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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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37/62

観測

「お初にお目にかかります。観測者です」

 貴族の交流会に参加しなかった、名前の上がった相手が訪ねてきた。

「初めまして。夜香 蘭(やこう らん)ですわ」

「困っていることはありませんか?」

(わたくし)、何を困っているかが、わかりませんわ」

「学習不足には、困っていませんか?」

「困ってはおりませんが、確かに貴族の常識は存じ上げませんわね」

「何か困り事があったら、どうぞ頼ってください」

「ありがとう存じます」

「今日はそれだけです」

「他にご用は無いのですか?」

「ええ、ホテル王と、翠眼(すいがん)の女王が来たでしょう?」

 植物育成の女性は、翠眼(すいがん)の女王と呼ぶらしい。

「えーと、その肩書きは、(わたくし)にもございますの?」

「え、あ、ご存じ無いのなら、」

「うふふふふ。存じ上げませんが、死神とかその辺でしょうか?」

 走馬灯のような物を見て、命を刈ることが出来る存在は、他に死神くらいしか思い付かない。

「あー、えーと、悪口で言う人は、そう呼びますが、本人が名乗るときは、ブラックキャットか、碧眼(へきがん)の黒猫と名乗っていましたよ」


 ━━━━━━━━━━━━━━

 黒猫に変身できるのでしょう?

 ━━━━━━━━━━━━━━


 声に出さず、手に持っている小型の電子機器に、表示して見せてきた。記録係からは見えないように配慮してくれたらしい。


「ありがとう存じます。これからは、そう名乗ることといたします」

 悪口では、死神と呼ばれているらしい。悪魔や化物よりはマシかな?と(らん)は思ったのだった。


「ところで、ホテル王さんから旅行券を貰いませんでしたか? そちらを使って旅行をする際には、事前に行き先をご登録願います」

「登録ですの?」

「こちらは、……助手の方がたくさんいらっしゃるようなので、声をかけておけば良いと思います」

 監視と言いそうになり、言葉を飲み込んで、助手と言い直したらしい。

「それをしないと、どうなりますの?」

「私がフルで働くことになります」

「え?」

「私が休日返上で、働かなければいけなくなります」

 余計な仕事を増やすなと言いたかったらしい。

「あ、観測者さんですものね。わかりましたわ。必ず、事前にどなたかにはお伝えいたしますわ」

「よろしくお願いします」


「ところで、少しうかがってもよろしくて?」

「なんでしょう? わかることなら答えますよ」

(わたくし)のことを認識したのは、どうしてですの?」

「説明が難しいのですが、夜香(やこう)さんのお屋敷にある、黄色い光が、青い光に変わったのを観測したのであって、夜香 凛(やこう りん)さんから、夜香 蘭(やこう らん)さんに変わったことを知ったわけではありません。当初は、夜香(やこう)籍を抜けているはずの、(りん)さんの保護者と名乗っていた前当主のご姉妹が、継いだのかと考えていました。りんさんは、明らかに未成年でしたからね」

 どの程度の把握なのだろうと、(らん)は疑問に思っていたのだ。思いの外詳しく説明され、少し驚いた。

「ありがとう存じます。とても不思議に思っておりました。えーと、未成年者は、本当主にはなれませんの?」

「たしか、夜香(やこう)さんのところだと、15歳以上だったと思います。私の能力は、色の違う光の玉のように見えて、貴族家当主の居場所を地図上に把握できますが、常に見ているわけではないので、定期的に観測した情報を機関に伝えています。夜香(やこう)さんは、青い光を纏った玉に見えます。ホテル王は、今だと、まだらに金色に輝く茶色っぽい玉、翠眼(すいがん)の女王は、黄緑色の輝く玉です。亡くなると、光を失います」

「ありがとう存じます。とてもわかりやすくご説明くださり、感謝いたします」


 観測者は、連絡先一覧が書いてある紙を、隠すことなく置いて帰っていった。貴族名簿らしい。

「これをしまっておいてちょうだい」

「かしこまりました。当主、複製しておきますか?」

「あ、そうね。なくさないように、コピーもお願いするわね」

 次回の貴族交流会の時に早速使用しようと、少しうきうきするのだった。


「先生、そちらの紙は見せて貰えますか?」

「構わないと思うけど、貴族の連絡先が書いてあるだけですわ」

「あー、では、書き残さないので、黙視だけさせてください」

「ええ、どうぞ」

 その紙を見ながら、助手が発言した。

「先生、そういえば、公英(きみひで)の再教育プログラムが、終わったらしいですよ」

 蒲 公英(がもう きみひで)は、再びこの占いの館に勤めるために父親から出された条件で、教育プログラムを受けることになったらしく、暫く姿を見ていない。

「結構本格的な再教育でしたのね」

「成績優秀だと飛ばせる行程も、全て飛ばせなかったらしいです」

 道理で時間がかかるはずである。(らん)も、公英(きみひで)が復帰するまでは、母親の(はな)に会わない方が良いだろうと考え、お誘いを断り続けている。そしてふと思ったのだ。

「それは、鳳 仙花(おおとり せんか)さんも受けるのかしら?」

「え、先生、先生側から見て、それは許容できるんですか?」

 状況は正しく把握しているらしい。

「別に構わないですわよ?」

(おおとり)さんって、仕事は物凄く出来るから、復帰してくれるならありがたいなぁ」

(わたくし)から願い出ることはできませんが、本人に復帰の意思があるなら、歓迎いたしますわ」

 助手は喜んで、雇い主に報告をしていた。

日間集計は、時の運みたいですね。

6 位 [日間]ホラー〔文芸〕 - 連載中


皆様、いつもありがとうございます。

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