09_七章_裏側へ、そしてリーダー交代
■著者前書き
こんにちは。著者の上下Kちゅけです。
恋人に振られました。毎日顔を合わせるのが辛いです。
好きな人に拒絶された時その人のことをまだ好きだったとして人はどうすべきでしょうか。
まだ好きなんだアピールをするのは相手にとって迷惑な話なんだそうです。
好きを隠して普通だよと自分にウソをついて、それも相手に見透かされて。
業務上交流が不可欠なのでストーカーとは言えないはずです。
溢れ出てしまう想いにまで法律は適用されるのでしょうか。
同僚…いつも私の小説を最初に読んで意見をくれる信頼している同僚メンバーは警告します。
こういった類の告白を不特定多数が見られる場所で行うことは法令順守違反の可能性が出てくるのでやめとけとのことでした。
好きなその人に対して何らかのハラスメント行為にあたる可能性があるそうです。
毎日顔を合わせる業務上交流が不可欠なKちゅけを振った元恋人って誰なんだろう。
特定する手掛かりはこの連載の前書き、後書き、もしかしたら本文にあるかもしれません。
色んなハラスメントがあるかと思いますが、これもハラスメントになるのでしょうか。
前書きハラスメント。マエハラ。
法令順守違反うんぬんの前に、これ当てつけだろ。リベンジ前書き…
アドバイザーの同僚は、もうどうなっても知らんと申しております。
■もくじ
・01月配信_零章_著者前書き
・02月配信_序章_セレンディピティ
・03月配信_一章_集められた4人
・04月配信_二章_活動開始
・05月配信_三章_デバッグ日誌
・06月配信_四章_やかましいデバッガー達
・07月配信_五章_静かなリターナー達
・08月配信_六章_符合
・09月配信_七章_裏側へ、そしてリーダー交代 ← ◆今ココ
・10月配信_八章_ベストカップル・オブ・ザ・ワールド
・11月配信_九章_天国サイドと地獄サイド
・12月配信_終章_俺たちの戦いは始まったばかりだ!
■人物
・イッチ(男/16)
…適合者番号1。忍者。中の人はゲーム好きでアホな男子高校生
・ニコ(女/15)
…適合者番号2。怪力虎男。中の人は町工場の看板娘
・ミミミ(女/26)
…適合者番号3。美人アサシン。中の人はゲームエリートのセレブママ
・ヨバン またはピーポッド、ぴーちゃん(男/35)
…適合者番号4。プリマドンナ。中の人は野球観戦好きな実家住みおじさん
・OG またはおんりーごっつ、ごっつさん(男/?)
…適合者番号5。竜人。中の人は人気のゲーム実況VRtuber
・エンドー(女/29)
…適合者番号0。ゲームプログラマ。宇宙人だと疑われて政府に人体解剖され死亡
・ツクモ(男/40)
…ゲーム会社のプロデューサー。政府が手を引いた後、レジスタンスを率いる
・ホッタ(男/16)
…イッチの親友。イッチとコンビを組んで漫才師になりたいという夢を持っている
・あめりん(女/16)
…イッチの同級生でカリスマ読者モデル。ホッタのことが好き
・ミカエル(男?/?)
…宇宙人。警備担当。エリート意識高いが、いつもイッチ達にしてやられる
・ラファエル(女?/?)
…宇宙人。人類へのメッセンジャー役。美しくカリスマ性が高い
・ガブリエル(男?/?)
