使者
国の機関から使者が来た。
「国の行く末を占ってもらいたい」
「占いはまだ経験がないから、実践を積んでからでないと何も占えないと告げた」
すぐに占いをする場を整えられ、占い師として商売を始めることになった。
ヒヤシンスを掲げた看板の、良く当たる占い師。瞬く間に評判になり、高額でも、連日、客が絶えなくなった。
ベリーダンスでも踊り出しそうな衣装を着て、フエイスベールをつけ、客からは目しか見えない。
「先生、私は、どうしたら良いでしょうか?」
「何についてかしら?」
「評判の占い師のくせに、そんな事もわからないの?」
「恋愛、学業、引っ越し、家族間のこと、全てわかりますが、この4つとも答えて良いのなら、値段が4倍になりますわ」
「え、あ、恋愛です。恋愛でお願いします」
「花を渡した男性をA、アクセサリーを渡した男性をB、あなたがお金を貸している男性をCとします。Aは若い頃苦労はしますが、豊かな老後を過ごせるでしょう。Bは素敵な新婚を送れますが、近い将来破産します。Cはあなたを食い物にし、落ちるところまで落ちて、悲惨な人生を送ることになります」
「うえ、そんなにはっきり見えるんですか!?」
「そうですね。時間なので、次回またどうぞ」
「あ、ありがとうございました」
客が退室すると、助手がやってきた。
「先生、今のは」
「1本のままで良いわ」
「了解です」
料金の確認に来たのだ。3転する人生を見たので、本来は3万円請求するが、もう2度と来られないであろうことを気の毒に思い、基本料金のみとしたのだ。1本は1万円。
「先生、今の人、どの未来を選ぶんですか?」
「Bを選んで破産して落ちぶれて、Aに乗り換えようとして失敗し、Cに食い物にされるわね」
「うわー。最初からAを選べば良いのに」
「今見える豊かさは、Bが群を抜いているからね」
「次のかた入ります」
若い女性が入ってきた。
「あの、えーと、友人を探しているのですが」
それは、八仙 花だった。
「はい」
「神風 信子さんを」
「その名の方は、存在しませんわね」
「あなた、やっぱり、信子さん!」
「私の名は、夜香 蘭でしてよ」
二人で話したとき、夜香 蘭という人物は存在しないと言ったその口で、反対の事を言う。
「わかりました。これは独り言なので少しだけ聞いていてください」
「よろしくてよ」
「私のことを治療してくれてありがとう。私を襲ったのは、あなたのふりをした妹さんだったと、神風のおじさまに聞きました。知らなくて、あなたを怖がってしまってごめんなさい。又、友達になってください」
「もう、よろしくて? 貴女が怖がった夜香 凛は、滅びましたが、それを滅ぼしたのは、私です。私はそれと同じものです。お友達になるのは無理かと思われますわ」
蘭の完全なる拒絶に、八仙 花は、静かに泣きながら退室していった。
「先生、今のは」
「何も見ていないから、返却してください」
「了解です」
「先生、良かったのですか?」
「こんな化物と友達は無理でしょう?」
「先生は若い女性にしか見えませんけどね」
「次のかた入ります」
15分おきの予約制で、水晶もタロットも使わず、目を見ただけで言い当てる方式は、追随する者を許さず、かなり話題になっていた。
「こんにちは。お願いします」
「何についてかしら?」
「同業と言うのも烏滸がましいですが、私、才能ありますか?」
「手を触ってもよろしくて?」
「は、はい。とうぞ」
「最近当たらなくなったのね」
「はい」
「一緒に暮らしているかたと、別れられるかしら?」
「え、もうすぐ結婚の予定なんですが」
「ご結婚されたら、家庭はうまく行くと思います。占い師として続けたいのなら、お別れされたほうがよろしいですわね」
「その2択なのですか?」
「結婚もして、どうしても占い師をしたいのなら、お子さんが成人されてからなら、再び、力が戻りましてよ」
「ありがとうございます!!」
物凄く元気になり、退室していった。
「先生、今のは」
「3本です」
「了解です」
受付スタッフは、料金の請求に戻っていった。
「本職も来るんですね」
「本職でも、自身のことは占えない人が多いらしいわ」
「そんなもんなんですかね」
「本日の予約分は、終了ね」
「あと、1件ありませんでしたか?」
「それ、来ないわ。たぶんね。でも、飛び込みが来るわよ」
「先生、今の人って、向かいの占い館のナンバーワンの葵さんですね」
「あら、そうなの? 頼まれたもの以外見ないから、気がつかなかったわ」
「すみませーん、誰かいませんかー?」
受付から呼ぶ声が聞こえる。
「その人、受けて良いわよ」
「受付に行ってきます」
男性が部屋に飛び込んできた。
「蘭、ここにいたのか。帰ろう。一緒に」
「どなたかとお間違えではございませんか?」
「神風 信子、俺の娘だろ」
「違いましてよ。私の名は、夜香 蘭ですわ」
「名前なんかなんでも良い、とにかく帰ろう」
「私に帰る資格はございません。どうかお忘れくださいませ」
泣きそうな表情をし、懐からナイフを取り出した。
「なら、一緒に死んでくれ! 俺にはもう何もない」
「お父様、眠って」
蘭はそっと囁き、神風 龍一を眠らせた。
「先生、この人なんなんですか!」
「私の養父でしてよ。私、覚醒するに当たって、この方の大切な人を、私の手で殺めてしまいましたの」
「あ、儀式の贄ですか」
「ええ。知らなかったとはいえ、事実は覆りませんわ。神風さんを、ご自宅にお送りしてください」
「かしこまりました」




