表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
2章 占い師 夜香 蘭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/62

腎臓

「相談があるのですが、聞いていただけますか?」

「ええ。どうぞ」

 その男性は、深刻な顔をしてやってきた。


「1度、限界まで寿命をとって、その後すぐに戻し、半年くらい後に、支払いとして必要な寿命を取ってもらえないでしょうか?」

 何とも不思議な注文に、(らん)も疑問に思い、思惑を尋ねてみることにした。

「理由を話せますか?」

「はい。私は搾取子として育ちました。兄に腎臓移植が必要らしく、両親から提供しろと言われています。何もなければ、提供しても良かったんですが、妻も移植を必用としています。私は妻に腎臓を渡したいのです。明日の検査の時に不合格になれば、円満に断れると思うんです」


「そうね、医療の範疇は分からないけど、あなたを余命1年くらいにしたら、確かにドナーとしては、断られるでしようね。戻す予定なら、当日中にいらっしゃい。そうでないと全てを戻すことは出来ないわ」

「なら、明日来た方が良いのですか?」

「明日検査なのなら、そうね」

「おいくらで請け負っていただけますか?」

「そうね、少し実験扱いになるわね。明日の朝いらっしゃい。開店前でも対応するわ。必ず明日中に再訪なさってね。取り合えず、寿命をみるための1万円で良いわ」

「お願いします」

 (らん)はこの男性の寿命をみたが、現在36歳で、寿命が54歳だった。

「あなた、今のハードな生活を続けていると、54歳だわ。明日、腎臓の数字が悪く出るようにするわ。この後から、お酒は絶対に飲まないこと。油もの、塩分の濃いものも食べないこと。入院したりせず、必ずここに来ること。良いかしら?」

「なら、何を食べたら良いですか?」

「お粥などの、病人食ですわね」

「あ、そうか。一時的に、病人になるのか!」

 (らん)のすることを理解できたらしい。


 そして翌日の早朝に訪ねてきた。

 (らん)も早くから来ている。助手は、1人だけ早く出勤してきていた。

「あら、普通の時間でよろしかったのよ?」

「開店準備を手伝いに来ました」

「ありがとう存じます」


 お客を部屋に通し、顔や肌などの見た目があまり変わらないように注意し、腎臓を中心に内臓の寿命を吸い取った。

「即入院をすすめられると思うわ。でも、必ず今日中にいらしてね。今日中にいらっしゃらなければ、寿命の買い取りと判断しますわ」

「はい。ありがとうございます。必ず来ます」

 そう言ってその男性は帰っていったが、その日その男性は、営業が終了しても来なかった。


 (らん)は、予定の出張対応をしたあと、お店に戻ってきていた。

「どうしましょ。日付が変わるわ」

 すると、一旦帰ったはずの助手が、戻ってきて報告をして来た。

「先生、調べてきました。検査の段階で、即入院になったみたいです。ご本人は意識がないらしく、話しに出ていた兄と言う人が付き添っているようです」

(わたくし)が様子見に行ってもよろしいのかしら?」

「はい。許可取ってきました!」


 病院に行くと、患者の妻として、夜間の訪問を許された。

 (らん)が不思議に思っていると、助手は、「姉さん早く行くよ!」と、不思議な声掛けをして来たのだ。


 病室につき、横たわる患者のそばにいる男性が頭を下げ、助手がそこに残り、カンファレンスルームを借り、(らん)に事情を話し始めた。


「弟がご面倒をお掛けいたしました。私は異母兄です」

 その異母兄の話によると、腎臓を患っているのは本当だが、移植を急ぎしなくてはならないほどではないことや、弟の妻が腎臓を悪くしていると言うのは真っ赤な嘘で、いくら言っても弟が聞かないので、一芝居打とうとしたら、変な方向に突っ走ってしまったことや、弟が搾取子だと言っていたのは、兄とは母親が違うことを知らず、母が厳しすぎたから誤解したのだと思うと話していた。弟の母は後妻らしく、先妻の子である長男に気を遣いすぎて、弟にはことさら厳しかったらしい。ちなみに、(らん)を妻として夜間受付を通して貰ったのは、本当の妻が見舞いに来られないようにするためもあるそうだ。

「複雑ですのね」

「弟の命を戻すことが可能とうかがいました。おいくらお支払すればよろしいでしょうか?」

(わたくし)を騙すことになったから、お支払すると言うことかしら?」

「はい」

「27年と200日ほど戻せますわね。取り合えず、お支払に関係なく、体調を悪化させないためにも少し戻します」


 (らん)は病室に戻り、内臓が若返るように1度可能な限り戻し、その後、見た目が変わるように、全体的に20年ほど標準的なエナジードレインをした。


 少しして、患者が目を覚ます。

「何で兄さんが? あれ、夜香 蘭(やこう らん)先生も? ここはどこですか?」

「良かった気がついて。ここは病院だよ」

「少し過剰だったようですわ」

「あ、いえ、弟の体は、蓄積された毒物で弱っていたそうです。仮に寿命を奪っただけであるなら、状態は老衰のはず、白血球の数値が異常なほど高く、弱い毒を長期間に渡って、与えられ続けていた症状と、医者が言っていました」

 年齢を見たときに、毒に侵されているようには見えなかったが、医学を勉強したわけではないので、見て分かるほどの物でもない限り、(らん)にはわからない。

「少し見てもよろしいかしら?」

「ええ、どうぞ」


 (らん)は、生活を見てみた。仲睦まじそうな夫婦が、家で食事をしている光景だった。夫だけに出される特製ドリンク。市販のビタミン剤などをとてもたくさん入れて作っていた。それを見ても(らん)には判断できなかった。

(わたくし)では、分からないようですわ」


「兄さん、毒って何だよ?」

夜香(やこう)さんとも話したけどな、俺に腎臓をくれる必要はないよ。でも、あの女の病気は嘘なんだ。それだけは信じてくれ。お前は、検査の前に倒れたんだよ。夜香(やこう)さんの助手の方が来て、寿命を減らしたと聞いたけど、医者によると、お前の症状は老衰ではなく、毒素などによる中毒症状だそうだ」

 内蔵機能が衰えたため、今までなら体調に出ない程度だった毒素の症状が、処理しきれなくなり、一気に状態に出たということのようだ。


 話が少し落ち着き、ナースコールを押した。

 医師と看護師が来て、脈や心音などを診たあと、明日検査しましょうと言って戻っていった。


「どうされますか? 全てお戻しいたしましょうか?」

「私は嘘を言ったことになりますか?」

「あなたは嘘を言ったつもりはないようなので、それについて追求いたしませんわ。(わたくし)の方法も良くなかったみたいですし、ご希望なら手数料のみでお戻ししますわ」


「その手数料は、私に払わせてください」

 患者の兄が申し出た。

「年収の1パーセントでしてよ」

「そんなに安くて良いのですか!?」

 噂で聞いていたのだろう。1日1万円で買い取り、返品は3倍だと。

「ふふ。売った後に買い戻す場合は、3倍なのですわ。今回は最初から、実験のようなものとして、(わたくし)も、加減が調整できなかったようですし、1度もこちらからお支払はしておりませんので、買い戻しは必要ありませんのよ」

「ありがとうございます。ありがとうございます」


 (らん)は30万円を受けとり、戻せるだけの命の光を戻した。

 患者は眠りにつき、悪かった顔色も明るく若々しく戻っていく。

「これでもう、こちらの問題はないわね。それではごきげんよう」

「ありがとうございました」



 後日、兄の言うことが正しかったと、報告に来た。腎臓を売られるところだったらしい。妻とは離婚したそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