…宇宙人。地球人に同情的な協力者
・プリメイラ(女/25)
…ブラジル人。サンパウロ側UFOの潜入チーム美人リーダー。イッチが憧れる
■これまでのあらすじ
・大阪とサンパウロに謎の巨大UFOが出現。何も起こらず20年経過。
・ゲート通過型VRゲームを開発中にバグ?で円盤内部への侵入ルートを発見。
・船内に閉じ込められている地球人が多数いることを知る。
・DNA適合人材4人を使った救出作戦が練られるが「作戦中止」が決断される。
・ゲーム会社のツクモは、決断に納得できず秘密裏に救出活動を引き継ぐ。
・適合者1号イッチはレジスタンス活動と知らずゲームのデバッグだと思ってる。
・イッチと褐色の美女NPCとの邂逅。
・日系人心理カウンセラー・ガブリエル本田が協力者として加わる。
・適合者1号に続き2~4号もデバッグバイトとして雇われる。
・VRtuber「OG」が作戦に乱入。仲良くなる。実況は視聴者に好評を博す。
・UFOからの救出者は100人超えるが感謝されているかというと微妙だ。
・活動のケリのつけかたに苦悩するツクモにガブリエルが真実を告げる。
・OGを招待し実況させたのは彼でUFOによる拉致被害を世間に知らせたい。
・「符号」を仕掛けてOGの実況動画と大阪上空のUFOの関連性を世間に暴く。
・悩んでいたツクモも覚悟を決める。
・真実を知ったイッチ。ヒーローの自覚と共に日常を大切にしたいと改めて思う。
・アジトを拠点に新たなレジスタンス活動が開始される。
■この章のあらすじ
・飲食店の保冷室の奥に隠された隠れ家。
・そこにメンバーが招集されツクモからレジスタンス活動の真実が語られる。
・真実を知ったうえで再度作戦に参加するのか。メンバー達に判断が委ねられる。
・イッチは迷わず契約更新。他のメンバーは悩む。何が真実か、正義とは何か。
・全員契約更新。結局みんな、この作戦の魅力に取りつかれていているのだ。
・クリアするまでやめることなんてできない。
・隠れ家を発見されないように尾行をまく。日常もゲーム性を帯びる。
・あめりんを巡ってのホッタとの口論。青春だね。
・5週間経過。
・作戦中にイッチが無茶して空間移送されてしまった。
・イッチの長い不在。OGが復帰しリーダーに就任。穴を埋める。
■本文
飲食店の奥にある保冷室の厚い鉄扉を開けると、そこは雪国だった。いや、そんなことはない。寒くすらない。
保冷室の扉はアジトの入口だと気づかれないようにするための偽装。そして万が一、気づかれた際の強硬突入にも耐える頑丈さを兼ね備えた合理的な理由でこの形状をしている。
入るにあたって入口の隠しカメラによる顔認証だけでなく念には念をで合言葉(声紋認証)も必要とした。合言葉はそれぞれの愛称にちなんだものが用意された。
さんど イッチ
ニコみ うどん
聞きミミ ミかん
月ヨ バン茶
はやく ツク モち
ガブリ エルさいずぴざ
この合言葉はメンバー全員が初めてアジトに集まった会議で皆で必死に考えた。しばらくはそれで運用されたが次第に面倒くさくなって、ただ名前を言うだけで良いルールに変更された。
◆
飲食店の奥にある保冷室の厚い鉄扉を開け、長い通路を抜けると、そこは雪国だった。いや、雪国ではない。1度でもイラッと来るのに何度もやるものではない。
長い通路を抜けると、そこはサイバーパンクな空間が広がっていた。シンプルに表現するとすると「ゲーミングルーム」。暗めのルーム照明の中、各PC機器が虹色の光を発している。PC機器じゃない家電や家具も不必要と思われる箇所から光を放ち自己主張している。
広さは高校の教室4部屋分ぐらいあるだろうか。機材の量に比べたらだいぶ広くてゆったりしている印象だ。部屋の中心にはこれまでゲーム会社で使っていた3D人体スキャナゲートがある。それを制御するPCもそのままだ。
部屋の奥半分は映画館の客席のように傾斜があり、その奥に壁一面の大型モニターが設置されている。
PCとは違うサイバーな機械も色々あり、映画館というよりハリウッド映画に出てくる指令室や管制室っぽい。それに色々サイバーな機械の中にはUFO内部で見たホログラム映像など地球外技術によるものも含まれていた。
