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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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騒動

「あの、もしかして、かぐつち様ですか?」

 喫茶の客が、かぐつちに気がついたらしく、話しかけていた。

「はい。現かぐつちです」

「失礼でなければ、一緒に写真を撮って貰えませんか?」

「構いませんよ」

 その場には、(らん)、夢見の巫女、水神(みなかみ)もいたが、その客の認識できる相手は、かぐつちだけだったようだ。

 客は2~3枚の写真を撮り、お礼を言って帰っていった。


夜香(やこう)さん、混んできたから、我々は個室に移動しましょうか?」

「ありがとう存じます」

 水神(みなかみ)の提案で、3人は個室に移った。


 (らん)は仕事に戻ったが、その後も、かぐつちを訪ねてくる客が数名来たらしい。


 受付や記録係の助手がランチで外しても、配膳を担当する助手たちは店に残っている。12時~15時の買い取りの時間だけ、屋敷から連れてきた黒猫たちも受付を担当しているが、なんとノアールも写真を頼まれたそうで、ブランは苦笑いし、ノアールはかなり困っていた。



 仕事終わりに、全員に集まってもらった。

「皆さんも、お写真を頼まれることがございますの?」

 (らん)の質問に、助手たちが答える。

公英(きみひで)が、よく頼まれてますよ」

 蒲 公英(がもう きみひで)は今日来ていないが、女性に人気があるらしい。

「先生の写真もよく頼まれますが、全て断っております」

「ありがとう存じます」

 (らん)は、初めて聞く情報に少し驚いた。

「本人が率先して写りたいならともかく、基本的にはお断りをお願いします。かぐつちさんの場合も、ご本人が直接頼まれた場合以外お断りなさってください」

 ノアールがホッとした顔をしていた。断るのに苦労していたらしい。


 (らん)も衣装から着替え、帰るため店を出たところで、突進してきた少女を見つけ、(らん)はとっさに相手を眠らせた。カッターナイフのような刃物を持っていたのだ。

「なんだか(わたくし)は刃物で狙われる運命なのかしら?」

 (らん)の腕には、ぐったりした女性がいる。

「先生、大丈夫なんですか!?」

「とーしゅ、大丈夫?」

「当主、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですわ。こういうの初めてではないですし、とりあえず、この女性はどうしましょう?」

「もう連絡しました。すぐ、人を寄越してくれるそうです」

 頼りになる助手たちが、すぐに対応してくれたらしい。


 1度戸締まりした店を開け、眠っている女性は、助手が椅子に座らせ、後ろ手に縛って椅子に繋いでおいた。


 少し待つと、室長が黒塗りの車で現れた。今日も男装が凛々(りり)しい

夜香(やこう)さん、ご無事ですか?」

「ええ、(わたくし)はなんともございませんわ」

 すぐに目を覚ました女性は、拘束されていることを知って暴れだした。

「殺してやるんだ! そうすれば戻ってくるはずなんだ!」

 (らん)は、全ての人から庇われ、室長が女性に質問した。すごくイケメンボイスだ。

「どうしてこうなったのか、答えてくれるかな?」

「あなたは誰?」

 室長のイケメンぶりに、おとなしくなった女性の頬が赤くなっている。

「私は、政府の役人だよ」

「政府の?」

「君は、ここがどこだか知らないのかい?」

「どこって、私の彼を誘惑した女がいる店、そう、あの女はどこなの?」

「君の彼は、何歳だい?」

「私と同じ17歳よ」

「この店の店主の年齢を知らないのかい?」

「店主?」

夜香(やこう)さん、少しこちらに」

「はい」

 (らん)が見える場所に行くと、再び暴れだした。

「この女がぁ!!」

 しばらく騒いだあと、暴れても椅子から動けないので、少しおとなしくなった。


(わたくし)、あなたのお母様と同じくらいか、少し年上でしてよ?」

「はぁ?」

「親子以上に離れた17歳の男性に、全く興味を持てませんわ」

「え? じゃあ、なんで」

「どなたか、腕の拘束を解いて差し上げて」

 助手が、縄をほどいた。

「そもそもこの店は、学生も未成年者も立ち入り禁止でしてよ。出会う機会すらございませんわ」

「だって、写真を持ってて、俺の彼女って」

(わたくし)、お付き合いしている方はおりませんわ。写真と言うのは、(わたくし)のプロフィール写真以外、盗撮でしてよ」

 盗撮と聞いて、思い当たることがあったらしい。

「確かに、こちらを見ている写真はなかったかも」

「お分かりいただけたかしら?」

 相手がうなだれたので、(らん)は背を向けてしまった。


 バシッ!という音と共に、「ぎゃ!」と、短い悲鳴が聞こえた。慌てて(らん)は振り返る。

 先程の女性が、椅子の前に倒れ込んでいた。

「何がございましたの?」

 室長は、苦笑いして何も答えない。が、一部始終を見ていた助手が、あわわわと狼狽えている。

「教えてくださるかしら?」

「はい。先生が後ろを向いたとたん、刃物を構えて立ち上がったんです、そして先生に飛びかかろうとしたところで、政府の方が、電撃魔法みたいな攻撃を!!」

 どういうこと? と皆が思っていた。

「とーしゅ、この人、赤の(いかづち)だよ」

「え、そうなのでございますか!?」

 ノアールは、気がついていたらしい。助手共々、(らん)も驚いた。


 ほぼ非公表の貴族、誰に聞いても会ったことがないと言っていたが、良く考えると、貴族の集まりに2回とも居た。紹介されたのは屋敷に来たときだが、そのときに黒猫たちは気がついたらしい。

「黒猫さんたちにバレていたなら、仕方ないですね。改めまして。私、赤の(いかづち)です。政府の役人もやっております」

「ご存じの方もいらしたのでしょうか?」

「観測者と夢見の巫女様はご存じです。夜香(やこう)さん、本当に、無断では見ないのですね」

「キリがございませんからね。それよりも、助けてくださり、ありがとう存じます」

 (らん)を助けるために、隠していた正体が知れてしまったのだ。

「皆さん、今見た事は、ご内聞願います」

 (らん)は、助手たちに声をかけた。

「はい!勿論です!」

 助手たちが了承した。

夜香(やこう)さん、ありがとう」

「いえ、こちらこそ、ありがとう存じます」


 倒れた女性は、室長としての部下たちが、担架に載せ回収していった。軽い電気ショックなので、そのうち目覚めるそうだ。罪状としては軽くなく、2度にわたる殺人未遂と、貴族への反逆罪と、公務執行妨害らしい。(らん)が許しても、見ていた人が多すぎて、軽くても少年院送致だろうと言っていた。

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