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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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手続

 その日、(らん)は、(がもう)大臣と面会していた。


「関係者登録に、私の妻の(はな)を指定したと伺いましたが……」

「はい。(がもう) (はな)さんを、指名いたしましたわ」

「えーと、妻は何をさせられるのでしょうか?」

 (がもう)大臣が、怖々聞いてきた。

「何もして貰う予定はないですが、何かして貰わないと登録できませんか?」

 むしろ、驚かれた。

「それでは何故、指定を?」

(わたくし)も良く分かっておりませんが、(がもう)大臣はどの程度、延命や、特別治療についてご存じですか?」

「えーと、噂で聞いたことがある程度ですが、奪い取った命を分け与える方法の1つが、延命、欠損箇所の復元……、まさか出来るのですか!?」

「出来るみたいです。復帰された夢見の巫女様の目を回復させましたわ」

「あ、あれ、あれは夜香(やこう)さんが!?」

(わたくし)も、教わりながらでございました。その権利的なものを、何故一般の人に施してはいけないのかと疑問に思い、最終的に、関係者登録をすれば、特定貴族以外にも施せると、教えていただきまして、(はな)さんを指名しましたの」

「関係者登録は、連れ合いを登録するのが通常でして、」

「はい、そう伺っております。(わたくし)、当分結婚する気はございませんし、特定貴族以外の延命は不可との事で、(はな)さんが存命中の怪我の回復を申し出た次第ですの」

「そういうことですか。大変ありがたく思いますが、非公開にしておいてもよろしいでしょうか?」

「はい。変に狙われても困りますし、非公開が望ましく思いますわ」

「ありがとうございます。妻に代わり感謝いたします」

「あと、身の回りのメンバーの不具合は、(わたくし)の業務に差し障ると困りますので、適度に調整いたしますわね。うふふ」

「ん? それはどういう意味ですか?」

「いえ、なんでもございませんわ」


 助手たちも場合によっては助けると明言したのだ。(がもう)大臣は、聞かなかったことにしてくれるらしい。

 これは、(がもう)大臣の家族は、大臣本人以外、怪我から守られたも同然で、反対する理由もないし、必要もない。息子を含む助手たちの件も、(らん)は伝えたが、聞き返されたときに言い直さなかったことで、大臣は知らなかったと言えるので、不利益はないからもう良いやと考えたのだろう。


夜香(やこう)さん、どうか健やかにお過ごしください」

「はい。ありがとう存じます」


 (がもう)大臣が帰ると、心配した蒲 公英(がもう きみひで)が聞きに来た。記録係の助手すら外して貰い、話していたので、相当気になったのだろう。

「先生、父は、何しに来たんですか?」

「書類の不備を、確認にいらしたのよ」

 この説明で、間違いではない。

「事務仕事で、父が?」

 書類の不備程度なら、本来、秘書や事務の職員が来るべきである。

「貴族関連の急ぎの書類だから、部下には任せられなかったみたいですわね」

「あー、成る程」

 それなら仕方ないと納得したらしい。

 ちょっとした関係者でも、見ることが出来ない貴族関連の取り決めは、色々あるのだ。



「先生、外に烏が来ています。足に紙を巻いているので、夢見の巫女様からのお手紙ではないかと思うのですが、どうしましょう?」

 助手は烏に近寄るのが怖いらしく、(らん)に確認に来たのだ。

(わたくし)が確認に行きますわ」


 (らん)が店の外に行くと、烏が近寄ってきた。ちょこんと頭を下げたあと、片足を差し出し、「カー」と鳴いた。

「烏さん、ご苦労様」

 (らん)は手紙を外し、一欠片の胡桃(くるみ)を烏に渡した。

「カー!」

 喜んで食べている間に手紙を読み、返事を書き、再び足にむすんだ。

「烏さん、胡桃を食べ終わったら、お願いね」

「カー」

 烏は、食べきる前に残りを咥えて、飛び立っていった。


 扉の影から見ていた助手が、(らん)のそばに駆け寄ってきた。

「うー、襲われないと分かっていても、大きい烏は怖いです」

「苦手なものは人それぞれだから、無理しなくて良いわ」

 そう発言しながら(らん)は、烏を怖いと思ったことがないなと思い返した。


「所で、何のご用だったのですか?」

「夢見の巫女さんから、(めん)の用意があるかの確認でしたわ」

「有るんですか?」

「黒猫の面が、屋敷にいくつかあるので、ご心配なさらずにと返しておいたわ」

 (らん)の発言に、何か思い出したらしい。

「先生が、海外から招かれたときに、黒猫の半面を着けていたって、公英(きみひで)が話してました!」

「そんなこともあったわね」


 次の予約客が来て、(らん)は店に戻った。フェイスベールをつけ席に着くと、30代に見える男性客の第一声がこれだった。

夜香(やこう)先生、お綺麗なんですね」

「え?」

「あ、すみません。不躾でした。初めて素顔を拝見したもので」

「ありがとう存じます。(わたくし)の写真は、店のパンフレットにもございますので、少し驚きましたの」

「パンフレットとかは、加工写真の人もいるので、あまり信用していませんでした」

 加工していなくても、若い頃の写真の可能性もある。

「あら、そういうこともございますの?」

「ええ、お見合いとか、親が来たのか?と思うようなこともありますよ」

「そんなに違いますの?」

「ほとんどの人は、ちゃんとご自分の写真なんですが、加工しすぎて、原型が残っていない人とか、たまにいるんです」

 知らない人と出会うための写真であるなら、違いがありすぎると、意味を成さない気がする。


「ま、その話は置いといて、本題を話します。私は隣に店を出す予定をしています。こちらでは、占いと喫茶と伺っています。うちはインテリア雑貨の店なので、競合することはないと思いますので、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

歴史に名を残すような商売人になると語っていた。

 どこかの店舗の倉庫だったお隣が、インテリア雑貨の店になるらしい。明日から改装をするため、挨拶に来たようだった。


「こんな町外れにインテリア雑貨の店を開いて、客来るんですかね?」

「不思議ですわね」

 (らん)は、回りに住宅や店舗がないからこそ、この場を選んだので、確かに不思議な選択だ。この店の付近は、駅回りの店舗の倉庫や、小さい工場などが多く、廃工場もあり、夜は割りと不気味な場所なのだ。少し離れたところに自然公園があるが、そちらの方がよほど人の流れがあり、賑わうと思われる。

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