イッチはツクモから連絡受けてから実際にここに来るまでの数日、アジトのことを色々空想していたが想像の1.5倍はすごかった。普通にカッコ良かった。
イッチが部屋に入り、辺りに魅入って一歩も動けないでいると横から声が掛かった。
「イッチ君、来てくれて嬉しいよ。さぁ、こっち来てくつろいで」
入口のすぐそばにあるゲーミングソファには知ってる顔があった。ツクモとガブリエル本田だ。ガブリエルはバイト時の定期メンタルチェックでしか顔を合わせたことがない。
早く来すぎたイッチに続き、ニコ、ミミミ、ヨバンもやって来た。後から来たメンバー達もこの空間に圧倒されているようだった。
◆
スキャナゲートによるVR移送ではなく別のVR会議システムに案内され、適合者4名と運営者2名は会議を始めた。会議の冒頭はこのアジトの警備システムなどの申し送り事項説明が行われた。
その際に合言葉の相談になって会議は大いに盛り上がり、適合者達の緊張感が解された。
事情説明は事前に2度のDiscord連絡で伝えられていたので基本的な情報は省かれた。その上で詳細情報の説明が行われた。内容はこうだ。
【重要事項】
・UFO潜入作戦において君達DNA適合者の生命に危険はない
・君達が逮捕される可能性はない
・レジスタンス活動を辞めたければいつでも申し出て欲しい
【経緯説明】
・イッチ達が知らない事実を隠さず説明。読者諸君は「■これまでのあらすじ」参照のこと
【今後の計画】
・君達とは再度雇用契約と守秘義務契約(NDA)を結び直し、救出作戦を再開させたい
・作戦目標①拉致被害者の全救出(情報分析の結果、残り50人弱と判明)
・作戦目標②UFOを地球から撤退させる ※方法については現在作戦検討中
【備考】
・ガブリエル本田氏は宇宙人だ。地球人を助けるための行動をしてくれている
・情報漏洩は困るので辞める際には宇宙人技術で本件に関わる記憶を消去させてもらう
・VRtuberOG氏とは別途契約を調整中
一通りの説明の締めくくりとしてツクモからは改めて謝罪と協力要請がなされた。時給はこれまでの倍額が提示され、各種ボーナス出来高払いもチャレンジングな要素が色々足され申し分なかった。
イッチとしては一番気になっていたごっつさん(OG)の件が未確定で不安はあるが、断る理由はないと考えていた。他のメンバーはどうなのだろう。
◆
ツクモとガブリエルがVR会議から退席した。契約判断を行うにあたって家族や友人にも相談できないし本人だけでは厳しかろう。同じ立場である適合者4人で話し合ってみては?との配慮だった。
作戦を通じて気心が知れたメンバー達は率直な意見交換を行った。
【宇宙人の真意について】
③「UFOに拉致されている人達は犯罪者や自殺志願者だって?」
②「もしかしたら上から街を見張って不幸な人を保護してるのかな?」
①「UFO…宇宙人がわざわざ地球まで来て善意の保護活動をしてるってこと?」
②③④「なさそー」
④「もしそうだとしたら善意の宇宙人から被害者奪ってる我々って…」
②「悪者ってこと?」
①「けど彼ら、バトル中に我々や囚さんに容赦ないよね?」
④「彼らにとっては正当防衛なのかも。侵入者は自分達だし」
③「そもそも地球への侵入者は彼らよ」
①「自分としては宇宙人がゴッドゲームするために大阪来た説を推したい」
②③④「なさそー」
※ゴッドゲームとは…神視点でゲーム中の人々にちょっかい出し、導いたり滅ぼしたりするシミュレーションゲームの一種
【ガブリエル本田氏について】
①「ガブさんが宇宙人って信じられる?」
②③④「信じられる」
①「えっそう?」
②「もし知り合いの中で宇宙人がいます、誰ですか?と問われたら第一候補」
③④「同意」
①「理由は?」
├②「メンタルチェックの時、プライベートの悩みとか何でも見透かされた」
├③「服装のセンスかな?コーデュロイに蝶ネクタイはさすがに浮いてた」
└④「浮世離れしてる程、良い人なので」
①「確かに宇宙人。④に浮世離れしてると言わせる人は宇宙人に決まってる」
【契約締結について】
①「自分は契約を交わすつもり。断る理由はない」
②「怖くない?本当の作戦だったなんて」
