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学園祭 その3

 修二がつばさ達と談笑していると、ふいに教室の黒板側のドアの方から声が聞こえてきた。




「つばささん、藤枝つばささんはいらっしゃっいますか?」

「あ、はい。」

「急いで体育館に来て下さい。もうすぐ出番ですよ。」

「え?リハーサルとかは?ないんですか?」

「ありましたよ。でも、つばささん、それにいらっしゃらなかったでしょ。時間ぎりぎりなので、説明は後です。さ」




生徒会の一員であろう女子生徒は、つばさの手を引っ張って行った。




「わっ。み、みんなー!応援よろしくね!」




つばさは笑顔でクラスのみんなに手を振った。




「あいつ、元気だな。これからミスコンだってのに。」

「いいじゃない。それがつばさの良いところなんだから。それより、私達も体育館行かなきゃ。」

「そうだな。あれ?そういえば健司は?」

「いましがた戻ってきたわよ。ほら。」




修二が紗耶香の指差した方を見ると、健司が椅子に座って頭を抱えていた。




「お、おい。健司どうした?なんかあった?」

「俺ってやつは・・・!クラスの危機の時にジュース買いに行ってたなんて!委員長失格だよ!」

健司が今にも泣きそうな声で言った。




「ち、ちょっと待った。べつに気にすることねえって。誰も何にもなかったんだからさ。」

修二の言葉に、健司がちらっと目をあげ、

「修二。お前はいいやつだな。」

と言った。




そりゃお前だよ、と修二は心の中でつぶやいた。




健司は真面目で、純で、お人よしだ。修二は健司のこういうところが、妙に嬉しく思えた。




「さ。健司も行くぞ。あの豆チビがミスコン出るんだぜ?応援しねーと。」

「おお!」





―――――

『さあ!続いては、三年C組、佐々木智子ちゃんの登場だ!このなんとも言えない小動物的な雰囲気!くりっくりのおめめに何人の男が心を奪われたであろうか!穏やか系代表との呼び声も高い!それでは、一言お願いします!』




体育館は物凄い歓声と、熱気に包まれていた。館内には人が溢れ、修二たちが到着したころには、人だかりでステージが見えないほどであった。




「すげー人だな。」

「まあ、この学校の名物の一つらしいからな。緑川学園のミスコンは毎年レベルが高いって事で有名らしいぜ。俺のアニキが言ってた。」

修二の呟きに健司が答えた。

「とにかく、ここじゃ何も見えないわ。二階に上がりましょう。」


修二、健司、紗耶香の三人は、ステージ横の用具室にある梯子を使い、二階に上る事にした。




用具室に入ると、ポカンとした顔で天井を見つめるつばさがいた。




「あ。つばさ。今スタンバイ中なの?」紗耶香が声をかける。

「あ、みんな!来てくれたんだ!うん、今出番待ちなんだよ。緊張するなぁ〜。」

絶対緊張してねえ。

修二はそう思った。

小学校の高学年頃から、つばさの緊張した姿など修二は見たことがなかった。

前向きで、ポジティブで、常に楽天的。それがつばさの長所の一つだった。




「俺たち上で見てるから。普通にステージ立って、普通に終わらせて来い。」

「うん。」

修二の言葉に、つばさはにっこりと頷いた。







――――――

『さあさあ!続いての女の子はこの子!一年生のつばさちゃんだ!』

つばさは堂々とステージの真ん中に立ち、観客を見渡しす。

体育館にどよめきが起こった。




「おいおい。めちゃくちゃかわいい子いるじゃん!」

「え〜、なんか小動物みたい。かわい〜。」

「司会者のやつ、クラス言ってないじゃん!あんなにかわいい子いるなら、あの子のクラス見てみたいのに!」

「やべえ。抱きしめてえ。てか持ち帰りてえ。」





(凄い人だな・・・。何人入ってるのかなぁ。もし俺が男だって知ったら、みんなどんな反応すんだろ?)

観客にどう思われているか知らずに、つばさはのんきに考えていた。



『つばさちゃんの衣装は、友達の手づくりだそうですね?』

「あ、はい!一生懸命作ってくれました。かわいいですよね!」

そう言って、つばさはスカートの裾を持ち上げ、にこりと微笑んだ。




その瞬間、会場に大きな歓声が上がる。

つばさは首を傾げた。つばさ本人は、なぜ歓声が上がったか、まったくわからなかった。





『こ、これはすごい歓声ですね。どうですか、今のお気持ちは?』

「あ、えーと、すごい意外です。でも、すごく嬉しいです。えへへ。」

またも大きな歓声。

『これは凄い!ダークホース出現です!これは優勝候補、花川れもんさんと良い闘いをするかもしれない!では最後に、みなさんに一言お願いします!』

つばさは満面の笑みを浮かべ、

「みなさん!どうか、清き一票、よろしくお願いします!」

と言い、パチンとウインクした。




会場はもはや歓声を通り越して絶叫に包まれていた。

「ていうか、清き一票て。選挙かよ。」

「なんかあいつ、結局楽しんでやがったな。」

「私たちはもう見慣れてるけど、普通の人たちから見たら彼、やっぱり美少女なのね。」

修二、健司、紗耶香の三人は、思い思いの言葉を話し、最後には結局、

(やっぱりつばさはいろんな意味で凄いやつだ。)

という意見に一致したのだった。

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