交流
蘭は、交流会から招待された。
他貴族からの正式な招待だ。蘭は、貴族社会へ公式にデビューしていないので、他家も様子を伺っていたらしい。
「少し(35年くらい)前の公式なお披露目では、夜香 凛を仮当主と紹介されたが、彼女はどうしたのかね?」
「私、正統後継者ですので、当然滅されましてよ」
「なんと! 噂は本当だったのか」
貴族は、特殊能力を持った家だ。蘭のような、人間個人を見る者以外に、植物の声が聞ける者や、動物と話せる者、何も無い所から火を操れる者や、水を操れる者など、多種多様な能力がある。
人を超越した存在ゆえに、一般人にはあまり興味を持てず、蘭のように、直接一般人相手に仕事をしている貴族家当主は稀である。
「正統後継者になるとは」
「私が望んだわけではございませんのよ」
「成る程。謀られたか」
「ええ、血族外でしたわ」
蘭は、叔母の夫だった者に騙されて儀式をしたのだ。
「正統後継者ということは、この会の主催も引き受けてもらえるかね?」
「何故ですの?」
「寿命じゃよ。一番長いであろう?」
蘭に声をかけてきた老人は、真っ白な髭をはやし、98歳だったが、寿命は1年を切っているようだ。
「儂の寿命を見たかね? 今年中に引き継ぐ必要があるのじゃ」
「ええ、そうですわね。ですが、私は、この会が、何をする会かすら存じ上げませんわ」
「近況を話したり、新入りを歓迎するだけの集まりじゃよ」
「もしかして凛の時も、そんな感じでしたの?」
「お前さんに似た、可愛らしい女の子じゃったな」
凛の日記の記述の意味がわかった。皆優しかったのだろう。
「わかりましたわ。主催をお引き受けいたしますわ」
「おお、そりゃめでたい」
ほとんどの者は仮当主で、その血の能力を全て引き出している者は、現在ほぼいないらしい。蘭にしても、全ては解放されていないのだ。
「私以外で、仮ではない当主の方はいらっしゃるのかしら?」
「居るには居るが、今日は来ておらんな。監視というか、観測者が。やつは政府に仕えておる変わり者じゃ」
「どのような方ですの?」
「その名の通り、新しい当主の誕生を政府に伝える等、貴族の動きを観測しておるのじゃ。お前さんも、特に連絡せず、使いが来たじゃろ?」
「確かにそうですわね。今現在も、物理監視がたくさんついていますのよ」
政府から派遣されてくる助手たちだ。
「夜香の力では、致し方有るまい」
アカシックレコードの読み取りと、エナジードレインだ。監視の1つもつけるだろう。
「困っていることなど有れば、相談に乗るゆえ、主催の件、よろしく頼む」
「了解ですわ」
世間話をし、わいわい楽しく過ごし、本当に何事もなく解散した。この会にだけは、蘭に監視もつかず、本当に息抜きの集まりだった。
蘭は、監視を息苦しいとは感じていないので、困っていないが、監視されることを息苦しく感じている貴族もいて、息抜きが会の主な設立理由らしい。蘭の普段の監視はいなかったが、給仕をしているメンバーは、全員政府からの諜報員らしい。まあ、確かに、外に話が漏れても困るので、仕方ないのだろう。
貴族たちは、突出した能力があっても、人に紛れて人として生きたいために、仮当主以上を目指さない人が多いのだ。
「当主、お帰りなさいませ」
「なんだか、井戸端会議みたいな集まりだったわ。それと、主催に決まったわ」
「かしこまりました。次回開催は、当屋敷で準備いたします」
「よろしくお願いするわね」
「承知いたしました」
蘭は、満月を見ながら好きな曲を聞き、窓辺で夜を楽しむのだった。




