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スタート
私は何故ここにいるのだろう。
どれくらい歩いたのかはわからないが、何もない道をただ歩いている。
道は大迷宮のように1メートルくらいの幅しかなく、壁は私の手が届かない高さまで続いている。空は見えるが、今にも雨が降りだしそうなくらい曇っている。
誰かに会いたい。誰でもいい。
どうしてそう思うのかはわからないが、一人でいると、自分の存在理由すら不鮮明になる。
疲労が身体だけでなく、頭にきて上手く考えられずにいるのかもしれなかった。
何度目かの十字路で、左側に曲がると人影が見えた。
私は孤独から解放されたい気持ちと、それとは別にこみ上げる感情に突き動かされて、人影に近づいていった。
その人影の顔がはっきり見える距離まで行ったとき、その人は女性であり、にこやかに微笑んでいるのがわかった。
彼女も私と同じくこの迷路で彷徨っていたのだろう。やっと同じ境遇を分かち合える仲間に出会えたのだ。
私も顔が綻んで笑顔を作ろうとしたとき、腹部に鋭い痛みを感じた。
顔を下に向けると、腹にナイフが刺さっていた。
私は作った笑顔のまま、彼女に顔を向けると、頭に強い衝撃が走った。