力の眩しさ
子供達の気合で目が覚める。頭は嘘みたいにスッキリしていた。階段を下りて外を覗くと、ルミと子供達が素振りをしていた。
ブオンッ。
木剣と空気の擦れる重たい音が微かに聞こえる。
「もっと真っ直ぐ、余計な力を抜いて。」
指導しながらルミも剣を振る。
ビュッ。
明らかに子供達とは違う音が鳴った。
「ルミちゃんは元々騎士を目指していてね。王都の騎士学校を次席で卒業したんだよ。」
朝食の用意をしていたおばさんが説明してくれる。
「次席って、なんでまたこんなところに。」
「さぁ、そこまでは知らないけど。あの子も訳アリってことよ。この村にはそんな人ばかりだわ。」
「そうなのか。」
確かに村長の俺への対応も慣れた感じだった。
「シン、朝食の用意ができたからあの子達を呼んできてくれない?」
「シン、今日は一緒に食べるの?」
隣の子に聞かれた。
「嫌か?」
大人気無い返しをしてしまう。
「うぅうん、楽しみ。」
こっちが恥ずかしくなるくらいの無邪気な笑顔だった。
「シン昨日みたいに怖い顔じゃない。」
別の子が言う。そうなのだろうか。ルミも何やら微笑んでいる。俺は照れ臭い気持ちを隠すように無言で飯を食い、農場へと向かった。
仕事を終えて帰ってくると、今度はルミが一人で剣を振っていた。俺に気付くと素振りを止め微笑みかけてくる。
「お疲れ様。子供達なら中で掃除中だぞ。」
「ここで、何してるんだ?」
「?」
キョトンとされる。
「見ての通り素振りだが・・・。」
「いや、そういうことじゃなくて。お前の事、聞いたんだ。騎士学校を卒業したって。しかも次席。そんな凄い奴が、何でこんな田舎の孤児院で子供達の面倒を見てるのか、単純に疑問に思ったんだ。」
突如、ルミの顔が信じられないほど暗くなる。怖い・・・、と言うより、寂しい・・・。
「何だそのことか。大した話じゃないよ。投げ出してしまっただけさ。自分の弱さを思い知ってね。」
「っ!」
胸が痛くなる。大した努力もしなかった俺とは違う。厳しい環境で、必死にやって、かなりの実績を出した末の挫折。
「この話は止めにしよう。面白くもないし、あまり良い気分でできるものではない。」
暗い空気のまま終わり、夕食へと向かった。ルミは子供達と顔を合わせる前には笑顔に戻っていた。