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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
4章 神隠し

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崩壊

 ある日、水神(みなかみ)の本当主の儀式の相談をしたあと、夢見の巫女から注意を受けた。

「なぜか見通せぬが、何やら世界に暗雲が立ち込めておる。充分用心してたもれ」

「夢見の巫女さん、ありがとう存じます」

 お互いに、己の事は見ることが出来ないので、(らん)はありがたく受け取っていた。


 それからしばらくたった暖かい晴れた日、それは起こった。


「大変だ! 外で、(おおとり)さんが襲われた!」

 店の外を掃き掃除していた鳳 仙花(おおとり せんか)が、何者かに襲われたと、助手が慌てて駆け込んできた。

「容態は? 大丈夫ですの!?」

「救急車は呼びましたが、犯人は取り逃がしました。出血が凄いです」

 鋭い刃物で切りつけられたらしい。(らん)は慌てて外に行き、傷口を押さえている助手に場所を変わって貰い、仙花(せんか)の傷口からエナジードレインをし、その傷口から命を戻した。命の容積的に、回復に使った分が消費されているようで、エナジードレインをした分より戻る量がかなり多い。(らん)は、己に貯めてある分を使い小さな光の玉を作って飲ませ、仙花(せんか)を確実に助けた。

「休息は必要ですけど、もう大丈夫ですわ」

 助手に仙花(せんか)を運んで貰い、安全な場所に身柄を移した。仙花(せんか)は、後ろから切りつけられていた。意識がないため、(らん)は犯人を聞けなかった。


 外にいる客を店内に避難させていると、また悲鳴が聞こえた。

「キャー!」

 もう1人、女性の助手が襲われた。(らん)は、仙花(せんか)と同じ対処をし、己の中の余剰分が無くなってしまった。やはり後ろから襲われていて、意識はあるが犯人を見ていない。(らん)は、患者の搬送を確認した後、急いで店に戻ろうとしたそのとき、後ろから鎌で襲われた。長い髪が一緒に切れて、バッサリ落ちた。背後を守るため、壁に寄りかかるように倒れ混む。


「あはは! 死神の癖に、鎌で襲われてやんの!」

 狂ったようにそう叫んだのは、隣の店の挨拶に来たあの男だった。倒産した逆恨みだろうか。嘘を言って品物を悪質に売り込んでいたため、女子高生たちからネットワークに晒され、人が来なくなったのだ。自業自得と言える。

 (らん)を襲って気が済んだのか、鎌を手放したところで男性の助手たちに取り押さえられた。


 皆、(らん)は大丈夫だと思っていた。力が残っていないなどと、誰も思い付かなかった。瀕死であることに気がつかなかった。


「先生、大丈夫ですか?」

 犯人を取り押さえた助手たちが、(らん)のもとに駆けつけた時、(らん)は、地面に座り込んだ体制のまま、出血多量で既に意識がなかった。

「先生?」

「先生!?」

「先生!!!」

 助手たちが呼び掛ける。


「え、とーしゅ? 何があったの? 何でとーしゅが怪我してるの!?」

 辺りに血の匂いが充満している。

「隣の店の逆恨みで他2人切りつけられて、」

「なんでとーしゅ、なんで力残してないの!?」

 出掛けていたノアールが戻ってきて、(らん)の様子を見て驚愕していた。


「僕の命を使って良いから、ブルゥ((らん))、戻ってきてー!」

 ノアールが叫ぶと、辺りが暗くなった。空が真っ暗で、物凄く冷たい風が吹いている。


「愛し子よ。我の元に」

 空から聞こえてきた声が、瀕死の(らん)を連れ去った。

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