村での一日
日光の眩しさに瞼を開ける。
「目が覚めたか?」
謎の老体が目の前にある。
「話は聞いておるよ。取り敢えず付いてきなさい。」
この世界は目を開けるたびに何かが起こるのか?
「あんた、誰だ?」
老人はニコッと笑い、
「何処にでもいるじじぃじゃよ。」
と答えた。
裏門から村に入る老人。ぽつんとした家が一あり、巨大な田畑が広がる。農作業に勤しむ人々がこちらに気付き、嬉しそうに手を振ってくる。
「村長、お帰りなさい。その子が昨日言っていた子?」
老人は村長だったようだ。
「ああそうじゃ。今日からよろしく頼む。」
「は?」
「お前さんには今日からここで働いてもらう。働かざるもの食うべからずじゃ。それに今のお主には、理由が必要じゃろ?」
何も言えなくなった。「あんたに何が分かる?」と吐き捨てるところだが、村長の雰囲気はそういうものではない。
「分かった。」
村人たちに習い、農作業に没頭した。気分は晴れないがモヤモヤは晴れたような、そんな感じがした。
「ここが今日からお主の家じゃ。」
他所者に文句を言う権利は無い。しかし孤児院に住めと言うのはどういうことなのか、まだまだ子供だということなのか。
「ルミ、例の子を連れてきた。今日からよろしく頼む。」
村長が扉を開くなりそんなことを言う。
「分かりました。」
ルミと呼ばれた女の子が俺を見る。俺はつい目を逸らしてしまう。
「今から食事の時間だ。付いてこい。」
連れられた先には幾つかのテーブルと、夕飯を楽しみに待つ子供達。
「あ、遅いよルミ姉。」
「その人、誰?」
「今日からここで一緒に住むことになった人で、えっと・・・、名前は何というんだ?」
「進だ。」
名を言うと、子供達は不思議そうな顔で俺を見る。
「シン、これからご飯なのに何で悲しんでるの?」
「っ!」
頭が真っ白になる。会ったばかりの子供に心配される程悲惨な顔をしていたのだろうか。
「疲れているんだろう。村に来たばかりなのにたくさん働いたみたいだから。」
「そうなんだ。」
「すまない。食事は部屋で食べても良いか?」
「あぁ、別に構わないが。」
純粋な目を向けられるのが怖くて、俺は逃げてしまった。
今日は結局流されるまま過ごしてしまった。自分の暗さと周りの明るさが交わろうとして気持ち悪い。頭がぐるぐるとしていく中、意識が落ちて行った。