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未確認幻想少女



さて、陰陽師として京に住むこと数年、ついに平城京は平安京へと朝廷を遷した。


今は清明さんに妹紅と一緒に指南してもらっている。


が、妹紅はどちらかというと霊力よりも妖力の扱いの方が素質があるらしく、どのような要因が妹紅に妖力を与えたかは定かではないが、清明さんに力の扱いの効率をよくする指導を受けている。


私は妖怪だから必要はないが。



私は陰陽術を教わっているが、なかなか調整が難しい。


下手に強めると相手を傷付け、弱いと効かない。そんな境界がわかりにくい。


紫がいればなぁ……。


そんな私でも一つだけ使えない系統の術があった。


お札を使う術だ。


とはいっても陣を敷いたりは出来る。


構築の式も完璧だ。


攻撃用のお札の式は妖怪に反応して展開する。


式に霊力を込めると私に攻撃が飛んできてしまう。自分の霊力で自分を傷付けてしまう。


相手に使う前に自分の手の中で展開してしまうのが原因だ。


だから私は滅法防御のみ。


攻撃は他の力を使っている。







さて、たまに有害な妖怪が歩いていないかを見回りし、妖怪と話したりして情報交換もしているのだが、どうやら正体不明な強い妖怪が、人こそ喰らわないものの何かしらの恐怖を与えているらしい。


