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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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復帰

 蒲 公英(がもう きみひで)が、助手として復帰してきた。かなり長い再研修を受けさせられたらしく、暫くはキリッとしていたが、だんだん以前のように、人懐っこいキャラクターに戻っていった。今日は休みだが、週5日出勤している。


「先生、今日のおやつはなんですか?」

 本日の記録係の助手が、声をかけてきた。

「冷蔵庫に、メロンのゼリーを入れてあるので、皆さんでどうぞ」

「ありがとうございます!」

 あまりに皆がおやつを楽しみにするので、ほとんど毎日、(らん)がおやつを自作して持ち込んでいる。少し多めに持ち込み、来客などがなければ、じゃんけんなどで決めた人が残りを持ち帰る取り決めらしい。今日のメロンゼリーは、上部がゼリー、下部がムースになっていて、飾りに小さなメロンがのっている。


「先生、まだ時間外ですが、面会希望です」

 受付担当の助手が、報告してきた。

「お通ししてください」

 営業開始前に、鳳 仙花(おおとり せんか)が挨拶に来たのだ。蒲 公英(がもう きみひで)が付き添ってきた。


「ご無沙汰しております。あの、私の復帰について、先生が許可なさっているとうかがったのですが、本当でしょうか?」

「本当ですわ。立場上、来て欲しいと願い出ることはできませんが、断ることはできますの。(わたくし)的に、仕事が出来る方は、大歓迎なのですわ」

 つまり、嫌ならちゃんと断るけど、来てくれと言い出すことは出来ないと立場と気持ちを表した。

 (らん)の言葉に、仙花(せんか)がポロポロと涙を流し泣き出した。

「あんなことがあったのに、あんなことをしたのに、」

「あの時点では、あなたは確信犯だったのだから、仕方がないわ。今は考えを改めたのでしょう?」

 本人は、それが正しいと信じていたのだから、仕方がないと(らん)は思っている。尊敬する父親からの洗脳だったのだ。子は親に逆らえないのは、(りん)の件で身に染みている。

「はい。父のことは、今でも尊敬してはおりますが、全てが正しいわけではなかったと、兄共々反省しております。母の言葉で目が覚めました。家族を諦めずにいてくれた母に、皆感謝しております」

 当の父親は、己は為政者には向いていなかったと言って、地域に根差した奉仕活動をしているらしい。(おおとり)家は、特に働かなくても困らない資産があるらしく、暫くは奉仕活動に専念し、もう少し年を取ったら、田舎で畑を耕しながら余生を送る予定なのだとか。


「落ち着いたようで良かったわ。せっかく来たのだから、よろしければ、おやつをどうぞ」

 仙花(せんか)の後ろに、お茶とメロンゼリーを持って、助手が立っていた。(らん)にはお茶だけ提供された。

「あら、美味しそうですね。ありがとうございます」

 1口食べて美味しい笑顔を見せ、2口食べて、「美味しい」と言葉にし、3口食べたところで質問してきた。

「こちら、どちらで購入されたのでしょうか?」

(わたくし)が、作りましたわ」

「え? 先生、お菓子作れるんですか!?」

「ええ、まあ」

 仙花(せんか)は、ゼリーを持ってきた助手をみた。

「先生が、ほとんど毎日違うお菓子を作って持ってきてくれるんだよ!」

 助手は、自慢げに話していた。

 公英(きみひで)も、頷いている。

「先生、凄いですね。買って来た物かと思いました」

「中高生の頃に、本職の方に習ったので、むしろ家庭的なおやつはわからなかったりするわ」

「家庭的なおやつ、牛乳混ぜるだけのデザートとか、アルミ製のフライパンつきのポップコーンなら作って食べました。調理場には入らせて貰えなかったので、未だに料理はからっきしです」

 鳳 仙花(おおとり せんか)も、上流階級のお嬢様なので、一般人とは違うらしい。

「お嬢様2人がいくら話しても、一般家庭のおやつは出てこないと思います」

 助手が話しに割り込んできた。なんなら公英(きみひで)も良いところの出なので、お嬢様と変わらないだろう。

「子供の頃、どんなおやつを食べたんですか?」

「どの様な物を召し上がっていらしたの?」

 仙花(せんか)(らん)が尋ねた。

「市販のお菓子以外、食べたことありません! 手作りだと、お婆ちゃんが作るおはぎくらいで、普段は主に、駄菓子と呼ばれるものを食べてました」

「どの様なものですの?」

「説明するのは難しいので、今度買って持ってきます」

「楽しみですわ」

「私も食べてみたい」

 話がまとまったところで、時間になり、お店を開店させた。


 仙花(せんか)には、帰る前に制服になるシャツの生地を選んで貰った。公英(きみひで)と一緒に帰っていった。



 今日も、貴族の集まりに来なかった貴族家当主が、挨拶に来た。皆友好的で、(らん)は少し不思議だった。神風(かみかぜ)家にいた頃に習った貴族たちと、あまりに印象が違うのだ。貴族外から見た印象が悪いからこそ、平和的に仲良くしているのかしら?と、(らん)は考えていた。


 実のところ、恐れ敬われているのは確かではあるが、一生関わらない人の方が多いため、噂が一人歩きしている部分が大きいのだ。貴族から見捨てられるならともかく、反撃に出られたら一般人には勝ち目はないので、かかわり合いたくないと考える人が一番多いのである。

確信犯(かくしんはん)

政治的・思想的、又は、宗教的信念に発して、それが(法的に罪になるとしても)正しい事だと確信して行う犯罪。

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