横領
先日の貴族から渡された料金が多すぎるため、連絡を入れた。すると、家の者に取りに行かせると返答があり、待っていると、結局本人が来た。
「2問分払ったのだが、多かったのか?」
貴族交流会主催就任のお祝いを兼ねて、2問目は質問したらしい。そのため、使いの者ではなく、説明を兼ねて本人が来たのだ。
「仮に、2問分だとしても、少なくとも合計1000万円多いですわね。あなたの年収にして、5億円以上の誤差がありましてよ」
多めに計算してみても年収は120億円だったのだ。5億円は不明金になる。
「収益として5億円は誤差とはいえないな。調べることとする。かたじけない。料金は、そのまま受け取ってくれ。今日はいくらになる?」
30分間の相談料の正価は1万円であるが、1000万円多く貰っている状態で、請求もない。
「今日は、何も占っておりませんわ」
実際、返金対応の話をしただけだ。
「そうか。では、誤差のヒントを貰えるかね?」
一度払ったお金を返金して貰うつもりはないらしい。
「もう一度拝見いたしますわ」
蘭は手を触り、ゆっくり見てみた。すると、ある時から無くなっている報告がある。
「旅館か、ペンションのような宿泊施設の名義の変更に、心当たりはございますか?」
「旅館は何件かあるが、譲った記憶はないな。そこを調べよう。助かった」
胸ポケットから財布を取り出そうとしていた。小切手でも書くつもりらしい。
「料金は、前回いただいた分で足りましてよ」
蘭としても、やっと正当な料金になったと安堵した。
「そうか。かたじけない。良ければ、泊まりに来てくれ」
「ありがとう存じます」
後日報告に来た。任せていた(貴族の)力の無い親族が、勝手に名義変更をして、何件かの小さめの旅館が譲渡した形になっていた。平均寿命を考えたときに、そう長くはないだろうと考えたらしく、バレないだろうと高を括って勝手に変更したそうだ。関わった者全員をクビにし、真面目に働く一般職員に責任者をすげ替えたらしい。いきなり責任者や役員に指名された従業員は驚いていたが、煩わしく働かないくせに横柄だった上層部は一掃したと告げると、喜んで引き受けてくれたらしい。
親族に舐められる仮当主を辞め、本当主になり、若きホテル王として騒がれているようだ。姿を表した本人は、完全に別人の見た目で、ほぼ蘭以外には、同一人物と認識できない。
「本当にかたじけない」
「ふふふ。そのお姿で、言葉が古風すぎましてよ」
「あー、成る程。その辺も頑張るかのぉ」
「お若い方とお話しされると、覚えるのが早くなりましてよ」
「そうか。そうか。頑張ってみるよ。これで良いかの?」
「ええ、ふふふ」
「そうだ、これを貰ってくれ。店や屋敷の皆で使うと良い」
それは、商品券だった。なんと、1000万円分もある。
「ありがとう存じます。有り難く頂戴いたします」
蘭は助手たちに、1人あたり50万円分を渡し、1か月先に、1週間の休みを設けるのだった。
「金銭的なものは、私からは差し上げられませんけど、お客様からいただいた物のおすそわけは問題ないと思いますわ」
「え!これいただいて良いんですか!?」
「皆さんに、50万円分ずつお渡ししますので、○○グループでなるべく使うようにしてくださいませ」
「○○グループなら、居酒屋とかカラオケもありますね!」
「あら、そうなんですの? お好きなところで1年以内に使ってくださいませ」
蘭は屋敷に帰ってから、外に買い物に出るメンバーに均等に配った。
屋敷から店に来るメンバーは、蘭と一緒で昼食を食べないが、彼らは単に1日2食なのであり、朝食や夕食は屋敷で食べている。全く食事をしなくても困らない蘭とは違うのだ。
普段は食事をしない蘭だが、お茶は飲むので、屋敷の食事時に同席することはある。




