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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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水神

夜香(やこう)さん、100年っていくらですか?」

 水神(みなかみ)から質問された。

「10億9575万円ですわ。買取の基本金額の3倍ですわね」

 光の玉の価格を聞かれたのだ。

「あれ? 夢見の巫女様は、5年分で60億支払ったって聞いたけど、何か違うんですか?」

「純粋な光の玉は、この価格です。夢見の巫女様のは、治療を伴うので、約1割増しで、1つ12億円頂きました」

「治療!?」

(わたくし)も存じ上げませんでしたが、部位に特化した光の玉を作ると、元有った機能であれば、復元できるようでございます」

「それは凄い。凄いけど、価格も凄い」

 老化を戻すのだから、他の部位も戻ると考えれば分かりやすい。


水神(みなかみ)さん、本当主には、なられたのでしょうか?」

 見た目が全くかわりなく見える。

「いや、色々準備が複雑で、まだ儀式を行うに至っていないんだよ」

「複雑ですの?」

「分かりやすく言えば、清い水の湧く場所の確保、禁足地が望ましくて、他にも、用意するものが揃えられなくてね」

「何が揃えられないのでございますか?」

 手伝えるものならと、(らん)は聞いてみた。

「器具や祭具を作れる職人が減っているから、頼んですぐ出来上がるというわけにはいかなくてね」

 祭具の製作では手伝う所がない。

「大変なのでございますね」


夜香(やこう)さんは、大変ではなかったの?」

(わたくし)は、望んで本当主になったわけではございませんので、(わたくし)は準備をしておりませんの」

「あー、そうでした。思い出させてしまって、ごめんなさい」

 (らん)は、儀式で大切な人を亡くしている。

「いえ、大丈夫ですわ。もう、30年以上も前ですし」

 (らん)は、少し遠い目をした。

「宣言しておいて格好悪いんだけど、そんな訳ですぐには無理そうです」

「どうか、ご無理なさらずにお進めくださいね」

「ありがとう」


「ここに居ったか」

 夢見の巫女が訪ねてきた。

「いらっしゃいませ」

「今日は、ケーキは無いのかの?」

 外の貼り紙を見たのだろう。

「手作りではございませんが、同じレシピのプロが作ったものがございます。先日のお祝いのケーキと同じお店でございます」

「なら、それを全種類持て来てたもれ」

「かしこまりました」

 (らん)が返事をした頃には、助手がトレーに全種類のケーキを持って後ろに立っていた。いつものことらしい。

「お飲み物はどうされますか?」

「煎茶はあるかの?」

「はい。ご用意いたします」

 (らん)は返事をしただけで、全て助手が用意してくれた。


「夢見の巫女様、いつもそんなにたくさん食べて、よく太りませんね」

「何を言っておる。(わらわ)は頭脳労働ゆえ、カロリーが足りないのじゃ。そなたももっと働くが良い」

 女性に不用意な質問をした水神(みなかみ)が、夢見の巫女の反撃を食らっていた。


「僕も、もっと働きたいんですが、祭具がまだ出来上がらないんですよ」

 しかし、本気の返答をしていた。

「足りない物は何じゃ?」

「新しい神の像と、巫女の鈴と、祭壇と」

「何じゃ、何も無いではないか。以前使ったものは無いのか?」

「そりゃそうですよ。もう、しばらく本当主になる人はいなかったんですから、何も残っていないんですよ」

「成る程の。巫女の鈴は、貸し出しても良いぞ」

「本当ですか!? あれ、儀式の時にしか使わないから、借りられるなら助かります!」

「巫女はどうするのじゃ?」

「今、心当たりを当たっています。血族に女性が少なくて、そろそろ他貴族に声をかけようかと考えていました」

「あれじゃろ? 血族なら年齢は問わないが、他貴族だと、自分より年上に限るじゃろ?」

「え、そうなんですか?」

「なんだ知らぬのか。(わらわ)が手伝うか?」

「本当ですか!? ありがとうございます! これで、あと1人探せば済む!」


「その、巫女様とは、何をするのですか?」

 (らん)が尋ねた。

「簡単に言えば、鈴を振って、神の降臨を後押しするんです」

(わたくし)にできるものなら、お手伝いいたしましょうか?」

「良いんですか!? 現本当主2人を巫女様に儀式をするなんて、物凄く豪華!」

「もう神主役も、ホテル王か、観測者を呼ぶと良かろう」

 本当に声をかけてみたが、ホテル王からは、成り立てで忙しくて力になれないと断られ、観測者には、業務に差し障ると断られていた。

 ちなみに通信方法は、夢見の巫女が烏を呼ぼうとしたので、水神(みなかみ)が断り、直接電話をかけたのだ。


「その、通信機を貸すのじゃ」

「あ、はい」

 水神(みなかみ)が、夢見の巫女にスマートフォンを差し出した。

「観測者よ。儀式の巫女は、(わらわ)と、碧眼の黒猫が担当するぞ。来なくて良いのか?」

「なんだって!」

 横にいる(らん)にまで、電話の向こうの観測者の声が聞こえた。

「そうであろう。では、頼んだ」

 夢見の巫女が、スマートフォンを水神(みなかみ)に返した。

「あれ、切れてる」

「観測者は、了承済みじゃ」

「夢見の巫女様ありがとうございます。夜香(やこう)さん、実施日は満月の日なので、決まったら連絡します」

 (らん)のお店がお休みの日に儀式をするらしいので、(らん)は安心した。


 コンコンコン。

「先生、フリーのお客様がお見えです」

 助手が呼びに来て、(らん)は、退席した。

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