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命を奪うと言うこと  作者: 葉山麻代
2章 占い師 夜香 蘭

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使者

 国の機関から使者が来た。

「国の行く末を占ってもらいたい」

「占いはまだ経験がないから、実践を積んでからでないと何も占えないと告げた」

 すぐに占いをする場を整えられ、占い師として商売を始めることになった。


 ヒヤシンスを掲げた看板の、良く当たる占い師。瞬く間に評判になり、高額でも、連日、客が絶えなくなった。

 ベリーダンスでも踊り出しそうな衣装を着て、フエイスベールをつけ、客からは目しか見えない。


「先生、私は、どうしたら良いでしょうか?」

「何についてかしら?」

「評判の占い師のくせに、そんな事もわからないの?」

「恋愛、学業、引っ越し、家族間のこと、全てわかりますが、この4つとも答えて良いのなら、値段が4倍になりますわ」

「え、あ、恋愛です。恋愛でお願いします」

「花を渡した男性をA、アクセサリーを渡した男性をB、あなたがお金を貸している男性をCとします。Aは若い頃苦労はしますが、豊かな老後を過ごせるでしょう。Bは素敵な新婚を送れますが、近い将来破産します。Cはあなたを食い物にし、落ちるところまで落ちて、悲惨な人生を送ることになります」

「うえ、そんなにはっきり見えるんですか!?」

「そうですね。時間なので、次回またどうぞ」

「あ、ありがとうございました」


 客が退室すると、助手がやってきた。

「先生、今のは」

「1本のままで良いわ」

「了解です」

 料金の確認に来たのだ。3転する人生を見たので、本来は3万円請求するが、もう2度と来られないであろうことを気の毒に思い、基本料金のみとしたのだ。1本は1万円。


「先生、今の人、どの未来を選ぶんですか?」

「Bを選んで破産して落ちぶれて、Aに乗り換えようとして失敗し、Cに食い物にされるわね」

「うわー。最初からAを選べば良いのに」

「今見える豊かさは、Bが群を抜いているからね」

「次のかた入ります」


 若い女性が入ってきた。

「あの、えーと、友人を探しているのですが」

 それは、八仙 花(はっせん はな)だった。

「はい」

神風かみかぜ 信子のぶこさんを」

「その名の方は、存在しませんわね」

「あなた、やっぱり、信子のぶこさん!」

(わたくし)の名は、夜香 蘭(やこう らん)でしてよ」

 二人で話したとき、夜香 蘭(やこう らん)という人物は存在しないと言ったその口で、反対の事を言う。

「わかりました。これは独り言なので少しだけ聞いていてください」 

「よろしくてよ」

「私のことを治療してくれてありがとう。私を襲ったのは、あなたのふりをした妹さんだったと、神風(かみかぜ)のおじさまに聞きました。知らなくて、あなたを怖がってしまってごめんなさい。又、友達になってください」

「もう、よろしくて? 貴女が怖がった夜香 凛(やこう りん)は、滅びましたが、それを滅ぼしたのは、(わたくし)です。(わたくし)はそれと同じものです。お友達になるのは無理かと思われますわ」

 (らん)の完全なる拒絶に、八仙 花(はっせん はな)は、静かに泣きながら退室していった。


「先生、今のは」

「何も見ていないから、返却してください」

「了解です」


「先生、良かったのですか?」

「こんな化物と友達は無理でしょう?」 

「先生は若い女性にしか見えませんけどね」


「次のかた入ります」

 15分おきの予約制で、水晶もタロットも使わず、目を見ただけで言い当てる方式は、追随する者を許さず、かなり話題になっていた。


「こんにちは。お願いします」

「何についてかしら?」

「同業と言うのも烏滸(おこ)がましいですが、私、才能ありますか?」

「手を触ってもよろしくて?」

「は、はい。とうぞ」

「最近当たらなくなったのね」

「はい」

「一緒に暮らしているかたと、別れられるかしら?」

「え、もうすぐ結婚の予定なんですが」

「ご結婚されたら、家庭はうまく行くと思います。占い師として続けたいのなら、お別れされたほうがよろしいですわね」

「その2択なのですか?」

「結婚もして、どうしても占い師をしたいのなら、お子さんが成人されてからなら、再び、力が戻りましてよ」

「ありがとうございます!!」


 物凄く元気になり、退室していった。

「先生、今のは」

「3本です」

「了解です」

 受付スタッフは、料金の請求に戻っていった。


「本職も来るんですね」

「本職でも、自身のことは占えない人が多いらしいわ」

「そんなもんなんですかね」


「本日の予約分は、終了ね」

「あと、1件ありませんでしたか?」

「それ、来ないわ。たぶんね。でも、飛び込みが来るわよ」


「先生、今の人って、向かいの占い館のナンバーワンの(あおい)さんですね」

「あら、そうなの? 頼まれたもの以外見ないから、気がつかなかったわ」


「すみませーん、誰かいませんかー?」

 受付から呼ぶ声が聞こえる。

「その人、受けて良いわよ」

「受付に行ってきます」


 男性が部屋に飛び込んできた。

(らん)、ここにいたのか。帰ろう。一緒に」

「どなたかとお間違えではございませんか?」

神風かみかぜ 信子(のぶこ)、俺の娘だろ」

「違いましてよ。(わたくし)の名は、夜香 蘭(やこう らん)ですわ」

「名前なんかなんでも良い、とにかく帰ろう」

(わたくし)に帰る資格はございません。どうかお忘れくださいませ」

 泣きそうな表情をし、懐からナイフを取り出した。

「なら、一緒に死んでくれ! 俺にはもう何もない」

「お父様、眠って」

 (らん)はそっと囁き、神風 龍一(かみかぜ りゅういち)を眠らせた。


「先生、この人なんなんですか!」

(わたくし)の養父でしてよ。(わたくし)、覚醒するに当たって、この方の大切な人を、(わたくし)の手で(あや)めてしまいましたの」

「あ、儀式の贄ですか」

「ええ。知らなかったとはいえ、事実は覆りませんわ。神風(かみかぜ)さんを、ご自宅にお送りしてください」

「かしこまりました」

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