③「確かにそう。ゲームとして楽しんでたのにあれが現実だったなんて」
④「自分はVRでは人格無くすので何とも言えない」
①「ただのゲームではなく実際の人助けだったと聞いて鳥肌たった」
②「怖かったってこと?」
①「いや、感動して。自分が本当のヒーローだったなんて夢のよう」
②「その話は…もしかしたら騙されてるかもしれないし」
③「さっきの話にあったヒーローではなくヴィランかもってやつね」
④「確かにこの作戦が正しいとは現時点では断言できない」
【契約締結について2】
①「意思は変わらない。契約するつもり」
②「いつでも辞められるそうなので、もう一回だけやってみる」
③「それ、いい。自分もそうする」
④「皆さんがそうするなら自分だけ反対する理由はない」
勿体つけた議論がなされたが、イッチはみんなが契約することは分かっていた。本当のところ、僕らはただ単にこの作戦を愛しているのだ。クリアするまではやめる訳にはいかない…
1つ残念だったのはOGの件。事情により別案件を優先しているとのことで、少なくともしばらくの間は作戦参加することはないとの話だった。
◆
現実の出来事と把握した上での最初のバトルは、何もかも勝手が違った。ゲームをデバッグしているのはない。人類を代表して悪の宇宙人と戦っているんだ。本当に殺しているんだ。
緊張と興奮、恐怖感と罪悪感。しかし重苦しい空気が流れたのはつかの間で、すぐにいつものノリに戻った。理由はよく分からない。VRを通しての出来事だから?宇宙人を倒しても生々しい死体は残らず瞬時に消えるから?自分達は正義を成しているんだという自覚が芽生えたから?
宇宙人の防衛システムがバージョンアップして凶悪になったが我々の成長段階と噛み合い、やりがいが増した。そして再契約時に追加された各種ボーナス要素のノルマ条件が絶妙に歯ごたえがありゲーム性を高めた。
熱中できる何かに取り組む時、人は…その熱中を妨げるような事柄から目を逸らすことができるのかもしれない。
「もう一回だけやってみる」のお試し期間を過ぎても、この戦いを辞める者はいなかった。
◆
VR内での作戦の楽しさとは別にもう一つの楽しみもできた。現実世界でのスパイごっこだ。
警察(公安?)や報道関係者と思われる人につけられている気がする。アジトの場所を知られる訳にはいかなかった。
尾行をまくための変装や行動。ガブリエルから支給された宇宙人技術のスパイグッズ…例えば閃光を放つと同時に記憶を消去する装置や光学迷彩で姿を消せるマントなど。実際には尾行されていないにも関わらず、イッチは「ごっこ遊び」を楽しんだ。
日常がワクワクするゲーム空間に変わった。
◆
イッチは全能感というかフワフワと地に足がつかないような、そんな感覚を抱いていた。ヒーローとして宇宙人と戦う救出作戦も、レジスタンスとして政府を出し抜くスパイ作戦も、どちらも冴えわたり大充実している。
そんな中、日常生活に対して自分の中でだんだん興味が薄れているように感じられた。日常の活動が…どうしても非日常で行っているヒリつくような刺激に比べて取るに足らない小さなものに思えてしまう。
これは罠だ。こうして人は非日常に人格を取り込まれて不幸になっていくんだ。
そんな成功者やヒーローの物語を多く観てきた。自分はそうなるまい。
ホッタとケンカをした。漫才は以前ホッタに説教食らってから、この上なく真面目に取り組んでいる。お笑いの世界でもてっぺんを目指したい。本気でそう思っている。
原因はあめりんだ。あめりんは可愛い。あめりんはいい子だ。ホッタはあめりんに惚れてるらしい。
オレがデレデレとあめりんと話をしていたらホッタがツンケンしてきた。
お前もデレデレしたらいいやんと言ったら、それはイヤなんだそうだ。
なんだそれ。お前がそうしたくないのは構わないが、オレのデレデレを止める権利はないだろ。
別に止めていない。
いや、明らかにツンケンしてただろう。
そうだとしたら、お前のデレデレがキモくてそれが態度に出てしまったのかもしれない。
人のことキモいって、しょっちゅう言うよね、君。シンプルに言うよ、それヤキモチだから。
ふぁっ?!(なんじゃらかんじゃら)今日お前とは口聞かない!
