりもルーミアは強い。だからこそ何とか争わずに解決しなければいけない。


「どうしてしたかって?ふふっ、陽奈は変な事聞くのね。理由なんて後付け。したいからするの」


「じゃあ、私も理由なんて特に抜きで異変の解決の為にルーミアを倒す!!陽奈ちゃん、私がどれだけ成長したか見てて!」


霊華がルーミアに突撃する。


「相手にならないわ」


向かって来た霊華を寸で避け、そのまま首を掴んで持ち上げた。


「貴女は博麗の巫女と云えども所詮は人間でしかないのよ。博麗の巫女で良かったわね。命は取らないであげる」


そのまま霊華を捨てる様に投げた。


私はそれを受け止めた。


「霊華、大丈夫?」


「こほっ……、ちょっと首が痛い……かな?」


「よかった……。さてルーミア、覚悟はいい?本当は穏便に済ませたかったけど……霊華に手を出したから…………、灸を据えなきゃね。どうせ口で言ってもダメそうだし」


私はルーミアの方に向き直る。


「ええ、陽奈。私が勝ったら封印を最低でも緩めさせてもらうわよ」


出来ればするな、か……。


「断る!!」


「まあ、貴女を倒しちゃえばいいのよね」


ルーミアからさらに妖気が溢れ出す。


「封印がなくなってから妙に力が出るのよ」


「それは私も同じなんだけど……、どうやってあの封印を?」


私は不思議に思っていた。どうやったら封印を打ち破れるのか。


「ちょうど新月の日の夜に天候が悪化したおかげと偶然で、一瞬だけ完全に幻想郷から光が消えたわ。私はその時を逃さなかった。闇を最大限に利用して封印の力を全て喰らったの」


力が尽きた封印は封印ではなくなったと。


「タネ明かしは済んだし、さあ、始めましょう?」


「そうだね……。霊華、見てる?」


「うん……」


「面倒見切れないから自分の身は自分で守ってね」


「うん。陽奈ちゃん頑張って!」


「分かった、ありがとう」


私は抑えていた妖気をある程度開放する。


「準備はいいかしら?」


「そっちこそ」


互いに睨み合う。


「全てを飲み込む深淵の闇、思い知りなさい!!」


「太古からの恐怖、魂まで刻み込め!!」








バトルとは切り離しましたので少し短めに。


誰もが一度は考えるルーミアによる異変。次回もやります。


初めの文は

夜、月は明るい光を放っている。けれども、ある日、光は消え、闇が夜を照らしたのだ。

妖怪の力は月の光が輝くにつれて大きくなってゆく。しかし、光が消え、妖怪の力は衰えてしまったのだ。

そして遂には日の光までもが闇に呑まれてしまった。




陰=月光なんですけど調子を合わせる為に日光も陰にしてしまいました。

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