ちなみに夜の見回りは妹紅が寝ている時間に、妖怪が謳歌出来る時間帯にしている。



さて、正体不明はさておき後者には癇癪を起こした。


それ(恐怖を与える事)は私の役割だ。


自らのプライドとの公私混同だが退治を決めた訳で、探してはいるのだが


「おどろけ〜」


なんだ、唐傘お化けか。


「おどろけ〜」


・・・。


「おどろけぇ〜(泣)」


「わー、すごいびっくりしたー(棒読み)」


「な、なんで、あちきに驚かないの?」


絡まれちゃったぜ☆


「妖力だだもれ。姿が見えてる。影に隠れて、いきなり出た方がいいよ」


「し、師匠!!」


「帰れ」






さて、茶番はおいておき、本格的に探す事にする。


まずはどのような式を構築するかを考える。


相手は正体不明な恐怖を得ている。


なら、私の専売特許な恐怖を逆探知できるのではないのだろうか。そうなると式は構築する必要はないが。



私は集中して、正体不明な恐怖の集まりを探す。




見つけた。









私はふよふよと飛んで向かいながら考えていた。


そんな感じの有名な妖怪がいた気がすると。


尻尾が蛇で頭は猿、足は狸で……みたいな伝承もあれば、頭が3つで龍の顔、足は虎で……、やら。


ただ鳴き声だけは共通して、どの動物のものとも形容し難い、おどろおどろしい声である事。


…………鵺か。


そう思っている間に目的地に着いた。









建物の屋根に黒い靄がある。


「妖怪の鵺は……あんた?」


けれど、反応がない。なんか変な声が出てるだけ。


正体不明と銘をうつのだから、ばれる恐怖も持ち合わせているはずで、私はそれをぶつけた。


「あ、女の子だったんだ」


「!!!?」


あ、反応した。


「な、なんでばれたんだ〜!!みんなに知られる前に、ここで死ね!!」


本気の殺気が私に襲い掛かる。


うーん、強いな。




知らないもの、正体の知れないものに対する恐怖というものは誰もが抱く恐怖。それ故にそれで生まれた妖怪は純粋で強大な力を持つ。


鵺もその一人。


「あんたは正体不明に自信を持っているだろうけど、その反面ばれる事を恐れている。それがばれた事の原因」


「どうやって……」


「私は恐怖を操る。ただそれだけだよ」


「わ、私だって『正体を判らなくする程度の能力』が……」


私は少し笑ってから一言。


「年の功かな?」







まずは陰陽術で縛り上げる。


清明さん直伝だ。そんな簡単に解ける訳もない。


パキン


あ、力を測り間違えた。


「何したの?」


「いやー、動けなくしようとしたけど失敗したなー、と」


私は面倒なので叩きのめす事にした。


まずは目一杯強い結界を辺りに張る。


さて……、


「あんたに本当の恐怖を見せてあげる」







私は妖力を最大まで開放する。


清明さんのリボンで目が朱くなるまでしか開放出来なかったが十分だろうか。


「私がばれるなら……」


鵺が地面に向けて無作為に蛇みたいなものを飛ばした。そして何かが浮かび上がって来た。


よく判らない、何かが。


しかし、嫌な予感がしなくもない。


それが私へと飛んで来た。


私は何となく避けると建物に当たった“それ”が判明した。


大岩。恐らく庭園にあった物だろう。


そうすると蛇みたいな物は正体を判明できなくするものか……。


と、なると


「何が飛んでくるか判らないじゃん」


「そうだよ」


ケラケラと鵺が笑う。


得体の知れないものは避けざるを得ない。


私が様々な方向で避けていると


「私を忘れてない?」


鵺が三股の槍で上から突いてきた。


私は咄嗟に威力を落とすものの刺さらない道理はない。


「くっ……痛っ」


ちょっと痛みで集中が途切れ、


ゴン


何か硬い物に衝突。


その後、次々と数多の何かが私に襲い掛かる。


“ばれる恐怖”をぶつけるも、物自体は恐怖を持たない。つまりは無駄。


1つは石、また1つは防具、また1つは剣。


ありとあらゆる物が私を殴り、刺し、貫いてゆく。


私はそのまま地面へと落ち、背中から衝突した。


私は意識が安定しない中、防御の物理的な結界を張る。


私は神力で傷を癒しながら考えた。




「一発で決めればいいんじゃね?」


私は恐怖を強めに全体に広げる。


と、鵺が怯んだ。


今だ。


威力を底上げして火属性魔法を一発。

それから木金の複合魔法で、木を出してとりあえず動きを封じた後に金属でがっちりと四肢の自由を奪った。


「さて、どうしようか……」


「や、やめろ!!来るな!!」


私はそんなものを聞く気もなくにじり寄る。


「とりあえず簡単に封印しておこうかな」


私は落ち着いて札に式を構築して霊力を込める。


「や、やめろ……、私を解放しろ……」


鵺はがたがたと震えて泣き出していた。そろそろ失禁するんじゃね?


「あんた、名前は?」


私は札を使う前に聞いておきたかった。


「ぬえ。名字なんてない」


「じゃあ、ないもの同士仲良くしない?私は陽奈、名字はない。恐怖を操る妖怪」


私は、ぬえにお札を使った。








それからぬえは私の小間使いとしておく事にした。


条件は、私がばらさない事。


妹紅は


「誰、コイツ?」


私は応じて


「見ての通り妖怪でしょ」


それもそのはず、ぬえの容姿は、ちょっと癖のある黒髪ショートに背中からは赤と青の奇妙な羽、この時代にはそぐわない黒のワンピースか、あるいはスカート。


手には三股の槍。


「私は封獣(ほうじゅう)ぬえ」


と、自己紹介する。


「名字はなかったんじゃ?」


と、私が聞くと


「お前に不本意ながらも仕える事になったんだ。人に仕える獣や妖怪を人は封獣と言うから。そんなもんでいいの、名字なんて」


成る程……、そんな手もありか。


「私は藤原妹紅だ。こんな身なりだが人間だからな」


「ふん」


ぬえは妹紅が握手の為に差し出した手をパン、と払った。








それから私と妹紅、ぬえが三人で行動するようになった。


京の人達は更に私の実力が上がったのでは、と喜んでいたが、反面、妖怪とグルなのではないか、と考える者もいた。


グルではなくて、私自身妖怪なのだけれども。


妹紅はなんだかんだ言ってぬえと仲は良い。




よく喧嘩しているが実力差の為に妹紅が殺されるが死にはしない。妹紅は薬で死なないからだ。


喧嘩する程仲が良いのか、その時以外はじゃれあって雑談しまくっているが。


まあ、妹紅に鬱憤が溜まらないはずもないのだが、妖怪退治でオーバーキルしている。


まあ、おかげで妹紅の性格は荒れていったのだが。


「妹紅、退治すべき妖怪なんて多くないんだからさ〜」


「そうだ。襲われる人間も襲う妖怪も悪いがお前は殺り過ぎだと思う」


中妖怪の死体を塵も残らず鬼火で焼き尽くした揚句、寄って来た小妖怪や中妖怪まで塵も残さないとなると………ねぇ。


実力があるのは悪くはないけど……。


「私は本当は月の野郎どもにしてやりたいんだ。でもアイツらは逃げた」


「理由になってない」


「月の野郎ども?」



私は簡単にぬえに説明した。


「うーん、私は親はいないから分からないな、その気持ちは」


「まあ、妖怪には分かりにくい感情だからね」


「お前も妖怪だろ」








こうして、ぬえは私たちにはまるい性格に、妹紅は妖怪に対しては、いや、月の民に対する恨みは残酷になっていった。




妹紅のそれは、いずれ時が解決してくれるだろうと私は信じたい。





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