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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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勉強

「先生、顔見知りだとおっしゃる方が見えています」

 助手が報告してきた。

「女性かしら? 男性かしら?」

「高齢の男性に見えます」

「お通ししてください」

「かしこまりました」


 そして、若い女性に肩を借りながら入室してきたのは、貴族交流会で、(らん)に主催者を引き継いでくれと言っていた、白ひげの老人だった。肩を貸していた若い女性は、外で待っていると言って、退室していった。ケーキセットを食べるらしい。


「交流会ぶりでございますね」

「息災であったかね?」

「はい。ありがとう存じます」

「今日は、礼に来た。夢見の巫女の復活を助けてくれて、ありがとうございました。これで、心置きなくあの世に行ける」

「関係者なのでございますか?」

「聞いていないのか? 儂は、代理ぞ」

「申し訳ございません。色々見ようと思えば見えてしまうので、見ないようにしているのですが、夜香(やこう)家に詳しい方は、(わたくし)が見えているからと説明を省く方が多いのです」

「成る程、理解した。儂の家系は、夢見の巫女を排出する家系でな。当主は、儂の数代前に当たる夢見の巫女なのだが、封印状態の間、儂が現仮当主でな。本当主の復活をもって、儂の仮当主は、お役御免となるのじゃ」

「息災で何よりでございます。本当に……」

 夜香(やこう)家は、本当主が誕生したら、仮当主は滅せられるため、無事なお役御免を心から安堵した言葉だった。

 (らん)の言葉に、(らん)の心情を察してくれたらしい。


「少し、儂が知っていることだけでも話すとしよう」

「ありがとう存じます」

 夢見の巫女と碧眼の黒猫は、協力関係にあり、昔から交流があった。(らん)の名前は、夢見の巫女の予言による命名で、(らん)の両親は、それに従ったのだろうということらしい。

 また、双子は不吉とされた時代の名残で、夜子(よるこ)は幼い頃に養子に出されたが、不遇な扱いを受けて育ち、姉の存在を恨んでいたらしい。

 そして、ろくでなしと一緒になり、夜香(やこう)家乗っ取りをたくらんだようだ。しかし、子を孕めなかった夜子(よるこ)は、(りん)を我が子として可愛がり、改心したかのように見えていたため、貴族たちも静観していたそうだ。

「叔母の行動が少しだけ理解できました」

 幼い(りん)の妹という立場に、叔母は同情したのかもしれないと、(らん)は感じた。


「それとな、名前からもわかる通り、巫女なのじゃ。碧眼の黒猫と、翠眼(すいがん)の女王は、神の子孫。夢見の巫女は神の使い。その他の貴族は、神から力を授かった、人の能力者じゃ。本来翠眼(すいがん)の女王の方が夢見の巫女より格が上で、貴族交流会の主催を任せる立場だが、何しろ出歩くのが嫌いらしいからの。貴族交流会の主催は、碧眼の黒猫と夢見の巫女で、引き受けているのじゃ」

「そうだったのでございますね。区分を教えてくださり、ありがとう存じます。とても勉強になりました」


 (らん)が引き受けるまで、碧眼の黒猫がおらず、夢見の巫女も仮当主で、早くどちらかが復活しないかと待ち望んでいたらしい。

「少し質問してもよろしいかしら?」

「何じゃね?」

「夢見の巫女様の仮当主様は、何かしらの能力がおありなのでございますか?」

「仮当主は、正式には巫女守り(みこもり)と言うんじゃ。簡単な予言を定期的に発表するが、これは、己を封印する前の本当主が残していったものを、決められた時期に発表しているに過ぎないな。まあ、仮当主の登録をした者しか、封印されている予言を取り出すことは出来ないので、それを能力というなら能力かもしれんな」

 巫女守り(みこもり)なら連絡先一覧に名前があったのだ。

「ありがとう存じます。使役状態の動物などは、ございますか?」

「本当に、何も知らないのじゃな。(からす)が、烏から挨拶されたことはないかね?」

「はい。目が合うと、頭をちょこんと下げてから羽ばたいていきます」

「ちゃんと挨拶をしているようで良かった。使役(しえき)ではなく、仲間のようなものじゃがな」

「そうだったのですね。怖がられているのだと、少し残念に思っておりましたの」

「怖がるとは少し違うな。敬意を払って、近付かないのじゃろう」


 色々と教えてもらい、(らん)はとても勉強になった。

「色々と教えてくださって、本当にありがとう存じます」

「こちらこそ、予定より早く夢見の巫女が復活して、仮当主を継がせること無く済み、感謝しておるのじゃ」

「仮当主を継ぐのは、大変なのでございますか?」

「試練はあるな。俗世とは切り離されるゆえ、若い者には辛かろう」

 何かを思い出したのか、少し寂しそうな表情をしていた。

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