表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
1章 ヒヤシンス
6/62

強迫

 夜香(やこう)家から、使者が来た。

 伝えられた内容は、おとなしく夜香 蘭(やこう らん)を引き渡せ。というものだったが、神風 龍一(かみかぜ りゅういち)が、うちには夜香 蘭(やこう らん)という者は居ない!と、早々に追い払ったらしい。


 そして、八仙 花(はっせん はな)飛 信子(とび のぶこ)が被害に遇い、再び使者が来た。

 神風 信子(かみかぜ のぶこ)夜香 蘭(やこう らん)である。速やかに引き渡しなさい。と。


 (らん)には内緒にしていたのだが、神風 龍一(かみかぜ りゅういち)(にしき)百合(ゆり)と話しているところを、起きてきた(らん)が聞いてしまったのだ。


「どう言うことなのですか!」

「お、起きたのか。(らん)に聞かせるつもりはなかったんだ」

「あちらの勝手な言い分です。(らん)さん、気にすることはありません」

(わたくし)のせいで、(はな)さんと(とび)さんが被害に遇われたのですね。(わたくし)、名乗り出ます」

「駄目だ、昔の事を忘れたのか? お前に酷いことをした連中だぞ? 無事に帰れるわけがない」

「そうです、(らん)さん。名乗り出てはいけません。次は、殺されるかもしれません」

 (らん)は、必死に止める神風 龍一(かみかぜ りゅういち)(にしき)百合(ゆり)を振り払えなかった。


 八仙 花(はっせん はな)が学校にこなくなり、キャンパスに一人でいる(らん)に、ヒソヒソと噂話をする人が増えてきた。


「なんでも、神風(かみかぜ)さんのせいで、八仙(はっせん)さんは、襲われたらしいわよ」

「復学できないほどの怪我なんですってね」

「よく親友面していられるわね」

「近づいたら、襲われるー」

「キャハハ」


 (らん)もその通りだと思っているので、反論もせず言われるがままになっていた。


「君たち、噂話で他人を貶めるなんて、何て品がないんだ」

 若い准教授が、(らん)を擁護したのだ。


「はーい、ごめんなさーい」

 と言って去った先で、「何あれ、ちょっと美人だからって教授たちまで(たら)し込んで」と聞こえた。


神風(かみかぜ)君、君も気にすることはない」

「はい。ありがとうございます」

 (らん)が沈んだまま返答し、准教授の男性はそれを心配そうに見送っていた。


 その翌々日だった。(らん)を庇った准教授の男性が、変死体で発見されたのだ。ミイラのように干からびていて、持ち物と、歯形で本人の特定をしたらしい。


 学校内は、大騒ぎになった。

「ちょっと、聞いたー? 神風(かみかぜ)さんの件、あれヤバイわよ。本当に呪われるのよ!」

「先日の准教授、ミイラですって、神風(かみかぜ)さんを庇ったばかりにミイラよ、ミ、イ、ラ」

「それ、なんで神風(かみかぜ)さんのせいなの?」

「不審者が、神風 信子(かみかぜ のぶこ)と、仲が良いのは誰だと聞き回ったら、いつも一緒にいた八仙 花(はっせん はな)が、行方不明になって、見つかったけど、復学不可能な怪我をおっていて、神風 信子(かみかぜ のぶこ)を庇った准教授が変死体で発見されて、実はもう1つ、神風(かみかぜ)家のお手伝いさんも、襲われたらしいのよ。これは、どう見たって神風 信子(かみかぜ のぶこ)が中心人物じゃない!」


「それ、神風(かみかぜ)さんも、被害者じゃないか?」

 正論を言う人物が現れた。

「え?」

「自身を庇った相手を襲う加害者は居ないだろう?ってことは、被害者じゃないか?」

「どっちにしても、神風 信子(かみかぜ のぶこ)に関わると危険ってことよ!」

「まあ、それはそうかもな」

 君子(くんし)危うきに近寄らず。らしい。


 そして、あからさまに回りから避けられるようになった。

 下手に関わって仕返しされるのも怖いらしく、(らん)が何かをされることはないが、まったくなにもない。居ない者扱いだ。


 (らん)は、自身が避けられることには心が折れたりはしなかったのだが、関わる人の身の危険には、心を痛めていた。


 誰もそばに寄ってこない講義の終わり、近寄ってくる人がいた。面倒だなと思い無視していると、真横まで来て耳元で囁いたのだ。

「お姉ちゃん」

 ばっと振り向き顔を見ると、それは、自分と年が変わらなく見える夜香 凛(やこう りん)だった。

「あなた、何故ここに居るの!?」


 普段声を上げない(らん)が叫んだことで、回りにいた人が振り向いた。そこには、神風 信子(かみかぜ のぶこ)に良く似た女の子が、嘲笑うかのように神風 信子(かみかぜ のぶこ)を見下ろしている情景だった。


「双子?」

「なにあれ」

「どういうこと?」


「なあ、むしろあれが犯人なんじゃないか?」

 成る程!と、回りの全員が思ったとき、夜香 凛(やこう りん)が皆の方を向いた。その目の奥に潜む狂気に、悲鳴を上げ逃げ出した。


「キャーー!」

「殺さないでー!」


 蜘蛛の子を散らすように、講義室には、(らん)たちの他、誰も居なくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