10_八章_ベストカップル・オブ・ザ・ワールド
■著者前書き
こんにちは。著者の上下Kちゅけです。
前書きが悪目立ちして本文が頭に入ってこない。
そんな苦情を受けました。
今回、こちらでの自己主張は自重します。
■もくじ
・01月配信_零章_著者前書き
・02月配信_序章_セレンディピティ
・03月配信_一章_集められた4人
・04月配信_二章_活動開始
・05月配信_三章_デバッグ日誌
・06月配信_四章_やかましいデバッガー達
・07月配信_五章_静かなリターナー達
・08月配信_六章_符合
・09月配信_七章_裏側へ、そしてリーダー交代
・10月配信_八章_ベストカップル・オブ・ザ・ワールド ← ◆今ココ
・11月配信_九章_天国サイドと地獄サイド
・12月配信_終章_俺たちの戦いは始まったばかりだ!
■人物
・イッチ(男/16)
…適合者番号1。忍者。中の人はゲーム好きでアホな男子高校生
・ニコ(女/15)
…適合者番号2。怪力虎男。中の人は町工場の看板娘
・ミミミ(女/26)
…適合者番号3。美人アサシン。中の人はゲームエリートのセレブママ
・ヨバン またはピーポッド、ぴーちゃん(男/35)
…適合者番号4。プリマドンナ。中の人は野球観戦好きな実家住みおじさん
・OG またはおんりーごっつ、ごっつさん(男/?)
…適合者番号5。竜人。中の人は人気のゲーム実況VRtuber
・エンドー(女/29)
…適合者番号0。ゲームプログラマ。宇宙人と疑われて人体解剖され死亡
・ツクモ(男/40)
…ゲーム会社のプロデューサー。政府が手を引いた後レジスタンスを率いる
・ホッタ(男/16)
…イッチの親友。イッチとコンビで漫才師になりたいという夢を持っている
・あめりん(女/16)
…イッチの同級生でカリスマ読者モデル。ホッタのことが好き
・ミカエル(男?/?)
…宇宙人。警備担当。エリート意識高いが、いつもイッチ達にしてやられる
・ラファエル(女?/?)
…宇宙人。人類へのメッセンジャー役。美しくカリスマ性が高い
・ガブリエル(男?/?)
…宇宙人。地球人に同情的な協力者
・プリメイラ(女/25)
…ブラジル人。サンパウロ側潜入チームの美人リーダー。イッチが憧れる
■これまでのあらすじ
・大阪とサンパウロに謎の巨大UFOが出現。何も起こらず20年経過。
・VRゲームを開発中にバグ?で円盤内部への侵入ルートを発見。
・船内に閉じ込められている地球人が多数いることを知る。
・DNA適合人材4人での救出作戦が練られるが作戦中止が決断される。
・ゲーム会社のツクモは決断に納得できず秘密裏に救出活動を引き継ぐ。
・適合者達はレジスタンス活動と知らずゲームのデバッグだと思っている。
・イッチと褐色の美女NPCとの邂逅。
・日系人心理カウンセラー・ガブリエル本田が協力者として加わる。
・VRtuberOGがイッチ達の作戦に乱入。仲良くなる。
・ガブリエルが策を巡らせOGの実況動画とUFOの関連を世間に暴く。
・飲食店に偽装された隠れ家でレジスタンス活動がリブートされる。
・イッチは迷わず契約更新。他メンバーは悩む。何が真実か正義とは何か。
・結局みんな契約更新。クリアするまでやめることなんてできない。
・5週間経過。作戦中にイッチが無茶して空間移送されてしまった。
・イッチの長い不在。OGが復帰しリーダーに就任。穴を埋める。
■この章のあらすじ
・OGのVR実況が世間の興味を引き、世界的人気を博す。
・ニコ、ミミミ、ぴーちゃんの視聴者人気もすごい。
・一方イッチは空間移送先で見知らぬヒーロー達に助けられる。
・それは褐色の美女・プリメイラと仲間達だった。
・褐色の美女はイッチがかつて1度だけ共闘した憧れの存在。
・お近づきになるためにサンパウロ側のUFOに残るが問題が。。
・イッチの肉体は大阪にあるためサンパウロで実体化できない。
・リスザル・ナルトに憑依することで解決するもののなかなか恋愛に発展できない。
・大阪側では宇宙人代表のスポークスマン・ラファエルが登場。
・OGをインタビュアーに迎え宇宙人の真意と人類との関わりを伝える。
・かつて地球人を導き神と崇められていたという話に信憑性はあるのか。
■本文
OG率いるご一行がUFO内部をVR実況しながら探索している。
