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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
2章 占い師 夜香 蘭

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子供

 占いも、寿命の買取も、年齢制限をしており、未成年者は受け付けない。だがしかし、予約ではない訪問で訪れる者がいる。


「お母さんの寿命を伸ばしてください」

「何故?」

「来週お姉ちゃんの結婚式なの」

 小学生くらいの女児が、貯金箱を握りしめてやってきた。

(わたくし)は、人の寿命を奪うことはできるけど、増やすことは出来ないわ」

「え」

 絶望した顔をして、固まってしまった。やがて助手が駆けつけてきて、(らん)から女児を保護していった。


「先生、そうなんですか?」

「コップに入っている水を飲むことは出来ても、溢れそうな小さいコップに水を足すことは出来ないでしょ?」

「あ、そういう理屈なんですね。だから、戻すのは可能なのかぁ」

「厳密に言うと、100取った人に、100戻せるわけではないのよ。コップの例えで言うなら、水の無くなったコップは、水の無い場所が枯れていくの。早ければ100に近い数字になるけど、時間が経てば経つほど、上限が下がっていくのよ。100戻せるのは、当日中ね」

「先生、減らしたことの無い人に、増やそうとするとどうなるのですか?」

「試したことがないわ。減らした人に戻すときに、上限が低いと感じたことはあるけどね。あ、ひとつ、毒のために減った人は、増やせるかもしれないわ」

「そうなんですか!?」

「毒を盛られたのなら、本来の寿命より、器に対して中身が減るからね」


 翌日、女児を保護した助手が、女児の状況を伝えてきた。

 母親は、寝たり起きたりの入院生活で、その夫(父親)が甲斐甲斐しく看病しているが、なかなか良くならず、病院でも有名な家族らしい。

「少し気になるわね」

「先生、何か可笑しなところがありますか?」

「時間取って見に行きましょうか」


 助手の雇い主に許可を取り、病院の面会時間外に、訪問した。面会時間外だと言うのに、患者の夫は付きっきりで、何かしていた。

「ごきげんよう。お見舞いに参りましたの」

「PTA の方ですか?」

「そんな感じですわ。少し席を外してくださる?」

 (らん)の気高い雰囲気に、男は圧倒されていた。

「え、あ、まあ、わかりました」

 不本意だと言いたげに、退室していった。


(わたくし)が話すことがお分かりになります?」

「はい。あの、どちら様ですか?」

 酸素マスクをしていて、声がくぐもっている。

(わたくし)は、夜香 蘭(やこう らん)。あなたのお子さんが、あなたの寿命を伸ばしてほしいと、貯金箱を握りしめて、(わたくし)のところに来ましたのよ」

「え、それは、とんだご無礼を」

「いえ、それはよろしいのですわ。あなた、体にかなり毒を溜め込んでいらっしゃるわね。何て言いましたかしら、そう、あなたの夫、代理ミュンヒハウゼン症候群ですわね」

「え?」

「病気なのは、あなたではなく、あなたの夫ですわね。試しに、夫を含めて、面会謝絶にしてみるとよろしくてよ。あなたからの申し出があれば、病院もそれを実行するようにしておきますわね」

「え?」

「それでは、ごきげんよう」

 (らん)が退室したあと助手が、「あの人は本物の魔女だから、少し言うことを聞いてみると良いですよ」と助言してきた。


 翌日から強制転院し、家族を含め絶対安静面会謝絶の対応になった。


 2週間後、助手に連れられた子供が、再び訪ねてきた。

「お姉さんありがとうございます。お母さん元気になりました。お姉ちゃんの結婚式にも出席できました。これで支払います」

 再び貯金箱を提出してきた。

「未成年者からは受け取れないわ。あなたが大人になったら支払ってちょうだい」

「はい。必ず払いに来ます!」

 女児は、ニコニコして帰っていった。尚、父親は、女児の姉の結婚式の直後から、精神科に強制入院になったそうだ。母親は一時退院のあと、まだ入院はしているが、順調に回復している。女児は、姉が面倒を見ているらしい。


 自分が神風 龍一(かみかぜ りゅういち)に救ってもらった頃と同年代の女児を見て、(らん)は女児を助けたかったようだ。

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