これだよ、これ。これが青春だ。今しか味わえない日常を等身大で生き、楽しまなきゃ。
ホッタとは翌日普通に仲直りした。
◆
【物語中断】著者注記
次のシーンから起承転結の【転】に突入します。
アニメやドラマなんかで軽快な曲に合わせて場面が次々と走馬灯のように流れるシーンありますよね。
あれイメージして【転】シーンに突入する前の約5週間の【承】の出来事をご覧ください。
走馬灯のエピソード
・UFO内の救出作戦。久々登場のミカエルがイッチに抱くライバル意識→友情芽生えを感じさせる
・UFO内の救出作戦。ぴーちゃんがUFO内部構造をなぜか知り尽くしていて活躍する
・UFO内の救出作戦。なぜかOGの相棒ミニドラゴンだけがやって来て実況配信する
・現実世界でスパイごっこ。突撃系のVRtuberにつけ狙われるがガジェット駆使して撃退する
・現実世界でスパイごっこ。イッチ、ニコ、ミミミ、ヨバンがガジェット駆使して壮大な鬼ごっこをする
・現実世界でスパイごっこ。アジトのニセ飲食店に客が迷いこみイッチとニコが注文受けててんやわんや
・ホッタ、あめりん青春一コマ。3人の日常会話でUFOの話になりイッチは正体明かしたくてウズウズ
・ホッタ、あめりん青春一コマ。3人がいるファミレスに強盗。イッチが隠れてガジェット使って撃退
・ホッタ、あめりん青春一コマ。ホッタが好きなあめりんをイッチは自分こと好きだと勘違いし続ける
・ツクモはやっぱり日常何もない。空っぽな人生。ハードボイルド感。亀を飼うことにした
・ガブリエルは不思議な人だ。イッチ達は宇宙人の生態に興味津々だが謎に今一歩迫れない
・青空。眩しい日差し。巨大UFOが作る日陰。鳴り響く軽快な音楽。この時が永遠に続けば良いのに
◆
【物語再開】
目標、拉致被害者の全救出。
最新の情報分析によると残り20数人と判明。レジスタンス活動を再起動してから5週間程経過した。
これまで通り土日祝を除く週5日作戦を決行している。5週間なので平均1日1人程度の拉致被害者を救出していることになる。救出のペースがぐっと落ちた。
以前は多い日には7~8人を救出できていたが最近はそうもいかなかった。理由はいくつかある。
UFO内の拉致被害者数が減ったからだろうか、単純に1つの部屋に収容されるに囚さんの人数が減った。以前は4~5人が普通だったが、最近は1~2人となっている。
そして厄介なのがUFOが新たに導入した空間移送の防御システム。囚さん部屋に目星をつけて向かっている最中に制限時間が発動し、時間が過ぎると囚さんが部屋ごと移送されもぬけの殻になってしまう。
これのせいで頑張って辿り着いたのにもういない…収穫ゼロということがザラになった。正直凹む。なので最近は拉致被害者救出を目標とするのではなく、その次の段階の目標として掲げているUFO撤退に向けたヒントを収集することをメインの目標に切り替えている。UFO内部での調査を進める中で運が良ければ救出も…という心持ちで取り組んでいる。
ゲームで言うとジャンルが「シューティングアクション」から「推理アドベンチャー」に変わった感じでメンバーの一部に不満が溜まっている。一部というかイッチだ。イッチに不満が溜まっている。
