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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
2章 占い師 夜香 蘭

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謝罪

 ある日、大金を持って、命を戻してくれと騒ぐ女が来た。

「お金ならここに有るのよ、お願いだから、もとに戻してください! お願いよ!」

 騒いでいるが、客として来たことが無い者らしい。


「先生、ちょっと見てきます」

「危なくてよ」

「あの声、聞いたことがある気がするんです」

 蒲 公英(がもう きみひで)は、思い当たることがあるらしく、受付に見に行った。


「やっぱり。(おおとり)さんの、」

「あなたは、仙花(せんか)のお友達の(がもう)君? 何故、こんな所に居るの?」

仙花(せんか)さんから聞いていないのですか?」

「ええ、仙花(せんか)からは、何も聞いていないわ」

「とりあえず、騒がないでください。話だけなら出来るように、頼んでみます」


 公英(きみひで)は、(らん)に頼みに来た。

「先生、やはり、(おおとり)さんのご家族でした。お嫌でなければ、話だけ聞いていただくことは出来ませんでしょうか?」

「放置しても解決しないですわね。空き時間を見て、あなたが予約を入れたら良いわ」

「先生、ありがとうございます」

 公英(きみひで)は、(おおとり)夫人に、告げに行った。


「当主、よろしいのですか?」

鳳仙花(ほうせんか)ちゃんの兄のことよね。まあ、むしろあの時の罪は、兄よりも鳳仙花(ほうせんか)ちゃんの方なのよね」

「はい」



 15時からの午後枠の1番に、(おおとり)夫人は(らん)の前に座った。目の前に現金1億円と6億円の小切手を置いている。

「大変申し訳ございませんでした。主人の偏見で子供の思想教育に失敗してしまいました。お金では無理であるなら、私の命で償いますので、どうか息子の余命を戻していただけないでしょうか?」

 一気に喋ると、その場に土下座した。

「どなたから聞きましたの?」

「え、どれのことでしょうか?」

「息子さんがこうなった経緯は、どなたから聞きましたの?」

「夫と息子からです」

「娘さんからは聞いていないのですか?」

「え? 娘も?」

(わたくし)は特に口止めをされていませんので、何があったかお話しましょう」


 (らん)は、エナジードレインをしなければいけなくなった経緯を説明した。

「ですので、娘さんが放ったナイフがなければ、寿命の1部しか取らなかったのです。(わたくし)の回復のために、息子さん以外は、全員絶命させました」

仙花(せんか)が、人を傷つけた……」

「娘さん曰く、(わたくし)は、人ではなく化物なので、人を傷つけたつもりはないのでしょう」

「なんてことを」

「なので、裁判を受けて反省するのなら、戻せるだけ戻すのは構いませんが、謝罪は今のところ有りませんので、(わたくし)も何もする気がないのですわ」


「本当に申し訳ございませんでした。娘と話して参ります」

「息子さんの命の光を戻したいなら、なるべく早い方が良いですわよ。現時点で余命1年を切っているわ。遅ければ遅いほど、戻しても元の年齢までは戻らないの。なるべく早い方がよろしいですわ」

夜香 蘭(やこう らん)様、お時間を取ってくださり、ありがとうございました」

 (おおとり)夫人は、絶望的な顔をしたまま帰っていった。


 数日後、鳳 仙花(おおとり せんか)の謝罪文と共に、警察病院まで御足労願いたいという、法務大臣からの要請が届いた。


「先生、一緒に行っても良いですか?」

 公英(きみひで)が声をかけてきた。仙花(せんか)が抜けたあと、ほぼ毎日来ている。

(わたくし)より、あなたの雇い主に確認なさって」

「それなら問題有りません!」

「でしたら、よろしくてよ」

 屋敷の者を2人連れ、4人で警察病院まで出向いた。


 案内された場所は、格子扉の鍵を開けて進む、精神科病棟だった。

「こちらです。お帰りになるさいや、何かありましたら、ナースコールでお知らせください」

 2重扉で施錠されていて、戸を閉めると自動的に鍵がしまるらしい。

「ありがとう存じます」


「あれ、(おおとり)さんがいる!?」

「何で(がもう)君が来ているのよー!!」

「デジャヴだわ」


 おおとり兄妹は、同じ部屋に入院していた。兄から離れたら死んでやる!と、騒いだためらしい。

 兄は自身の容姿に発狂してしまい、裁判どころではないそうで、付き添いを兼ねて入院しているのだと、仙花(せんか)が落ち着いて話してくれた。


「謝罪文が届きましたわ。本心ですの?」

「はい。夜香 蘭(やこう らん)様、私の片寄った考えで、あなたを傷つけてしまい、大変申し訳ございませんでした。処罰は当然と受け入れたいところですが、出来ることなら、命は、兄ではなく、私から取ってください。お願いいたします」

「貴女の言っている言葉が本心なのか、心を見てもよろしくて?」

「はい」

 目を見ての即答だった。本当に心を入れ換えたらしい。

「そう。刑事罰を受けるなら、戻せる限りにはなるけど、戻しましょう」

「本当ですか! ありがとうございます。ありがとうございます」


 (らん)は、仙花(せんか)の兄をしっかり眠らせ、戻せるだけ命の光を戻した。仙花(せんか)の兄は25歳だったらしいが、25歳までは戻せず、それでも、余命1年弱だった老体からは見違える若さになった。

「お兄ちゃん!」

「これが限界ですわ」

「先生、ありがとうございます。本当にありがとうございます。では、早速私から今の分を引いてください」

「その件に関しては、貴女のお母様が支払ってくださるそうですわ。ご連絡なさってね」

「母が!?」

 仙花(せんか)は泣き出した。母親が助けてくれるとは、考えていなかったらしい。


(おおとり)さん、しっかり罪を償って来てください。僕はいつまでも待ってます」

(がもう)君、ありがとう」

 (らん)がナースコールを押し、看護師が扉を開けに来た。


 翌日、(おおとり)夫人が再びお金を持ってきた。今度は7億円全て現金だった。数人の警備つきだ。

「1億円だけいただきます。刑事事件としては罪を償っていただきますが、民事で訴えたりはしませんので、示談成立と致しましょう」

 被害者がすでに回復していることや、示談が成立しているということで、後の裁判で、(おおとり)兄妹は、執行猶予がついた。


 接近禁止すら希望しなかったので、(おおとり)兄妹は、(らん)に直接お詫びとお礼をしに来た。その時に父親の話を聞いた。某大臣であった父親は、死刑廃止論者で、人が人を殺すなんてとんでもないという考えが飛躍しすぎて、死刑囚の命を奪った(らん)を邪魔に思い、消そうとしていたらしい。がしかし、母親(妻)から、「死刑が嫌なのに、私刑で誰かを殺すなんて、矛盾に気が付きなさい!」と諭されたのだそうだ。


 

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