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明治17年の博麗大結界


区切りがいいので短めですが更新を。




原作の花映塚の時点で二回目の大結界異変で60年おきに起きるものなので、120年。ちょうど(結界を張った年を元年として)幻想郷の第百二十季なので120年前に結界が張られた事に。

そして頒布されたのは2005年の夏のコミケで、そこから120年前、1885年は明治17年になります。


意図的かと思われますね。


という事で話の名前が決定しました。




私は科学の発達に感じた危機を回避しようと、早速行動を始めた。


しかし、生憎だが私の家には必要な道具がない為に博麗神社にお世話になっている。


「あんた何を書いてるのよ。もう半年は作業してるじゃない」


霊菜が呆れながらも聞いて来た。


「ん、倫理結界を作ってる」


「はあ!?何てものを作ってるのよ」


まあ、驚くのも無理はない。

物理結界なんて可愛く見える程に倫理結界は難しい。

その中に新たな世界を構成して倫理を作り上げる事で使い方によっては完璧に遮断出来るそれは存在は知られていても誰も行う気がないからだ。

何故なら、そんなもの頻繁に作れないし、更には余程の事がない限り来世はなくなるから。広範囲において恒久的に世界を改変する事は明らかに危険な事で、無間地獄(むげんじごく)行きもあるとか。


と映姫さんから聞いた事がある。


つまりは限定的範囲で短時間ならば許される訳で、私の使う『五行封陣』は対象範囲にだけ魔法と霊術が合致するという倫理結界を用いていたりする。






さて、そんな訳で私は三年程掛けて完成させた。


簡単に説明すると結界外の非常識を結界内の常識とするものだ。


ちなみに組み込む要素に関しては紫に智音さんや幽々子などと相談し、更には映姫さんに(私がとある条件を呑む事によって)許可を貰った。


これで準備はほとんど揃った。





そんな訳でここら辺一帯(私が知らない間に『幻想郷』と呼ばれていた)を取り囲む倫理結界を張る訳だが、当然ながら反対派もいる。


まあ決定事項だし、一回張っちゃえば相当な実力がない限りは出る事も困難だ。


だいたい反対派は隔離する利点を分かっていない。


私は何よりも過去の過ちを繰り返したくない。


これから科学技術が発達するに当たって凶悪な科学兵器も開発されるだろう。


私なら大丈夫だとして例え紫や幽香であろうと耐えられない。当時の妖怪と現在の妖怪は根本的に違うから。


人間は近代化に伴って殊更に人外を退けようとするだろうから隔離、つまり一般世界から存在を消さない限りはいずれ狙われる。


そこまで考えての事だ。


ちなみに大妖怪とその一派は一部を除いて賛成派だ。

ちょっとオハナシしたけれど。


唯一、天狗の大将の天魔は酔い潰したが。





それで結界を張るのだが私には無理だ。


霊力が足りない。


そこで幻想郷随一の霊力とその制御力を持つ博麗に頼む、という紫の提案を採用した。


一応、制御は負けないと信じたいが。


しかし、当の博麗霊菜は乗り気ではなく、説得の為に様々な条件を出された。


その後の結界維持の供給源と結界の管理を博麗が一任する代わりに、結界の修復などは私と紫がする事、それから博麗神社に最低限の生活環境を整える事、その他いろいろ。


結界の修復などは作った私が適任だろうから文句はないが、生活環境とは足元すくわれたかと。


具体的には、上下水道の完備と夜の明かりの設置、それからある程度の冷暖房。


最低でもそれらが神社内に施される様に結界に組込めと言う。おかげで一年無駄にした。上下水道は組込めなかったから後になるが。


「博麗が維持するんだから名前は博麗大結界でいいわね」


「作ったのは私なんだけど……、もういいよ。これ以上何かを要求されたくないし」


私は結界を起動させる。


霊菜が起動をしないのは結界維持の力のライン接続とその他諸々の力を残す為だ。

出来る限りの効率化をしたが、それでも霊菜の霊力を殆ど奪って行くだろうから私が起動する。

私であれば妖怪だから霊力が枯渇しようとも死ぬ事はないからだ。

計算上、私の霊力でぎりぎり足りるはず。


結界の構成式を敷くのは博麗神社の地下。

博麗が管理するのだから当然なのだが、神社が龍脈(地中の気の流れの特に集中している主脈のようなもの)の上にあったのも大きな理由の一つだ。

神社の地下深くまで何か杭状のもので貫かない限りは大丈夫だろう。


「霊菜、準備はいい?」


「いつでも大丈夫よ」


私は残りの霊力を全て使って、霊菜にラインが回る様にする。


「結構……来るわね……」


霊菜には安定するまで我慢して貰わなければいけない。境界とか操っての軽減も出来ない。いくら曖昧にしようとも絶対量を変えたら失敗するし、替わる先になるであろう私はもう無力だ。結界の定義を曖昧にしたら崩れてしまう。