ずっと以前…作戦初期の頃、物事は単純だった。ブリーフィングであたりをつけた目的地、監禁部屋へ向かい囚さん達を解放。来た道を連れて戻るというシンプルな内容で遂行時間も短かった。
今は違う。囚さんをたくさん救出した結果、UFO内の囚人密度が下がり、滅多に出会えない。なので、作戦は囚さん救出よりも次の段階の目標、UFOを地球から撤退させるための研究の方に重きが置かれている。
かつての作戦は派手で爽快なアクションゲームが好きな人にとってピッタリだったろう。例えばイッチはそういう志向の持ち主だった。
今はミステリアスなSF推理A D Vゲーム。アクションもたまにはあるけど、メインは地味な調査と考察。今、作戦メンバーを率いているVRtuberのOGは、どちらかと言うとこちらの志向の持ち主で、その深い洞察力は見る者を唸らせる。
そして大半のVRtuber視聴者に需要があるのはアクションよりも謎解きの方だ。大阪の上空に長年滞空し続けているUFOへの潜入捜査。20年来の謎が解明されつつある。
OGのVRtuber実況は世界レベルでの興味を引き、各国語翻訳もされている。視聴者数は凄いことになっている。
◆
ニコ、ミミミ、ぴーちゃんの視聴者人気も大変なものだ。
はにかみ屋で頑張り屋なニコ。
クールで頼れるミミミ。
ちょっとイっちゃってるぴーちゃん。
それぞれが訴求層の異なるキャラクター性を持っているため投げ銭人気は拮抗している。
あえて今の一番人気を挙げるなら、このところグンッとファンを増やしたニコだろうか。ニコの最初のインパクトはイッチに食ってかかるツンデレ的なキャラ性で、それにファンは萌えていたものだ。
そして今イッチが居なくなったことでニコに対して疑似的な恋愛感情を抱く層に猛烈に訴求するようになった。投げ銭はそれぞれのバイト代にボーナス加算されるため、経営難だったニコの実家の町工場はそれを元手に立て直しに成功したぐらいだ。
ちなみにOGはVRtuberとしてのポリシーから投げ銭を断っている。まあ投げ銭で稼がずとも動画再生の収益化だけで天文学的な金額を稼げているのだろうけれど。
◆
時は2カ月前に遡る。消失してからのイッチの動向を追おう。
イッチは無理に囚さんを助けようとして空間移送に巻き込まれた。
しゅるるるーーーっ、しゅぽんっ。
テレポート先はイッチが知るダンジョン…いや、UFO内部とは雰囲気がだいぶ異なっている。見慣れた陰惨で殺風景な景色に比べてここは荘厳で美しい。天井には青空が描かれていて開放感と明るさが感じられる。そうだな。イッチが同級生のホッタやあめりんとよく行くリーズナブルなイタリアンレストランの内装にちょっと似てる。居心地良い空間だ。好物のベネチア風グラタンが食べたくなってきた。…なんてことを呑気に囚さん相手に話ながら出口を探してたら敵に見つかってしまった。
敵の見た目は金の装飾をあしらった装備を身につけ神話的な出立ち、あちらに比べて何だか気品と高級感がある。でもやはりと言うか、こちらでも敵の攻撃は容赦ないものだった。
「ぴぎゃーっ」
怖がった囚さんがゆるキャラ化してしまった。ゆるキャラ囚さんはペンギンのようにヨタヨタと危なげな足取りで逃げ惑うばかり。標的とばかりに5〜6人の敵がゆるキャラ囚さんをロックオンし、全方位から襲いかかる。
忍者の姿からワンランク上のハイパー忍者に変身し気合いを入れ直したイッチが立ち向かう。敵の攻撃に先回りして囚さんをぬいぐるみのように振り回して攻撃が直撃しないよう体を入れ替えさせる。急に囚さんの重みが増した。激しく振り回された囚さんがついに目を回し気絶してしまったのだ。
ゆるキャラ囚さんを背負いハーネスで固定したイッチは機動力を大きく落としながらも敵の攻撃をかわし続ける。牽制で使っていた手裏剣が尽き、鎖鎌は敵に絡め取られて失い、敵の攻撃をしのぐために使っていた頼みの忍者刀も刃こぼれして使い物にならなくなってきた。
イッチは改めて思い知らされた。役割を決めてみんなで戦ってたから何とか戦えていたんだな。もうここまでか。囚さんを護りきれなかったのが残念だ…力不足で申し訳ない。ここで死んだらオレどうなるんだろう。大阪でリスポーンできるのかな?それとも復帰ポイントを失い永久消失なんてことになっちゃうのか。
