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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
2章 占い師 夜香 蘭

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友情

「あ、あの、我ら3人の寿命を少しずつ削って、友人を助けてください!」

 大学生くらいの若い男性が押し掛けてきた。


「学生はお断りですわ。それにね、寿命を奪うのは可能ですけど、成人、未成年問わず、与えるのは出来ませんのよ」

「え、そんな、与えられた人がいるって聞いたのに」

「以前も言われたのだけど、それはどのようなお話ですの?」

 3人は、それぞれが聞いたと言う話を、披露してくれるらしい。


「僕が聞いたのは、ミイラのようになってしまった人を若く戻した。です」

「俺が聞いたのは、入院しても治らなかった死にそうな人に見舞いに来て、元気になったと言う話でした」

「私は、大金を払ったら、30歳若返ったと聞きました」

 確かに、(らん)にはどれも心当たりがあった。

「そうね、まあ、心当たりがないわけでもないわね。でもね、そのお話のどれも、前提条件が抜けているわね」

 (らん)は、プライバシーに接触しない程度で、訳を話した。

「だから、引かれたものを戻しただけなのよ。引かれていないところに足すことは出来ないの」

「そんなぁ」

「お友達さんは、ご病気なの?」

「病気と言えば病気ですが、原因は不明らしいです」

「あら、そうなの? それなら、何か出来るかはわからないけど、情報のお礼に1度伺ってみましょう」

「ありがとうございます!」


 (らん)は、早速夕方から出掛けることにした。

 派遣されている助手と、屋敷から来ている者の他、件の3人も、案内を兼ねてついてきた。


 病室に入ると、空気が黒く淀んでいた。その黒さが1番濃いのが患者の回りであり、黒い空気の後ろには、揺らめく白っぽい影が多数ある。どうやら人間たちには見えないようだ。


「あなたは見える?」

 (らん)は、屋敷から来ている者に尋ねた。

「当主、あれは怨霊です。悪霊と、生き霊も多数います」

「やはり、そういうのなのね。話を聞けるかしら?」

「当主なら、可能かと」

「そう。なら試してみるわね」


「あなたたち、その人についている訳を話してくれるかしら?」

 生き霊は、『呪う、呪う』や『許さない』と呟くだけで、単語しか話せないようだったが、怨霊と言われた霊は、(らん)の要請に応じてくれた。

『おぬしは人ではない者だな。(われ)(まじな)いによって遣わされた。こやつは数多(あまた)の者から恨みを買っておる。生き霊は全て、こやつに陥れられた者だ。夜になればさらに増える』

「どうもありがとう」

 怨霊さえ呆れる情況らしい。


 派遣されている助手が、(らん)が1人でしゃべっているので、困り果て、声をかけてきた。

「先生、何かわかったのですか?」

「わかったわよ。でもね、そちらの3人には、ショックな話だと思うわ」

「治らないんですか?」

「そういう方向の話ではないわね。その彼女の状態の話ね」

「聞かせてください!」

 案内でついてきた他の2人も同意して、首を縦に振っていた。

「彼女は、病ではなく。恨みによって呪われていますわ。それも、1人や2人からではなく、現時点でも7人以上からね。多数ついている生き霊は、許さないと呟いているわ」


「そ、そんなぁ」

「なんで、純真無垢な彼女が」

「逆恨みなのか?」

「何故こうなっているのか占いで見ても良いけど、あなた方に支払えるかしら?」


 若者3人は、逆恨みであると考え、公正な立場から見てもらおうと話し合っていた。

「払います!」

「俺も払う!」

「じゃあ、僕も」

「合計で、10万円で良いわ」


 (らん)は、呪われている彼女が何をして、多数から呪われているのかを見てきた。10年程の過去見だ。

「現在22歳。ご友人のお付き合いしている方に横恋慕して、嘘の噂を流して破局させたり、人を陥れたりが日常茶飯事のような生き方をされているわね。一番強い悪霊さんは、大金を騙し取られたベンチャー企業の社長さんね。自殺されているわ。話に応じてくれた怨霊さんは、この彼女の悪質ないたずらで子供を失った女性からの依頼で、呪いの本職が送ってきたようね」

「そんな、まさか」

 信じられないらしく、3人は戸惑っているようだった。


「ふふ。あなた方が以前お付き合いされていた女性とお別れしたのは、どうしてかしら?」

 (らん)にそう言われ、思い至ったらしい。全ては、この女から聞かされたことだと。

「本当に本当の事なんだ」

「俺たちは、馬鹿だったのか」

「早く謝らなければ」

 3人は、目が覚めたようだった。


「ご自分の命は、大切になさってね」

「ありがとうございました。現金が足りないので、必ず明日支払いに行きます」

「はい。お持ちしているわね」

 学生たちは、先に退室していった。


「当主、何故助けたのですか?」

「助けていないわよ? (わたくし)、人を陥れる嘘をつく人間は、大嫌いですの」

 (らん)が、本当の意味で夜香 蘭(やこう らん)になったのは、騙されたからだ。反撃すら出来ないうちに、その相手は殺されてしまった。悪意をもって人を陥れるような(やから)は、(らん)には永遠に許せないのだろう。


「明日、支払いに来たら、その予算は、あなたの愛しい女性と一緒にお使いなさい。と、伝えてくれるかしら?」

「かしこまりました」

 (らん)は、覚悟をみるために言ったのであって、学生から支払ってもらうつもりはなかったのだ。

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