表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流浪人勇者  作者: 神座光
3/5

力の眩しさ

子供達の気合で目が覚める。頭は嘘みたいにスッキリしていた。階段を下りて外を覗くと、ルミと子供達が素振りをしていた。

ブオンッ。

木剣と空気の擦れる重たい音が微かに聞こえる。

「もっと真っ直ぐ、余計な力を抜いて。」

指導しながらルミも剣を振る。

ビュッ。

明らかに子供達とは違う音が鳴った。

「ルミちゃんは元々騎士を目指していてね。王都の騎士学校を次席で卒業したんだよ。」

朝食の用意をしていたおばさんが説明してくれる。

「次席って、なんでまたこんなところに。」

「さぁ、そこまでは知らないけど。あの子も訳アリってことよ。この村にはそんな人ばかりだわ。」

「そうなのか。」

確かに村長の俺への対応も慣れた感じだった。

「シン、朝食の用意ができたからあの子達を呼んできてくれない?」


「シン、今日は一緒に食べるの?」

隣の子に聞かれた。

「嫌か?」

大人気無い返しをしてしまう。

「うぅうん、楽しみ。」

こっちが恥ずかしくなるくらいの無邪気な笑顔だった。

「シン昨日みたいに怖い顔じゃない。」

別の子が言う。そうなのだろうか。ルミも何やら微笑んでいる。俺は照れ臭い気持ちを隠すように無言で飯を食い、農場へと向かった。


仕事を終えて帰ってくると、今度はルミが一人で剣を振っていた。俺に気付くと素振りを止め微笑みかけてくる。

「お疲れ様。子供達なら中で掃除中だぞ。」

「ここで、何してるんだ?」

「?」

キョトンとされる。

「見ての通り素振りだが・・・。」

「いや、そういうことじゃなくて。お前の事、聞いたんだ。騎士学校を卒業したって。しかも次席。そんな凄い奴が、何でこんな田舎の孤児院で子供達の面倒を見てるのか、単純に疑問に思ったんだ。」

突如、ルミの顔が信じられないほど暗くなる。怖い・・・、と言うより、寂しい・・・。

「何だそのことか。大した話じゃないよ。投げ出してしまっただけさ。自分の弱さを思い知ってね。」

「っ!」

胸が痛くなる。大した努力もしなかった俺とは違う。厳しい環境で、必死にやって、かなりの実績を出した末の挫折。

「この話は止めにしよう。面白くもないし、あまり良い気分でできるものではない。」

暗い空気のまま終わり、夕食へと向かった。ルミは子供達と顔を合わせる前には笑顔に戻っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