朦朧とする意識の中イッチは残体力を使い果たし崩れ落ちそうになった。そんなイッチを支える優しい腕。フワッと巻き上がる風に乗って届くいい香りが脳裏の記憶を刺激する。
◆
満身創痍…ボロボロのイッチは天にも登るような心地良さで幸福感に包まれていた。褐色のすべすべな太ももに優しく膝枕されイッチはグデーっと呑気にバトルを観戦している。囚さんも無事だ。ゆるキャラのままだが落ち着いててイッチに寄り添いちょこんと座っている。
イッチが先程まで苦戦していた敵集団に立ち向かうヒーロー然とした3人の男たち。
パワー担当、スピード担当、戦略担当。
決められた役割を的確にこなして連携し敵を造作もなく次々と打ち倒していく。その間、膝枕の主はイッチの手を握りヒーリングパワーで体力回復をしてくれていた。
あっさりと敵を殲滅し終えた男たちはイッチに駆け寄る。
「オーッ、ニンジャ!」
逞しい緑肌の筋肉に赤髪が映える獣人男が大袈裟な身振りでイッチを指差し言った。
「っていうか、君、イッチ君だよね。ごっつさんの実況見てたよ。君達こっちに来てたんだ?」
マント姿の爽やかそうなスーパーヒーロー青年が親しげに握手を求めてきた。
「ゆるキャラの他は…君一人だけのようだな。おおかた仲間とはぐれちまって途方に暮れてた。そんなとこだろ?」
目深に被ったパナマ帽から値踏みするような目つきを向けるトレンチコート刑事の男が言った。
「こらこら。。そんなにいっぺんに話しかけないの。イッチ君、面食らってるでしょ」
膝枕の主が3人の男達を窘める。
治癒の効果で意識がだいぶしっかりしてきたイッチが膝枕の主の顔を改めて確認する。
「!!!」
「久しぶりね。覚えてくれてるかな?」
以前に共闘して以来イッチが憧れ続けていた褐色の美女NPC、その人が自分を膝枕してくれている。サンバ衣装を纏った褐色の美女は圧倒的オーラを放ち輝いて見える。
「あーーーっっっ!!」
イッチは飛び起きて後退りし、大袈裟な身振りで褐色の美女を指差した。
「ぴぎゃーっ」
イッチの奇声に驚いた囚さんがオタオタとそこらを走り始めた。
「あっ…あっ…あっ…」
イッチは感極まった調子で褐色の美女を見つめて何か言おうとするが言葉に詰まる。
「あっ、あっ、会いたかったですっ」
「あっ、あっ、あの時からあなたのことが忘れられなくてっ」
「あっ、あっ、愛してますっ。ってオレ何口走ってるんだろ。でっ…でもっ。本気ですっ!」
イッチは感激のあまり涙ぐんでいる。
「あーー…」「えーーっと…」「今度は私が面食らう番ね。。」
◆
「褐色の美女NPC」とその仲間達、名前はこうだ。
・プリメイラ (女)リーダー。サンバ衣装の褐色の美女
・セグンド (男)パナマ帽にトレンチコート姿の刑事ヒーロー。シニカル
・テルセイロ (男)マント姿のレトロな見た目のスーパーヒーロー。爽やか
・クアルト (男)緑肌に赤髪の獣人ヒーロー。元気いっぱい
褐色の美女・プリメイラは25歳。イッチは16歳の高一なのでより9つ上だ。突然の愛の告白にもプリメイラは狼狽えることなく自分のチームを朗らかに紹介する。イッチは軽くあしらわれていることに気づかず褐色の美女に目がハートマークのままだ。
何とこのチームは全員血縁関係にあるそうだ。男メンバーで一番年上のセグントが9歳、テルセイロが8歳。クアルトは6歳。この3兄弟をいとこのプリメイラが束ね面倒見ている。
元々は大学院生のプリメイラが独自の研究でUFO内部の探索をしていた。イッチ達の活躍をVR実況で見たことをきっかけにブラジル政府が動き、いとこ達を巻き込むかたちで結成されたヒーローチームなんだそうだ。
確かにDNA適合の観点で言えば若年層になるほど適合率が上がるし血縁関係であればDNAが合致しやすいのも頷ける。合理的な編成と言えよう。…にしても小学4年、3年、1年の男児がヒーローとは。でもちょっと話した感じでは年齢の割に成熟した会話ができていた。変身は肉体の強化と同時に精神発達の効果もあるみたいだな。
ちなみにヒーローネームの命名はイッチ達と同じように1234という意味だそう。ポルトガル語の序数とのことだが、ちょっと難しくてよく分からない。
ポルトガル語…