「頑張れ☆」


「なんか妙にむかつくわ」


「御賽銭10円」


「精一杯頑張らせて貰うわ」


明治のこの時代、10円は大金だ。


しかし、私の手持ちはそんなにない。


「出来たわよ、10円寄越しなさい」


私は50賎渡した。


「設備費差し引いておいたから」


「ふざけんじゃないわよ!」


「霊菜、ここは山の上でしょ。水はどうやって工面すると思う?私が残り少ない神力の一部を使って地下水脈を引っ張って来るの。それしか方法はないの。本来ならもっと貰いたいくらいなんだけど」


私は態度を大きくし主張させていただく。


ふざけてるのはあんただ。


「あんた神だったわけ?」


霊菜が呆気に取られた様な顔で聞いて来た。


「昔は。今は信仰はゼロだけど」


「残念ね」


嫌みっぽく言われた。


「一晩でその信仰してくれてた人たち全員が仏になったんだよ?霊菜にはこの気持ちが分かる?答えなよ!!分かるの!?分からないなら彼らを嘲笑うな!!」


「……ごめんなさい」


「分かればよろしい」


その後、私は半年かけて設備を設置したのはもはや余談だろう。






結界が無事に張られ、次にする事は反対派を何とかする事だ。


紫や幽香は殺し回っているが、そんな事したくない。

私は血生臭い事は嫌だからだ。


幽香は殺しを愉しんでいて、会った時の表情が気持ち悪い程に爽やかな笑顔だったのは覚えている。


紫は基本的にスキマに落として何かもにゅもにゅしているらしい。出て来た妖怪たちの死んだ目を見ると……、紫のスキマには死んでも入りたくはない。


私の場合、基本は説得だ。

いつかは人間に勝てなくなってしまう事を、その危険性を分かるまで語った。

証拠を見せろと言われた時にはさすがに困ったが、白玉楼で座談会みたいなのを開き実際に都さんと紅蓮に語って貰ったりもした。

けれど、どうしてもダメであった時は魂にまで恐怖感を刻み込んだ。忘れないようにしっかりじっくりと……。


そうして結界を張ってから十余年、とりあえずは騒ぎが落ち着いた。







久しぶりに白玉楼へ行った時、妖忌がいなくなっていた。


そして、妖夢が代わりに幽々子を世話していた。


「妖夢、妖忌はどこに?」


「先代は……行方を眩ませました……」


「えっ?」


「いつの間にかいなくなっていたのよ?自覚が足りないのかしらね」


「ゆ、幽々子様、それはないかと……」


「そうかしら?あ、妖夢、お茶入れて来てちょうだい」


「みょん……」


妖夢がとぼとぼと厨房へ向かって行った。


「妖夢には悪い事したわね……」


「さすがにちょっと厳しかったんじゃない?」


「そうかも知れないわ」


そう言った後、幽々子は少し声色を変え、声量を落として口を開いた。


「……実は妖忌は自分から出て行ったのよ」


「それって……?」


「自分がいては妖夢は成長出来ない。自分にも妖夢にも甘えが生じてしまう。だから自分と、何よりも妖夢の為に、と言い残して出て行ったわ。当然、私は止めたけれど、彼を引き留める事は叶わなかった……。もし、彼に会ったら伝えて欲しいのよ。私と妖夢は大丈夫、って」


しばらくして妖夢がお茶を持って来た時には私は白玉楼を発っていた。





冥界(白玉楼)へと続く階段を下っている最中に懐かしい気配を感じた。


「どこから?」


「楼からでございます。陽奈様は以前よりも可憐になられましたな」


「うん、ありがと」


白玉楼の元庭師、魂魄妖忌がそこにいた。


「でも私は成長してないし……」


「御心配なさらずに、以前よりも色々と大きくなっておられますよ」


「本当に!?」


「はい」


案外自分では気付かないものだね。さすがに数世紀で少しは成長したか。


「まあ、それで本題だけど……、妖忌は幽々子と妖夢の事を後悔してないの?」


「大丈夫です。幽々子様と妖夢を信じておりますから」


その目は強い意思の色で染められていた。


「陽奈様」


「ん?」


「幽々子お嬢様と妖夢をよろしくお願いします」


「りょーかい!」


私は背を向け、再び階段を下り始めた。


「そういえば妖忌、幽々子から伝言が……」


私が思い出して振り返ると妖忌の姿はなかった。


「存じております」


そう聞こえたのは幻聴だったのだろうか……。






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