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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
3章 貴族交流

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制服

「出来ましてよ」

「え?」

「制服を作りましてよ」

「えぇー!! まだ1月(ひとつき)くらいしか経って無いですよ?」

 助手12名、屋敷の者4名の、シャツ1人2~3着、ズポンやワンピース2~3着を作ったと言うのだ。合計約80着。

「ミシンですので、カットしてしまえば、早いのですわ」

 ほとんどの人がMかLサイズを指定してきたので、カットもまとめて早かった。


 週1~2日くらい来る人と、4~5日来る人がいて、前者が2着ずつ、後者が3着ずつだ。「僕もワンピース頼んで良いですか?」と聞いてきた男性に、「欲しいのでしたら構いませんわ」と(らん)が答えた為、女装して着るつもりらしい。受付には女性が居た方が、始めての人は入って来やすいと力説していた。女装も女性に入るんだろうか?

 誰かの押し付けではなく、本人の希望なので、(らん)は好きにさせている。痩せ型の瓜実顔(うりざねがお)で色白なので、化粧したら、映えそうではある。


「お名前は、ヨーク部分の内側に刺繍してございます、着用前なら見えますので、間違えることもないですわね」

「1日何着作ったんですか?」

「毎日2~3着でしてよ。先日のお休みの日に、大分作りましたわね」

 休みはこの期間に3回有り、最初の休みはアンケートを集めた翌日だったので、布の裁断にあて、その日からすぐに作り始めたのだ。


「先生、中にタンクトップを着て、ボタンを開けていても良いですか?」

「だらしなく見えない程度でしたら、構いませんわ」

 すっかり南国ムードになり、店内が華やかになった。スーツやジャケットの助手ばかりの中、(らん)は1人で派手だったので、これで少し浮かなくなるかもしれない。


 (らん)に同行してお店まで来る屋敷の者たちは、(らん)の手作りの服を貰えるとあって、ちょっとした争奪戦があったようで、普段ついてくることが多い、指導役と、自由な黒猫の彼以外、余り屋敷を出たがらない者まで来たがった。そのうち、屋敷のメンバーのシャツも仕立てようかと(らん)は、考えている。


 時間になり開店し、最初の客が店内に入ったあと、すぐに出ていき、看板を見てから再度入ってきたらしい。たまたま受付に居た自由な黒猫の彼が笑いながら報告してくれた。

「とーしゅ、とーしゅ、ビックリして帰っちゃったけど、またすぐに来たー!」

 そしてその客が案内されてきた。

「なんか、制服が変わりましたか?」

 客の最初の質問が、これだった。

「ジャケットが堅苦しく思いまして、変えましたの」

「そうなんですねぇ。店間違えたかと思っちゃいました」

 確かに、かなりのイメージチェンジだ。以前来たことがあるからこそ、あれ?と思ってしまったようだ。


「今日は、どうされましたか?」

「はい。ご報告と、ご相談があって、参りました」

「伺いますわ」

 相談内容は、会社を辞め、(らん)に言われた通りに、起業する知り合いの仕事を手伝うつもりで勉強していたけど、別々の2人から誘われて、どちらを選ぶべきかわからないと言うものだった。

「手を触ってもよろしいかしら?」

「は、はい、どうぞ!」

 (らん)は、詳しくみるために、手を触ってしっかり見定めてみた。以前見たときに、2人も出てきたりはしなかったのだ。そして、やはり以前見たときと変わらない結果を見た。

「具体的にお名前を出しますが、○○さんからのお誘いしか、(わたくし)には見えないのですが、もうお一方(ひとかた)は、どのようなお話ですの?」

「△△さんと言う、前の会社の部署違いの同期です。出資を頼まれています」

「その方なら、会社をお辞めになってはいないわね。あなたの未来にはいらっしゃらない方なので、詳しくはわかりかねますが、あなたの元上司の息がかかった方のようですわね」

「えぇー!!! あいつ、俺を騙したのか」

「騙すつもりがあったかはわかりませんけど、出資はお断りなさった方がよろしくてよ」

「ありがとうございます。○○さんの話の方に引かれましたが、元同期の頼みを無下に断って良いものかと考えてしまいました」

「優しさに付け込む人もいますわね。お気をつけ遊ばせ」

「これで、悩まず頑張れそうです! ありがとうございました」


 (らん)は、少し反省した。流れ的にはほんの少ししか登場しない人物でも、その場のその一瞬では、未来まで見通せないのだから、普通の人間には、相手が自分の人生から退場するかどうかなんて見定められない。


「先生、手を触ると何か変わるんですか?」

「目を見ただけより、詳しくわかりますわよ」

「あ、普段は、目を見てるんですね」

「ええ、目が合うように、(わたくし)は、目だけを見せるようにこんな服装をしていますのよ」

 フェイスベールをしていて、相手からは目しか見えない。

「え、先生の趣味かと思ってました」

「ふふふ、洋裁は趣味ですわね。作っていて楽しくなってしまって、予定より少し派手になったことは、認めましてよ」

「やっぱり趣味なのか」

 助手がボソッと呟いていた。


 高い料金の占い師が、Tシャツ短パンで出てこられても、信憑性に欠けると言うか、言葉に重みがないと言うか、見た目が与える印象は大事なのである。

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