イッチも何となく予想していたが、ここはブラジル・サンパウロ側のUFO内部。20年前大阪と地球を挟んで真反対のここサンパウロに巨大な円盤が飛来した。イッチは空間移送に巻き込まれ地球の反対側まで来てしまったということになる。
プリメイラ達は親切にも大阪側のスタート地点に戻れる移送ポイントまで案内してくれた。が、イッチは帰るつもりはなかった。囚さんだけを帰して彼女達と行動を共にすることにした。
◆
イッチは褐色の美女・プリメイラとプライベートでお近づきになりたい野望を抱きこちら側に残った。しかし野望実現はそう簡単にはいかなかった。問題はイッチの肉体が大阪側にあること。UFOからプリメイラ達と共にVR移送でサンパウロの現実に戻ろうとしてもイッチの体はこちら側にはなく実体化できないことが分かった。
イッチは打ちのめされた。しかし諦めなかった。
彼女達がサンパウロの現実に帰ったあと一人でUFO内部に残って敵の情報端末から手段を探った。こんなに勉強?で頑張ったことは人生でこれまでなかった。イッチはやればできる子、要領の良さと勘の鋭さは人一倍で、本気でやりたいと思ったことは大抵モノにできる。
鍵となるのは「ナルト」だ。
ラーメンに入っている渦巻き模様の具材ではない。プリメイラのペットの名前だ。リスザルのナルトは片時も離れず彼女と共にいる。VR移送をも成し遂げるこの小猿は安全な時にはプリメイラの肩や頭の上にいる。バトルの時にはウエストバッグの中や時には胸元の服の中に隠れる。決してプリメイラから離れることはない。イッチはこのリスザルに魂を便乗するかたちでサンパウロの現実にVR移送する方法を思いついた。
ナルトにはこっそり便乗することもできた。ナルトを介して現実世界のプリメイラに気づかれないまま濃密なスキンシップをはかったり着替えシーンなど際どい場面を目撃したりできるかもしれない。そんなやましい考えも高一男子の頭をよぎったがイッチがしたいことはセクハラではない。プリメイラと真剣な交際がしたいのだ。
プリメイラに自分の研究を打ち明けナルトに便乗することを告げて了承を得た。
◆
そこは、ブラジル・サンパウロの大学研究室。褐色の美女は現実でも美しい。というかサンバの衣装を着てないだけで顔やスタイルはVRの中と一緒だ。彼女の容姿は自分の理想と完全一致しているということなのだろうか。
なんとかプリメイラのプライベートに近づけたものの、小猿ナルトの姿でどうやって彼女と真剣交際ができるというのか。イッチの野望…それはプリメイラとの真剣交際を世間に発表して世界を救う大型カップル誕生…ともて囃され祝福されること。そこに辿り着くにはまだまだクリアすべき課題が山積みだった。
◆
大阪にある魂が抜けたイッチの肉体を前にツクモは困っていた。
昏睡状態と言って差し支えない状態のイッチをどのように取り扱うか。とりあえず今はアジトにあるコールドスリープケースに入れてある。
UFOの端末へモニタリングで探りを入れたガブリエル本田によるとイッチはVR移送でサンパウロ側のUFOにいて、どうやら自分の意思で向こうにしばらく滞在するつもりらしい。
バイトから帰ってこないとイッチのご両親は心配するだろう。警察に捜索願いを出されたら大ごとになり、このレジスタンス活動がバレてしまうかもしれない。
どうにか誰もが騒ぎ出さない嘘はないものか。ご両親、学校、友達。誰もが納得いくような平和な嘘。
「急に留学する事になりました」両親も知らない間に決まる留学なんかない。
「自転車日本一周の旅に出ます」多少平和だが捜索願いは出されそうだ。
「UFOに攫われました」真実に近く警察も手が出しようないが平和とは言い難い。
………。つまり、そんな都合の良い嘘はないという事だ。
では正直に昏睡状態のイッチを病院に入れてバイト中に倒れたと伝えるか。誠意ある対応ではあるが検査でどんな奇妙な反応が出るか心配だ。場合によっては騒ぎになるかもしれない。
いっそ身代金誘拐を装うか。いや、ダメでしょ。普通に大騒ぎになるに決まってる。
ガブリエルに相談した結果多少モヤモヤする方法ではあるのだが、ある方法でやり過ごすことにした。しかしこの方法はのちにある少女…隠しても仕方がないか…ニコを深く傷つけることになるのだった。
◆