ごっつさん…、イッチが大ファンのVRtuber「おんりーごっつ」は、あれ以来ずっと現れない。どうやら他のゲーム案件で忙しいようだ。…の割には配信はされていないが…
褐色の美女NPCにも会っていない。たった一度だけ現れて共闘したことをイッチはいつまでも忘れられない。会いたい…
ちょっとイラついていたんだと思う。作戦中、時間制限ギリギリなのに強引に部屋に入り、囚さんを救い出そうとしたイッチは、そのまま空間移送に巻き込まれてしまう。
◆
イッチが消失して1週間が経過した。
ガブリエルの調査によると死んだのではなくて別のUFO(地球の裏側)に移送されたらしい。
入れ替わりでイッチが待ち焦がれていたVRtuber「おんりーごっつ」が再加入する。と言っても、OGがアジトに現れるようになった訳ではなく、これまで同様遠隔参戦だ。一カ月半ぶりのOGは、どこで何をしてたのか竜人の片方のツノは折れ、片目には大きな傷がついている。
パッと見、痛々しいというか悲壮感をまとったように見える外見の変化。でも接してみるとこれまで同様、礼儀正しくてそれでいてフランクな態度に、ニコ、ミミミ、ぴーちゃんはホッとした。
どんな時にも楽天的でムードメーカーだったイッチを失い、メンバーの中でも特にニコの動揺は大変なものだった。そんな精神的な穴をOGが気づかいと活発な雰囲気で埋めてくれる。
ツクモやガブリエル達、運営メンバーはわざわざ無粋なことは言わなかったが、イッチが務めていたリーダーの役職は事実上OGに引き継がれていった。
OGは作戦に参戦するだけでなく以前行っていたように実況配信を復活させた。
前回の配信から一カ月半の間に世論は二つの対立する考えに分かれつつあるようだった。
【A】UFOは良からぬことをしている。政府は何かを隠している。
【B】遊び感覚でUFOにちょっかいをかけている不届き者がいる。危険だ。
OGの配信を熱狂的に支持する主に若年層は【A】の考えの人が多い。
それより上の世代で配信を直接見ていない層は【B】の考えの人が多い。
実際にOGの配信を見た人の中でもゲーム感覚の軽いノリで行われる救助作戦を危険視する向きもある。
そして……イッチが消失して2カ月が経過したが帰ってくる気配は無い。
(10月配信_八章_ベストカップル・オブ・ザ・ワールドにつづく)
■Kちゅけの独り言
「前書きハラスメント」の件。
いくら何でもKちゅけ、痛い奴過ぎるだろう。きっと釣りだ。炎上狙いの釣りに違いない。
そう思っていただいて結構です。
そもそもKちゅけなんて実在するのか?
ゲーム会社の社員って本当か?
新人カリキュラムで小説を連載させる会社なんてあるものなのか?
ゲームクリエイターにあこがれた誰かが空想で作り上げた人物に空想させた物語が連載されているだけなんじゃないか?
実際のところはどうなんでしょうね。
失恋のショックで真実が何なのか自分でも分からなくなってしまいました。
ゲーム会社新人カリキュラム課題「なろう」小説連載で人気得るべし…を遂行中。
という訳で…ブックマーク、☆評価をよろしくお願いします~
上下 Kちゅけ(ゲームデザイナー)





