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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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49/62

通訳

 動物の耳(アニマルイヤー)経由で、特殊な仕事の依頼があった。午前中の受付に、わざわざ来たのだ。

夜香(やこう)さん、申し訳ないが、手伝ってもらえないだろうか?」

(わたくし)で役に立てますの?」

「むしろ、夜香(やこう)さん以外には無理だと思うんだ」


 その日の夜、とある場所に呼ばれ、(らん)とノアールはその場に来た。ブランは腰が引けていたので、(らん)の一存で車に置いてきた。運転手も車で待っている。

 そう、ここは夜の動物園だ。

夜香(やこう)さん、本当にありがとう。本当主になれば大型の動物の言葉もわかるんだけど、この歳からは無謀でね」

 仮当主と本当主には、能力に明確な差があるのねぇと、(らん)は呑気に考えていた。

(わたくし)は、何をすればよろしいのかしら?」

「虎が、ドクターを拒否していてね。その理由を知りたいんだ」

 虎が拒否する理由? それは、どうやって知れば良いの? まさかと思い、(らん)は尋ねた。

「虎に聞くんですの?」

「そこは、任せる」

 わりと無謀な感じの依頼だった。本当に、(らん)頼りらしい。


「とーしゅ、大丈夫ー?」

 (らん)がなんとも言えない顔をしていると、ノアールが心配して声をかけてきた。

「試したことがないから、なんとも言えませんわ」

 ネコ科の動物が(らん)の言うことを聞くのと、(らん)が動物の言葉がわかるのとは、意味が違う。

 とりあえず、該当の虎の前まで来た。柵越しに虎を見ると、チラッと見てそっぽを向いたあと、勢い良く振り向いて、(らん)をガン見してきた。

「ガーオ、ガオガーオ」

 うん。やっぱり何言ってるかわからない。(らん)は、困った。


「えーとね、『何てのを連れてきたんだ』かな?」

 ノアールが通訳してくれた。

「言葉がわかりますの?」

「何となくねー。とーしゅの言葉は、向こうには伝わると思うよ」

「ドクターを拒否しているのはなぜですか?」

「ガゥーン、ガウガウ」

「『変な匂いがするんだ』かな」

「匂いが変ですの? 少し、あなたに触れてもよろしいかしら?」

「ガーウ」

「『どうぞ』だって」


 檻の間から片足を2cmくらいムニッとはみ出るように檻に押し付けて出してくれたので、(らん)はその足を触ってみた。

 すると虎の申し出通り、ドクターから嫌な匂いがして、虎が避けている映像が見えた。

「担当のドクターを呼んでくださる?」

 動物の耳(アニマルイヤー)が声をかけ、係員が呼んできてくれた。


「お待たせいたしました。私が担当の獣医です」

 予想より若い男性が現れた。虎の視界から見るのとでは、人の年齢が違って見えるらしい。

「あなたに触れ、記憶を見てもよろしいかしら?」

「それで解決するなら、いくらでもどうぞ」

 潔く許可してくれたので、(らん)は、手に触れてみた。

 虎から嫌われるような問題行動は見られなかったが、毎朝体調が悪そうにしているのが気にかかった。

「どこか、お体の具合が悪いということはございませんか? (わたくし)は医師ではないため、詳しい病気はわかりかねますが、虎さんが、ドクターから変な匂いがすると訴えています」

「え? 匂い?」

 何か思い付いたのか、(らん)と、虎にお礼を言い、去ってしまった。


「あれで良かったかしら?」

 仕方なく、(らん)は虎に尋ねてみた。

「ガウカーウ」

「『ありがとう』かな」

 虎は尻尾を揺らし、喜んでいるようだった。



 後日、ドクターに早期のガンが見つかったと伝えられ、動物の耳(アニマルイヤー)経由で、30万円の振り込みがあった。(らん)はご褒美と言って、ノアールに好物をたくさん作って渡したのだった。

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