OGの考察の鋭さで色々宇宙人にとって不都合な真実が判明していく中、宇宙人側は方針の転換を図る。地球人への正式なコンタクトをとり状況説明を行うという。宇宙人側のスポークスマン・ラファエルが登場。人類へメッセージを伝える。
「10の質問に“はい”か“いいえ”で答えましょう」
「その後、我々の真意を伝えるための短い声明を出します」
「インタビュアーは公平で広い見識を持つOG氏を指名します」
宇宙人側がUFO内部にセッティングした会場に、いつものようにVR移送で訪れたOGはラファエルに単独会見を行う。ニコ、ミミミ、ヨバンは罠であることに備え同じく人体スキャナからのVR移送で会見に立ち会い見守っている。
OGは用意した10の質問を静かに読み上げ始めた。ラファエルが次々と澱みなく答える。
①あなた達は地球外生命体、宇宙人である
はい
②あなた達は地球を攻撃しに来た
いいえ
③ 宇宙船は外部への攻撃手段を持っていない
はい
④あなた達は地球人と交流しに来た
いいえ
⑤ あなた達が地球に来た目的は地球の…地球人の観察である
はい
⑥ あなた達はしばらくの間、地球から撤退する予定はない
「しばらく」の定義が曖昧なため、返答不能
⑥あなた達は10年以内に地球から撤退する予定はない
はい
⑦あなた達は宇宙船内に地球人を拉致し研究に使っている
言い方は気に入らないですが、はい
⑧研究に使われた後、監禁した人を解放している
はい。あなた達に奪われるようになる前の話ですが…
⑨あなた達は我々…地球人に対して怒っている
いいえ
⑩ あなた達は「人類換装企劃」を実行中で我々地球人の中に紛れている
そんな具体的なワードまで出るとは思っていませんでした。
それは11個目の質問なので残念ながら答えられません。
⑥の質問が2つあります。
いえ、そんなイジワルはやめましょう。
答えは「はい」です。
それでは声明を発表します。我々はそっと観察したいだけ。学術的知見を得るため皆さんをずっと昔から定期観察してきました。5〜6千年周期で訪れてその度に50〜60年程定点観測していました。観察のために訪れるのは今回で11回目になるでしょうか。
前回その兆しがありました。
我々の存在を認識し究明しようとするまでの文化レベル上昇が見られたのです。数少ない交流を通して、あなた方の祖先は我々を神として崇めました。日照りや疫病の時には、あなた方は儀式を通して我々との交信を試みたりもしました。我々は不干渉を原則としましたが人知れずあなた方が言う神の奇跡も起こしてきました。
確かに今、UFO内部にあなた方の同胞、地球人がいます。しかしそれは迷える子羊を一時的に保護したに過ぎません。
「人類換装企劃」は迷える子羊を幸せへ導くためのプログラム。先ほどの質問にもあったようにあなた達がUFOから奪い返さなくてもプログラムが完了すれば地上に帰してきました。
不干渉を貫くという方針にこだわりすぎた結果、あなた達に要らぬ疑念を抱かせてしまいました。方針を転換し説明義務を果たします。
どうか今話した事実をしっかりと受け止め、地球人の代表として今後の対応を表明してください。すぐでなくても構いません。あなた達の中でしっかり議論して我々の存在を受け止めてほしいのです。
◆
思慮深いOGは自分の余計な意見や感想は付け加えず会見を終えた。会見はもちろんミニドラゴンの目でVtube実況されていて世界に配信された。
アジトではツクモとガブリエル本田が会見をモニターしていた。
「やれやれ、神か。。面倒な話になりそうだな」
ツクモはボヤいた。
「ラファエルはそうなんです。いつでもいい奴そうな顔して答えに困るエグい選択を迫ってくる…」
ガブリエルは答えた。
「でも相手の思惑通りに進ませはしませんよ。嘘を引っぺがし一気に攻勢をかけカタをつけます」
そう語るガブリエルの目にツクモは揺るぎない決意を見た。
(11月配信_九章_天国サイドと地獄サイドにつづく)
■Kちゅけの独り言
本連載に関わるお伝えしたい重要事項がありますが今月はまだ言えません。
今週末、11/01(金)に次回投稿を行い、その時にお知らせしたいと思います。
ゲーム会社新人カリキュラム課題「なろう」小説連載で人気得るべし…を遂行中。
という訳で…ブックマーク、☆評価をよろしくお願いします~
上下 Kちゅけ(ゲームデザイナー)





